「出発進行!!」は発車の掛け声ではない。道路の信号とはひと味違う鉄道信号の表示を知れば電車がもっと面白くなる!!

道路用信号とは異なる、鉄道信号ならではの「信号現示」とは?

 本数の少ないローカル線なら青の「進行」、赤の「停止」だけで用が足りるが、本数が増えると次の閉塞区間に「ゆっくり入る」モードが必要になる。止まったり動いたりを頻繁に繰り返すことが苦手な鉄道の特性を考えてのことだ。

 そこで、黄色の「注意」ができたのだが、道路の黄色は安全に停止できない場合を除き停止するのが原則なのに対して、鉄道の「注意」は次の閉塞区間に停止信号があることを予告するとともに、既定の速度(一般的に25km/h)以下で進行できるという意味。つまり黄色では止まらなくてもよいのが大きな違いだ。

 青・黄・赤の3種類の場合、青区間に列車が入ったときに当該信号は赤となり、列車が次の閉塞に進むと赤だった信号は黄色に変わる。その後列車がさらに次の閉塞に進むと信号は青に戻る。青→赤→黄→青の順番であり、道路の青→黄→赤→青と順番も違っている。

 現在では、多くの列車を走らせるために都会ではさらに細かく閉塞を分けたり、駅構内でも場内信号機を増やしたりして対処している。東京都心部では次々と到着する電車をさばくために、場内信号機が第一場内から第五場内(つまり駅内の区間を5つに区分)まであるのも珍しくなく、朝夕のラッシュ時には前の電車の最後部がはっきり見えるくらいまで間隔を詰めて、電車が「渋滞」しているシーンも普通のことだ。

 その後、主な信号機には「進行」、「注意」、「停止」以外に、進行と注意の間に「減速」、注意と停止の間に「警戒」が加わった。「減速」(次の信号機が警戒または注意)は青と黄色を同時に点灯させ、「警戒」(次の信号が停止)は黄色2つを点灯させる。

左は3灯式の出発信号機の「進行」現示。中央は4灯式の「減速」現示。4灯式は4種類を現示でき、「減速」が表示できるものと「警戒」が表示できるものとで配列が異なり、これは上から黄・赤・黄・青の配列4灯式の「減速」現示。青と黄色が同時に点灯するのは道路信号にはなく、鉄道ならでは。右の5灯式の配列は上から黄・黄・赤・黄・青となっていて、「進行(青1)」「減速(青と黄)」「注意(黄1)」「警戒(黄2)」「停止(赤1)」の5種類を現示できる
左は3灯式の出発信号機の「進行」現示。中央は4灯式の「減速」現示。4灯式は4種類を現示でき、「減速」が表示できるものと「警戒」が表示できるものとで配列が異なり、これは上から黄・赤・黄・青の配列4灯式の「減速」現示。青と黄色が同時に点灯するのは道路信号にはなく、鉄道ならでは。右の5灯式の配列は上から黄・黄・赤・黄・青となっていて、「進行(青1)」「減速(青と黄)」「注意(黄1)」「警戒(黄2)」「停止(赤1)」の5種類を現示できる

 信号の表示を現示というが、これらの複数の色灯が同時に点灯する現示方法も道路にはないもので、初めてみると珍しい。減速と警戒の制限速度は現在では会社により異なるが、国鉄時代は減速が65km/hまたは75km/h、警戒が25km/hだった。現在では、さらに成田スカイアクセスで導入されている進行の上位で160km/hで進行する青2灯の「高速進行」や、京浜急行電鉄で見られる青と黄色の同時点滅「抑速」(進行と減速の間で105km/h以下)を含めると合計7種類もの現示が存在する。

「出発進行!」は運転士の単なる掛け声ではない。その意味とは?

 ドアが閉まっていよいよ発進、という時に運転士が「出発進行!」と指をさして声がけ(指差喚呼)するシーン。子供も含めて誰でも知っているだろう。ただ、本当の意味はあまり知られていない。列車が駅を出発する際の“さあ、出発だ。気を引き締めて行くぞ!!”という掛け声ではない。

 ここまでお読みになった皆さんには想像がつくだろうが、「出発進行!」は「出発信号機が進行を現示しているのを確認した」という意味だ。だから、注意の黄色で出発するときは「出発注意!」となるし、警戒現示で駅に入る時は「場内警戒!」(場内信号が警戒現示である)となる。駅がたくさんある一部の鉄道では、閉そく信号機を出発信号機の代用とするところもあり、「出発相当進行!」という掛け声が聞かれる。また、進行可能速度を車内に現示する車内信号式では、そもそも出発信号機を通常は使用しないので「出発進行!」という掛け声は使わず、単に「進行!」だったり、表示されている速度を「信号50!」というように確認する。鉄道の信号機の種類は多いので、そのほかにもさまざまな掛け声が各社で決まっている。先頭車両の運転席背後に乗車していると、こうした運転士の掛け声(喚呼)が聞こえてくる。

次ページは : 赤・黄・青の色灯式だけではない鉄道信号機のさまざまな種類

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