【Re Branding】エクリプス クロスが狙う新しい三菱らしさ

ジュネーブショーでワールドプレミアされた「エクリプス クロス」。力強く、スタイリッシュなクーペルックのSUVで、クルマファンの注目を集めた。実はこのデザインには「三菱らしさ」を取り戻す強い意志が込められていたという。國本恒博デザイン本部長にエクリプス クロスの狙いを訊いた。

文:ベストカー編集部
ベストカー2017年4月26日号


三菱らしさを問い直す

新生三菱の象徴となる新型車がジュネーブショーで発表された「エクリプス クロス」だ。アウトランダーとRVRの間にラインアップされるこのクルマの大きな特徴はクーペのようにリアを寝かしたデザインにある。従来の三菱車にない斬新なデザインはどのようにして生まれたのか? デザイン本部長の國本恒博氏がその理由を語ってくれた。

國本さんは、日産自動車でデザインダイレクターを務めた。その國本さんが三菱に移ったのだから、「超大物の移籍」と業界内ではとらえられ、三菱車のデザインは変わるのか? に注目が集まっていた。

國本さんが三菱に移って重視したのは『三菱らしさの創出』と『一貫性の強化』の2点だったという。國本さんは日産自動車時代からデザインにCI(コーポレーテッド・アイデンティティ)の要素を持たせることに取り組んでいた。三菱自動車の販売台数の規模からいえば、なおさら三菱自動車らしさがひと目でわかるデザインを取り入れなければ、ほかのブランドに埋もれてしまう。とはいえ、三菱自動車らしさとは何か? さまざまな解釈が生まれ、それをデザインに取り入れることは容易な作業ではない。

かっこいいだけでなく、三菱のアイデンティティである逞しさを重視したと語る國本氏

ヘリテージ&エボリューション

國本さんはブランドのアイデンティティを三菱自動車の歴史に求めた。三菱自動車の歴史をさかのぼれば、三菱重工になり船舶や航空機作りにもつながっていく。三菱重工のエンジニアや三菱自動車の社員に聞きながら、三菱自動車とは? の答えを探したという。そして、國本さんが得た結論が「ヘリテージ&エボリューション」だったという。つまり歴史と進化・挑戦ということだ。これをキーワードにデザイン戦略が生まれた。

どちらかというと技術者の力が強い三菱自動車だけに、「ダイナミックシールド」という共通のデザインアイデンティティを作り上げるには相当な苦労があったのだろうと推察するが、それについては國本さんは笑って答えなかった。

國本さんが考える『三菱らしさの創出』と『一貫性の強化』の先にあるのは三菱自動車が取り組んでいる「リ・ブランディング」、つまりブランドの再構築だ。それを世に問う第一弾がエクリプス クロスとなる。では具体的にエクリプス クロスに込められたメッセージを見ていこう。

ダイナミックシールドは、三菱車のデザインの伝統を受け継ぎながら発展させたこれからの三菱車共通のデザイン・アイデンティティだ。ブラックフェイスと、乗員とクルマを守るように包み込むプロテクターの要素が特徴だ

 

クラウチングスタートを切った瞬間のアスリート

イメージは〝クラウチングスタートを切った瞬間のアスリート"だといい、ダイナミックな躍動感を狙っていることがわかる。

クーペルックの前衛的なフォルムを持つエクリプス クロスだが、全高が1685mmあるところがポイント。「背の高いクーペSUV」という点が新しい。これは三菱のSUVの伝統であるヒップポイントの高さや視界の広さを生み、外観から受けるイメージも逞しさや安心感につながるものだ。さらに車高があるからウェッジシェイプデザインによっても室内の居住性や荷室をスポイルさせていないという。

インテリアのほうはどうだろう。インテリアカラーはブラック。そこにシルバーが効果的に加飾され、スポーティな印象だ。また横にワイドに広がるインパネが特徴的。水平基調のインパネはSUVにとって車両の姿勢をとらえるのに重要なのだという。

三菱らしさと革新性がたっぷり詰まったデザインだが、エクリプス クロスはパワートレーンも魅力的だ。新開発の1.5Lダウンサイジングターボと、8ATが組み合わされる2.2Lディーゼルターボが与えられ、動力性能も大いに期待ができる。東京モーターショーで公開、年度内に発売というスケジュールが予想され、今から楽しみだ。

上下に2分割されたリアウィンドウは、後方視界を確保するとともにエモーショナルな印象を与える

國本恒博氏 Profile
1950年生まれ。武蔵野美術大学卒業後日産自動車デザイン本部入社。日産およびインフィニティブランドのデザインダイレクターを務め、デザインのCI化を強化する。2014年三菱自動車に移り、執行役員デザイン本部長となり、現在常務執行役員デザイン本部長