雨が降る季節、というと、真っ先に思い浮かぶのは「梅雨」の時期ですが、「秋雨」という言葉もあるように、秋も雨の降りやすい季節です。台風による集中豪雨や、夏の高気圧と冬の高気圧がぶつかることでできる「秋雨前線」など、時に災害をもたらすような大雨となることもあります。
雨の日に注意したいのが、クルマの運転です。雨の日は、なんと晴れの日の約4倍も、交通事故が起きています(首都高速道路株式会社調べ)。
「自分は大丈夫」と思わないでください。交通事故は、運転初心者や、運転が得意でない人だけが起こすものではありません。本記事では、運転に自信のある方ほど知っておいてほしい、雨の日の運転術をご紹介します。
文:吉川賢一
写真:写真AC
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側壁等に衝突する事故は、なんと10倍
首都高速株式会社のデータによると、晴れた日の事故は、追突事故が大きな割合を占めるのに対し、雨が降っている日は、施設接触事故(側壁等に衝突する事故)の割合が4割を占めています。この施設接触事故は、晴天時に比べて、なんと約10倍にもなるそうです。
本稿を読んでくださっている方には「釈迦に説法」かもしれませんが、それだけ、雨の日の運転は視界が悪くなり、また路面が滑りやすく、制動距離も伸びる、ということです。
このように、晴天時とはちがう運転が必要となるため、運転に慣れた人でも、思わぬ事故を引き起こしやすいのです。
クルマの状態チェックは、上級ドライバーの嗜み!
まず、雨の日の運転で、最も大切な視界確保には、ワイパーとガラスの状態を常日頃から知っておくことです。ワイパーブレードの劣化や、ガラスに油膜がないことのチェックは、ウィンドウウォッシャーを使ったときや、洗車した時に、ワイパーを動かせばわかります。
急な降雨対策として、自動車ガラス専用の即効性撥水スプレーを、一本クルマに備えておくことをお勧めします。
また雨の日などの湿度が高いときは、フロントガラスのくもりが発生する前にデフロスターを使い、視界に関する余計な心配事はなくすようにしましょう。
さらに大切なのが、タイヤの残り溝の確認です。あなたは、いま乗っているクルマの4つのタイヤの溝が、それぞれ何ミリ残っているのか、把握していますか?
運転の仕方や、日常使う道路の路面状況などの影響で、フロント輪とリア輪での残り溝は違ってきますし、左右輪でも差がついています。こうしたタイヤの状態は、運転が上手だなと感じる人ほど、よく観察しています。
道路運送車両の保安基準では、四輪自動車はタイヤの接地部の全幅にわたり、滑り止めためについている凹部のいずれの部分においても1.6mm以上の深さを有すること、と定められています。
タイヤの内減り、外減りは関係なく、この基準を満たさなければ即アウト。まだ少し溝が残っているから、という勝手な判断は通用しません。
「そんなの当たり前じゃないか!! 」という声が聞こえてきそうですが、そんな貴方なら、もちろん把握されていますよね!?
ハイドロプレーニング現象を起こさない!!
雨が降っていて、路面が滑りやすい状況であっても、環境状況を理解した上でのスピードコントロールができれば、事故のリスクを極限まで下げることができます。
雨粒によって悪くなった視界、グリップを失うほどの雨膜、こうしたシーンで速度を出すのは自殺行為そのもの。「私は運転が旨い」と錯覚して事故を起こす人、高性能なクルマを手に入れたばかりで、浮かれ気味で走らせて事故を起こすドライバーの多くは、この基本原理を忘れてしまっています。
最も危険かつ、発生したらどうしようもない「ハイドロプレーニング現象」が起きないよう、タイヤの状態を日々把握し、ワダチなどの深そうな水たまりは避けること。避けられなければ、アクセルペダルから足を浮かし、ステアリングを真っすぐに持って、惰性で走り抜けること。
そして、万が一、ハイドロプレーニング現象が起きてしまったら、車速が自然と落ちてグリップが回復するよう、神様に祈りながら待つことです。決して、ブレーキングや、カウンターステアをして復帰させようなどとは、考えてはいけません。
タイヤメーカーは、ハガキ4枚分ほどの、わずかに使える接地面の構造に魂を込め、日夜、タイヤのコンパウンドやトレッドの溝の研究開発をしています。自動車メーカーでも、「夜の雨」といった危険度が増すシーンでの運転支援技術なども日々開発に取り組んでいますが、それは、タイヤの残り溝や空気圧が確保された上で、「適切な速度で運転していること」が大前提。
タイヤメーカーや自動車メーカーは、私たちドライバーが、良心的なスピードで運転してくれることを信じているのです。
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