【バス専門誌が考察】東名高速バス事故でバス側の乗員乗客に死者がでなかった理由

2017年6月10日、愛知県新城市の東名高速道路上で、乗用車と観光バスの衝突事故が発生した。観光バスがドライブレコーダーを備えていたことや、そこに対向車線から乗用車が飛んできた(文字どおり「飛んで」きてバスに衝突した)映像が生々しく記録されていたこと、また乗用車のドライバーは亡くなったものの、観光バスの乗員乗客47名に死者が出ず軽傷ですんだことが大きな話題となった。

そこで当サイトでは、『バスマガジン』(当社刊/奇数月27日発売)編集部に、バス好きから見たこの事故の概要と特徴を伺った。

文:バスマガジン編集部 写真:いすゞ、共同通信社


■ポイントは「角(つの)」に当たったこと

高速道路を走行中に反対車線から中央分離帯を越えて乗用車が飛んでくるという事態は、一般ドライバーより運転時間、運行距離が比べものにならないほど長く、日常的に業務としてバスを運転しているドライバーであっても、なかなか想定しないことであっただろう。

2017年6月10日、午前10時36分頃撮影。対向車線から盛り土を乗り越えて反対車線へ飛んできた乗用車がバスに正面衝突し、大破。
写真:共同通信社

今回の事故は、一方が宙を飛んできたとはいえ双方が動いている状態での衝突事故であり、いわば交錯道路での接触と同じで相対速度はカウンターの時速200㎞を超えていたという。不幸にも宙を飛んだ乗用車ドライバーはお亡くなりになってしまったが、一方の高速バスでは多くの乗客が負傷を追ってしまったものの、死亡者はゼロだった点は不幸中の幸いと言ってもいいだろう。

乗用車と高速バス、同じエネルギーを受けながらも異なる結果となったのは、一概に「バスが大きいから」だけではないことが、ドライブレコーダー(ドラレコ)映像から分析されているようだ。

【東神観光バス提供のドライブレコーダー画像(Sankei Newsがアップロード)】

大きなバスの自重はもちろん重く、1.5t程度の乗用車に対して空車時で12t、45名の乗客が乗っていれば乗用車の約10倍にも及ぶ15tほどの重量がある。大きな車体を支えているのだから、さぞかし剛健な構造と思われがちであり、事故直後にはバスのボディが丈夫だから乗客の被害が軽減できたのだろう、という報道も少なからずあった。

しかし、重いからといって衝突のダメージに違いがあるわけではなく、またバスのボディに使われている鉄板の厚さは乗用車のそれと大きく変わらない。ただし、ボディ全体で車体を支えるモノコック構造の乗用車に対して、バスはスケルトンと呼ばれる「柱」と「梁」で構成され、その間を鉄板や窓でふさぎ、天井で押さえている、という構造を持っている。またバスのボディ強化が進んでいることも事実である。

とはいえ、バスは乗客をたくさん乗せる必要があり容積効率の確保も徹底されているため、今回のような相対時速200㎞を超えるカウンターに耐えられるというほどものではないと思われる。

それにも関わらず今回の不幸な事故でバス車内の乗務員、乗客の命が守られたのは、“柱”と“梁”、さらに“天井”が交差する構造上、とても丈夫な『角』の部分に衝突させることができたためではないだろうか。