今や登録車の約40%がハイブリッド車に! それでも軽自動車に“本格”ハイブリッドはなぜ存在しない?
登録車ではトヨタ・日産・ホンダを筆頭に、上位人気車の多くにハイブリッドモデルがラインナップされる。
一方、軽自動車ではスズキがマイルドハイブリッドを展開するものの、ダイハツ・ホンダはハイブリッド車「ゼロ」。その背景にある事情とは。
文/渡辺陽一郎、写真/日産、トヨタ、スズキ、ホンダ
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軽自動車は簡易型HVのみでHVなしのメーカーも
今は各メーカーともに、ハイブリッドを積極的に用意している。国内で販売される登録車の場合、ハイブリッドの占める割合は40%近い。
特に日産はe-POWERが中心だから、ハイブリッド比率が60%を超えている。ホンダも50%を上まわる。
登録車の台数ランキングを見ても、ヤリス、フィット、カローラシリーズ、ノートなどの上位車種には、すべてハイブリッドが用意されている。この影響を受けて、ハイブリッド専用車のプリウスとアクアは売れ行きを下げた。
以前はハイブリッド専用であることに高い付加価値があったが、今は前述の通り大半の車種でハイブリッドを選べるようになったためだ。
かつて先進のメカニズムであったハイブリッドが、今では普通に搭載される対象になり、専用車のニーズも薄れた。
ところが軽自動車では、身近なハイブリッドも普及が進まない。スズキの場合は、スペーシア、ハスラー、ワゴンRなどの売れ筋車種に、マイルドハイブリッドを搭載している。
そのためにスズキの軽乗用車に占めるマイルドハイブリッド比率は50~60%に達するが、このシステムはあくまでも簡易型だ。
マイルドハイブリッドには、モーター機能付き発電機が搭載され、減速時の発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う。モーターの最高出力は2.6~3.1馬力と小さく、モーター駆動の支援を体感できる機会はきわめて少ない。
スペーシアでは、ATレバーをDレンジに入れてアクセルペダルから足を離すと、最長で10秒間、モーター駆動のみで徐行できる機能を採用した。
この機能が設計の新しいハスラーでは省かれている。発進時にエンジンを停止させて走るハイブリッドらしさを演出できても、燃費向上のメリットは乏しいからだ。
そして、軽自動車のマイルドハイブリッドは、日産と三菱も採用するが、ダイハツとホンダは手掛けていない。
また、スズキや日産を含めて、軽自動車には、登録車に多く採用されるストロングハイブリッドが設定されない。マイルドハイブリッドに限られるから、走行中にエンジンを停止させ、モーター駆動だけで走ることはない。
軽自動車にストロングハイブリッドが設定されない3つの訳
なぜ軽自動車には、ストロングハイブリッドが設定されないのか。背景には3つの理由がある。
まず、ストロングハイブリッド搭載車の価格が、ノーマルエンジン車に比べて、少なくとも35万円は高まることだ。スバルのe-BOXERは例外的に価格上昇を抑えたが、燃費も良好とはいえない。e-BOXERはマイルドハイブリッド的な扱いになる。
仮にハイブリッドの価格が35万円の上乗せになると、N-BOXで売れ筋になる「カスタムG・Lホンダセンシング」(176万6800円)は、約212万円に達する。コンパクトミニバンのフリード「G・ホンダセンシング」と同等だ。
今の軽自動車は価格が高まったが、それはエアロパーツの装着や安全装備の充実に基づく。燃費と環境性能を向上させるハイブリッドシステムだけで、35万円の値上げ(比率に換算すれば20~25%の価格上昇)になると、商品として成立しにくい。
軽自動車でストロングハイブリッドが普及しない2つ目の理由は、ノーマルエンジンにもさまざまな低燃費技術が使われ、燃料消費量を抑えていることだ。
例えばクラウンの場合、2LターボのWLTCモード燃費は12.4km/L、2.5Lハイブリッドは20km/Lだから、後者を選ぶと燃料代を約40%削減できる。
しかし、コンパクトカーのフィットでは、燃費節約率は30%前後に下がる。小さなクルマになるほど、ノーマルエンジンの燃費性能が向上して、ハイブリッドとの差が縮まってくる。
言い換えれば、35万円の価格差を燃料代の節約で取り戻しにくくなるわけだ。レギュラーガソリン価格を145円で計算した場合、コンパクトカーでハイブリッドとの価格差を燃料代の節約で取り戻すには、11万~14万kmの走行を要する。軽自動車はさらに伸びるだろう。
しかも軽自動車は1年当たりの走行距離が全般的に短いため、ストロングハイブリッドを用意しても、経済的にトクすることは考えられない。
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