最近、「リレーアタック」なる言葉がメディアでも大きく扱われ、注目されている。
耳慣れない人もいるだろうが、ようはスマートキーをターゲットにした新手の窃盗方法だ。これ、いったいどんなものなのか、そしてその対策についてはどうしたらいいのか、本企画で詳しく追っていきたい。
文:ベストカー編集部、国沢光宏 写真:Shutterstock.com イラスト:大川清介
ベストカー2017年7月10日号
■車両盗難件数自体は減少傾向にある……が……
文:ベストカー編集部
「リレーアタック」の詳細に入る前にスマートキーの概要について簡単におさらいしておこう。
そもそもクルマのキーを鍵穴に差し込まずにリモコンでドアの開閉が可能なのがキーレスエントリーシステム。コスト面での負担が比較的少ないため、現在では軽やコンパクトなどに多く採用される。
かつてはキーそのものにドア開閉のリモコン機能(ON/OFFボタン)がついていて、エンジンの始動についてはそれまでと同じようにキーを差し込むタイプが主流だったのだが、現在の主流はスマートキー。
鍵に実際に触れることなく、ドアの開閉を行うことができ、エンジンスタートができるタイプのものだ。もはや鍵穴がインパネにないクルマも多い。
このキーレスエントリー、1993年にシボレーコルベット(C4)が採用した「パッシブキーレスエントリーシステム」が最初だった。
メーカーによって「スマートエントリー&スタートシステム」(トヨタ)、「インテリジェントキーシステム」(日産)などと各々呼び方は違っている。
実際に自分が手に持っていなくても、ズボンのポケットや持っているカバンのなかにあっても使えるようになっていて、ドアノブに触れるだけのタイプや、クルマに近づいたり離れたりすると自動的に施錠と解錠が可能な種類のものもあったりする。
昨年生産された国内生産車は約570万台ぶんにスマートキーが導入されていたが、警察庁によると昨年の自動車盗難件数は約1万1600件で、ピークの頃よりも20%程度減った。
盗難件数のうち7割は鍵をかけてあった状態で盗まれていたのだそう。
10年ほど前までは、専用キーでないとエンジンが始動できない電子照合式の盗難防止装置「イモビライザー」をねらった「イモビカッター」が話題になっていたが、スマートキーはそのイモビライザーとも連動したシステムになっている場合が多い。
で、新たにそのスマートキーをねらった窃盗方法が、今回クローズアップする「リレーアタック」だ。
■スマートキーの電波の有効範囲は約1m
スマートキーは車体に向けて微弱な電波であるLF(長波)、そして車体のほうからはスマートキーに向けてRF(高周波)と呼ばれる電波を発信する。
これにより、車内電波が車外に漏れて、車内にあるスマートキーを車外にあると誤認しないようになっているという。
その電波の有効範囲は約1mで、スマートキーとクルマが各々の電波を受信することで電子的な暗号が合えばドアロックが解除され、車内のスタートボタンを押しただけでエンジンが始動できるようになる。
そのシステムの高度性ゆえに盗難に強いとの評価がなされていた。
しかし、リレーアタックでは犯人グループのひとりがクルマから離れたドライバーに近づいていき、特殊な装置でそのドライバーの持つスマートキーの電波を受信する。
その装置で増幅された電波を今度は犯人グループの別の人間に送信する。
こうやって電波をリレーしながらクルマに近づいていくことで、最終的にはドアロックは解除され、スタートボタンで始動可能となる。
この方法だと始動後に一度でもエンジンを切るともうそこから走行できなくなるが、発進後に正規のキー以外でエンジンがかからなくなることについても、犯人グループはなんらかの装置でこれを無効にしている(つまり一度始動してしまえばあとは何度でも始動可能にしている)可能性が高いという。

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