【正しく使えている人は5%以下!??】安全装備の最前線 ヘッドレストの意外で絶大な効果と使い方

【正しく使えている人は5%以下!??】安全装備の最前線 ヘッドレストの意外で絶大な効果と使い方

 普段、何気なくクルマに座って運転している人に多いのが、ヘッドレストの高さを調節していないこと。ヘッドレストを適正な位置にしないまま、運転していませんか?

 後席も然り。後席もちゃんとヘッドレストの高さを調整しないと、前席同様、万が一、追突された場合に、むち打ち症になる確率が高いのです。

 ただ、ヘッドレストの高さを上げただけではダメ。しっかりと適正位置にすることが求められます。

 本企画では、地味だけど重要なヘッドレストの効果と適正位置について、自動車テクノロジーライターの高根英幸氏が解説します。

文/高根英幸
写真/高根英幸 ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部 TOYOTA NISSAN MAZDA SUBARU

【画像ギャラリー】ヘッドレストに個性あり? 人気車のヘッドレスト詳細写真


ヘッドレストを外すと違反になる!?

新型フィットはシートに力を入れている<br>
新型フィットはシートに力を入れている
新型フィットのフロントシートのヘッドレスト。普段、みなさんはヘッドレストの高さ調節をしないで乗っていませんか? 
新型フィットのフロントシートのヘッドレスト。普段、みなさんはヘッドレストの高さ調節をしないで乗っていませんか? 

 ドライビングポジションは非常に大事だ。このところ高齢者ドライバーを中心に、ペダル踏み間違いなどの運転操作ミスによる交通事故が起きている報道を連日のように見かけるが、ドライビングポジションが不適切であることは、その原因の1つにも含まれているハズだ。シートの角度は寝かせ気味で、ステアリングとの距離は遠いのは普通。

 筆者は毎年春、お台場で無料の安全運転教室に参加し、また企業向けの運転マナー講習のインストラクターも務めさせていただいているが、正しいドライビングポジションができているのは5%以下という印象だ。

 つまり95%の一般ユーザーは自分が楽だと思っている姿勢を取ろうとしてしまっている。我々インストラクターが同乗しているから、いつもよりは気持ち前方へとシートをスライドしている、にもかかわらずだ。

 しかも、そんなドラポジの中で忘れがちなのがヘッドレストだ。確かに運転中に頭部がヘッドレストに接することは少ない。いやほとんどないだろう。

 しかしヘッドレストは、非常に重要なアイテム。だからこそ装備されているのだから、キチンと利用できていないのは「損をする」ことになり兼ねない。

 実はこのヘッドレスト、法律で設置することが定められている。道路運送車両の保安基準 第22条の4「頭部後傾抑止装置等」に基づき、運転席と助手席のヘッドレストの着用が義務づけられている(ただし、座席自体がヘッドレストと同じ性能を有している場合は例外)。

 違反点数や反則金はないが、不正改造車とみなされるので15日以内に当該箇所を直さないといけないのだ。

 事故の際、運転者および乗員の身体には強い力が加わり、頭が投げ出されるような動きを強いられ、首に大きな負担がかかる。

 結果、むち打ち症を患うことになるというのは想像に難くない。警察庁がまとめた平成29年度中の交通事故統計によると、交通事故全体(47万2165件)のうち、35.5%が追突で、損傷部位別に見ると死者数は頭部が42.0%を占めている。

 財団法人交通事故総合分析センター(東京都千代田区)のデータによると、乗車中に追突された場合、乗員がケガを負う部位はほぼ9割が首の部分だという。

ヘッドレストの語源を知れば、本来の存在意義が分かる?

スポーツモデルのフロントシートはヘッドレスト一体型のバケットタイプ (写真はヤリスGR-4)
スポーツモデルのフロントシートはヘッドレスト一体型のバケットタイプ (写真はヤリスGR-4)

 ヘッドレスト(headrest)のrestは英語で休息、休憩とか、乗せる、もたれるという意味で、そのまま頭部を預けてリラックスさせるアイテムと思われているドライバーも多いかもしれない。

 しかし、前述の通り運転中はヘッドレストに頭部を預けるような姿勢になることはまずありえない。

 ヘッドレストを信号待ちで首を休めるためや、高速道路のパーキングエリアでの休息時にシートを倒して休憩した時に頭部を乗せるためのものと思われていないだろうか。

 そうだとすれば、それはほぼ完全な誤りだ。ヘッドレストは英語でもheadrestで通用するアイテムだが、本来はヘッドレストレイント(headrestraint)という言葉で、省略されて今の呼び名になっている。

 restraintは、拘束とか制限、制止という意味があり、headrestraintは「頭部を拘束して守る」という意味が込められているのだ。

 つまり頭部を預けて休息させるのではなく、イザという時に頭部を守ってくれるのが、ヘッドレストの役割なのである。

 1960年代くらいまでのクルマは、ヘッドレストは装着されていない車種やシートも多く、後付けで追加することもできるような装備だった。

 いわゆるローバックシートと呼ばれる背もたれの低いシートは、室内を広々と見せて何とも言えない雰囲気を醸し出すから、未だにこのスタイルを好むマニアも少なくない。

 それが日本では1969年3月から運転席にはヘッドレストが義務付けられたことによって、室内の雰囲気は大きく変わった。

 だが、そもそもヘッドレストが義務付けられたのは、それが追突事故による頚椎のダメージを軽減することが分かったからだ。

 信号待ちなどの停車中、あるいは低速走行時に後方から追突された時には、人間の身体は複雑な反応を示す。

 後ろから押し出されるように前方へと身体が移動するのに対し、脳が詰まった重い頭部は慣性の法則で動き出しが遅れることから、いわゆる「むち打ち」という状態となり、深刻なダメージを負ってしまうのだ。

 ヘッドレストは、頭部が後方へと動き過ぎてしまうのを抑制することにより、動きの幅を抑えてくれる。

 だからこそ、シート背もたれの角度は適切な状態まで起こし、ヘッドレストと頭部との距離を適切に保つことが大事なのである。

 ヘッドレストの位置が低いと追突事故の際に頭部は後ろに揺れた時にしっかりと支えることができずに上向きに首を曲げてしまうことになる。

 また高すぎても逆に下を向くように曲げてしまい、頚椎の負担が大きくなる。前席でも後席でも、ヘッドレストの高さまで、しっかりと身体に合わせるようにしよう。

次ページは : アクティブヘッドレストと、追突の衝撃を和らげるシート構造

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