最近のクルマは耐久性が高くなったといっても、長期間乗らないで放置しておくと、確実にクルマは悪くなる。
1週間、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月とクルマに乗らず置きっぱなしにすると、クルマのどの部分が悪くなるのだろうか?
そして劣化させないための対策はあるのだろうか? モータージャーナリストの鈴木伸一氏が解説する。
文/鈴木伸一
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部
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どれくらい乗らないと、どこが悪くなる?
憧れの愛車を入手したからといって、毎日のように走らせることができる幸せな環境に置かれているユーザーは少ない。たいていのユーザーは週に1回、よくて2~3回乗れるかどうかだろう。
ところが、機械物は動かさずにただ置いておくという状況が、コンディションをもっとも悪化させる要因の1つとなる。クルマであればエンジンの潤滑オイルが流れ落ちて回りが重くなり、バッテリーはあがりやすくなるからだ。
このため、長期間、走らせないときは「せめてエンジンだけでもかけろ」とアドバイスされたことが1度はあるだろう。これは正しくもあり、間違いでもある。
トランスミッション&デフレンシャルギヤといった駆動系の潤滑オイルも流れ落ちてスムーズに動けない状態にあるからで、タイヤも一点に荷重がかかった状態が長く続くと変形。走行時の不快な振動の原因となることがある。
つまり、エンジン以外にも問題となる箇所が多々あるわけで、実際に走らせて適度な負荷をかけなければ意味がないのだ。
ただし、人間に喩えればリハビリが必要な状態なため、エンジンが軽く回るようになるまで無理は禁物。走り出しは回転を抑え気味にゆっくりと、無闇な加速も控えることが肝心だ。
さらに、走らせるにしても近所のコンビニに買い物に出る程度の「チョイ乗り」では意味がない。頻繁に行うとオイルの劣化をはやめることになるからだ。
エンジンオイルには燃焼室から吹き抜けた未燃焼ガスも混ざり込むため、エンジンが十分に暖まって燃焼が安定する前に止めてしまうと未燃焼の汚れたガスがより混入しやすくなる。
1週間以上乗らなかったら最低30分以上は走らせたい
つまり、ちょい乗りの繰り返しはエンジンオイルを劣化させる原因になるわけ。このため、「1週間以上」乗らずに駐車してあったときは、水温が安定するまで最低でも30分は走らせたい。なお、放置期間が長くなるほど、リハビリの必要度は高くなる。その分、走り出しは慎重かつ丁寧に!
また、オイルが密閉されている部位に組み付けられたクランクシャフト(エンジンの出力軸)のように、回転するシャフトの取り出し面にはオイルが漏れ出すのを防ぐためゴム製のシール(オイルシール)が組み付けられている。
このようなゴムパーツは熱が加わり、かつシャフトの回転で揉まれることで柔軟性を維持。冷えた状態で長期間、動かさずに置いておくと硬化してオイル漏れを起こしやすくなる。ゴム製のタイヤも路面からの衝撃で伸び縮みを繰り返すことで柔軟性が維持されている。
タイヤの空気圧は1ヵ月約5~10%低下する
平成モデル以降のクルマに採用されているゴムパーツの耐久性は格段に向上。1~2カ月、放置したからといってただちに問題になることはないが、「半年以上」の乗らずに放置は極力、避けたい。
なお、同じゴムパーツのタイヤは適正な空気圧(自動車メーカーの指定空気圧で、一般にBピラー周辺に表示されている)が充填されていることで初めて本来の性能を発揮するが、空気圧はタイヤが正常な状態でも自然に低下してくる。
その低下率は乗用車用タイヤでは1ヵ月で約5~10%。空気圧モニターが設置してある筆者のクルマによる実測値で20~30kPaは確実に低下する。
空気圧不足によるタイヤが潰れた状態で長期間、放置した場合、当然、変形の度合いも多くなる。
変形しないまでも不足したままでは走行時にタイヤの性能を発揮できないばかりか、偏摩耗を起こしたり損傷したり、最悪のケースでは事故につながる恐れも。
走る距離が短く、駐車期間が長くなるほど、空気圧チェックも疎かになりがち。乗らなかったとしても最低でも「1カ月に1度」は空気圧のチェックを。そして、必要に応じて補充することで適正な空気圧を維持したい。
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