トヨタ カローラ2 SR試乗 “赤いファミリア”を討て! 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

トヨタ カローラ2 SR試乗 “赤いファミリア”を討て! 【徳大寺有恒のリバイバル試乗記】

徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回はトヨタ カローラ2 SRを取り上げます。

1980年6月に発売されるや大ヒットを記録したマツダのBD型ファミリア(通算5代目)を受け、その対抗馬として誕生したのがスポーツハッチのカローラ2です。縦置きエンジンのFFというユニークなレイアウトを持ち、CMに当時大人気だったテニスプレイヤーのジョン・マッケンロー氏を起用し、ターゲットを若者に絞ったことも大きな話題になりました。

『ベストカーガイド』 1982年8月号の試乗記を振り返ります。

※本稿は1982年7月に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
初出:ベストカー2018年3月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です


■若者向けを意識したカローラの“弟分”

エンジン横置きのFWD車ばかりとなった昨今、ひとつぐらい縦に置いてもいいじゃないか。

ターセル・コルサはフルモデルチェンジを機に新たにカローラ2という姉妹を加えた。エンジン、フロアパネル、リアサスペンションなどは文字通り一新したが、エンジンだけは縦置きに固執した。

その理由はもうすぐ登場する4WD車(スプリンターカリブ)と密接な関係がある。エンジンを縦に置くことで4WD化はやさしくなる。それに来年予定されるFWD(編集部註:前輪駆動)カローラとの差を付ける意味もあるだろう。

コックピット周りもファミリアを意識した若々しいもの。
コックピット周りもファミリアを意識した若々しいもの
デジタルメーターも上級モデルに採用された
上級モデルにはデジタルメーターも採用された

最近のトヨタは巧みに部品の共通化を図りながら、各車を差別化することを意識的に行っている。今後FWD化路線を進めるうえでも縦置きをやっておいたほうがいいと判断したものであろう。

ニューターセル・コルサ・カローラ2はホイールベース、トレッドが旧モデルとはっきりと違う。ホイールベースが70mm、全長も155mm短くなり、トレッドが前後55mm、全高も10mm大きくなった。すなわち、寸法的にみるならば新型は旧型に比べ短く、幅広く、背高になったわけだ。

ポップなシートは、ヤングに人気。SRの運転席は8ウェイスポーツシートだった
ポップなシートは、若い世代に人気。SRの運転席は8ウェイスポーツシートだった

このプロポーションは、このクラス最大のライバル、ファミリアに近づいた。1.5L以下のファミリーカーのトレンドがファミリアにあるのは明白だ。このクラスで重要なスペースユーティリティでは、前席の足元がやや狭い以外、全体のレイアウトはうまい。エンジンを縦に置いたことによる不利はあまり感じない。ただ、スライディングルーフを付けたモデルは頭がスレスレだ。

結論をいえば、残念ながらターセル・コルサ・カローラ2のスペースユーティリティはセダン(カローラ2にはない)のトランクルームの工夫が新しいくらいで、ファミリアよりも少し狭いくらいだ。

ハッチバックのみのカローラⅡに対してコルサとターセルには4ドアセダンもラインアップされた。写真はコルサ
ハッチバックのみのカローラ2に対してコルサとターセルには4ドアセダンもラインアップされた。写真はコルサ

■ハンドリングは素直でトヨタらしい

サスペンションはフロントはマクファーソンながら、リアはカムリ・ビスタで好評なダブルリンクのストラットだ。旧モデルの乗り心地は小型車のなかで一等地を抜いた存在だったが、新型のそれはパルサーやファミリアに近いものになった。乗り心地が悪くなったわけではないが、そのストロークのたっぷりとあったフランス車的なものから、少し硬めの国産車の水準におさまったというべきであろう。

乗り心地と相関関係にあるハンドリングはいかにもトヨタ車らしい、素直さを出したものであり、ファミリーカーとしてはこれもいいと思う。エンジン横置きのFWD車につきものの、不自然なスナッチ(車体の揺れのこと)は皆無で、スタート時にスティアリングが引っ張られることもない。

ごく一般的なドライバーが、普通にこのクルマをドライブしたらFWD車と気づかないのではないだろうか? 特にそれは1300ccモデルで感じる。1300ccモデルでコーナーを攻めていくと、当然アンダースティアリングとなってスティアリングを切り増しする必要があるが、それに応じてスロットルを踏んでいくとやんわりとテールが流れはじめる。

Cd値は0.37と当時の2BOXとしてはなかなかの数字で、ファミリアXGに対抗しサンルーフも装備した。赤のファミリアに対し、青とシルバーの2トーンが人気だった
Cd値は0.37と当時の2BOXとしてはなかなかの数字で、ファミリアXGに対抗しサンルーフも装備した。赤のファミリアに対し、青とシルバーの2トーンが人気だった

1500ccのスポーツモデル、カローラ2のSRは、それ相応に足が固められ、FWDらしく適度にタックインを使って、クルマの向きを変えてやらなければならない。ハンドリングでは、一応の水準に達しておりパルサーよりも楽しいが、ファミリアを超えているとは思えない。ファミリアは依然としてこのクラスでベストだろう。

タイヤにピレリP8(当時のコンパクト車用スポーツタイヤ)を選択すればそのハンドリングはいっそうリファインされるはずだ。

エンジンに関してはカローラ2のSRに搭載される3A-HUがファミリアのE5よりもいい。このエンジンは高回転型とは思えないが、6000回転まで極めてスムーズに回る。可変ベンチュリーキャブレターを採用し、吸気抵抗を抑え、レスポンスを高めている。ファミリアに比べるとパワー感、トルク感を感じさせる。そして、シフトフィールのよさもSRの魅力となっている。

SRには可変ベンチュリーV型キャブレターエンジンを採用。SUキャブに比べてレスポンスがよくパワーが出た
SRには可変ベンチュリーV型キャブレターエンジンを採用。SUキャブに比べてレスポンスがよくパワーが出た

トータルバランスでは、いまだファミリアが強いが、SRにはファミリアにない個性や走りがあることは確かで、ファミリアXGよりも5万円安い価格もカローラ2 SRの存在をアピールする。

◎カローラ2 3ドアSR 主要諸元
全長:3880mm
全幅:1615mm
全高:1385mm
ホイールベース:2430mm
エンジン:直4SOHC
排気量:1452cc
最高出力:86ps/6000rpm
最大トルク:12.3kgm/4000rpm
トランスミッション:5MT
10モード燃費:14.6km/L
車重:830kg(サンルーフ付き)
サスペンション:ストラット/ストラット
価格:101万3000円
※グロス表記

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