軽ければいいってものではない!? 軽量化の盲点とは?

盲点2:衝突安全性への影響

1970年代のヒストリックスポーツの話をすると、よく「昔のクルマは軽かったよね~」という話題になる。

実際、スバル360の初期型は400kg以下とバイク並みだし、B110サニークーペなんか700kgそこそこ。初代フェアレディ240Zでも1トンを切っている。

では、なんで現代のクルマは重くなったのかといえば、半分はエアコンやパワステなどの快適装備の増加。もう半分は衝突安全性能の向上だ。衝突安全性がさほどうるさくなかった1980年代終わり頃までは、例えばAE86でも900kgそこそこしかなかった。

ところが、ちょうどその頃、NHKスペシャルが「北米仕様と日本仕様では、安全装備に違いがある!」という特集をやって大反響を呼ぶ。これは、ドア内にサイドインパクトビームが入っているかいないかという程度の話だったのだが、一般ユーザーに衝突安全性という概念があることを知らしめたという意味で影響力絶大。それもあってか、1991年デビューの次世代100系カローラはほとんど100kgも重量が増加することになる。

以降、エアバッグの普及や衝突実験を公表するJNCAPの開始など、衝突安全性に関するユーザーの関心は右肩上がり。JNCAPでいい点を取ることが車体設計の最優先課題となり、軽量化は二義的なテーマとなって現在に至っている。

現実には、放っとけばどんどん重くなるモノコック重量をなんとかダイエットすべく、衝突エネルギーを効率よく吸収する構造の工夫や、より引っ張り強度の大きい高張力鋼板の採用拡大など、さまざまな分野で技術革新は進んでいるのだが、要求される衝突安全性能の水準もどんどん引き上げられているので、軽量化という面では焼け石に水。これ以上重くなるのをなんとか食い止めている、といった状況だ。

そんななかで、最近スズキが敢然と軽量化へ舵を切っているのが注目される。衝突試験というのは、決められた速度でクルマをバリア(あるいは車両)に衝突させるのはどれも一緒。キモは、クラッシャブルゾーンをゆっくり効率的に潰してエネルギーを吸収し、いかにキャビンスペースを変形させずに守るかという部分にある。

おそらく、JNCAPのような一定のテスト要件で好成績を挙げるには、現状ではまだ軽量化より衝突エネルギー吸収能力をさらに高めたほうが有利なのだろうが、スズキは「あえてトップを狙わないほうが、ユーザーの総合的なメリットは大きいのでは?」と考えているフシがある。

軽さと衝突エネルギー吸収能力を両立させるのはそう簡単ではないが、軽くなればそのぶんクラッシャブルゾーンが負担するエネルギー量は重量に比例して確実に減る。運動方程式「二分の一mv二乗」ってヤツを、みなさんも高校の物理で習ったでしょ?

そのいっぽう、これは定量化できないけれど「軽いクルマのほうが事故回避能力が高い」というのも、経験的にみんなが感じていること。衝突安全性能だけが高くても、ほかがダメではトータルとして優れたクルマとはいえないワケです。衝突安全性能の向上と軽量化のバランスについては、そろそろ一度見直したほうがいい時期に来ているのかもしれませんね。

メーカーとしてはJNCAPでの安全性能評価が最優先となる現状がある(画像はイメージ)

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