パッシング文化 廃れた? 気になるマナーと使われ方の実態

パッシング文化 廃れた? 気になるマナーと使われ方の実態

 ステアリングコラムのレバーを引いて、ヘッドライトを瞬間的に点滅させる「パッシング」。

 一昔前までクルマを運転するうえで珍しくないコミュニケーション方法だったが、最近は使われるケースがだいぶ減少したように感じる。

 本稿では、そもそもパッシングとはどのようなものなのか、現在の使われ方や実態と合わせて解説していきたい。

文/永田恵一 写真/TOYOTA、Adobe Stock

【画像ギャラリー】一般ドライバーから走り屋まで 昔は一般的だったパッシングについて考える


■そもそもパッシングって合法? 違法?

ホーンを不必要に使う行為は「警音器使用制限違反」にあたる。対してパッシングには明確な規定がない(悠人-松村-Stock.Adobe.com)
ホーンを不必要に使う行為は「警音器使用制限違反」にあたる。対してパッシングには明確な規定がない(悠人-松村-Stock.Adobe.com)

 コミュニケーション方法として使うこともあるホーン(クラクション)は、見通しの悪い交差点や対向車から自車を認識にくい急な坂で自車を認識してもらうためと、「警笛鳴らせ」の標識のあるところ以外で使うことは、厳密には違法である。

 ホーンを不必要に使う行為は「警音器使用制限違反」にあたり、反則金3000円(違反点数なし)となる。

 それに対してパッシングは、「先行車に何度もパッシングする」、「先行車がいるのにハイビームで走り続ける」といった妨害運転(あおり運転)に該当する行為以外は、割り込みさせてもらった時のサンキューハザード同様に明確な規定のない、曖昧なものとなっている。

 仮に執拗なパッシングを含む行為が、あおり運転にあたるとみなされた場合「3年以下の懲役または50万円以下の罰金に加え、2年間の欠格期間を伴う免許取り消し」という非常に重いペナルティとなる。

 最近はホーン同様に、パッシングをされた側にとって「悪い意味での刺激を感じるかもしれない」という風潮となっていることもあり、全体的にパッシングが使われることが減っている傾向だ。そうした前提を踏まえつつ、いくつかある「使われ方」を紹介していきたい。

■さまざまなシーンで使われるパッシング 8つの類型

右折車に道を譲る時などにパッシングするが、右折車に道を譲るという行為自体に危険がある場合もある(shashamaru-Stock.Adobe.com)
右折車に道を譲る時などにパッシングするが、右折車に道を譲るという行為自体に危険がある場合もある(shashamaru-Stock.Adobe.com)

【1】右折車に対して直進車が「道を譲る」/右折車が直進車に対し「先に右折させてください」のサイン

 この2つは前者が関東、後者が関西で使われる傾向があるようだ。これはケースバイケースにせよ、直進車と右折車の距離が短い際などに「万一直進車の陰に自転車やバイクがいた」、「右折した先の横断歩道に歩行者や、横断歩道手前に自転車がいた」となると大事故になる可能性もある。

 そのため右折車に道を譲るという行為自体に危険がある場合もあり、パッシングをおこなうことも含めて減っているように感じる。

【2】右折などで道を譲ってもらった際の「ありがとう」のサイン

 これは良いマナーではあるが、譲った相手が「ありがとう」と解釈しないケースもあり、車内からの会釈や手を挙げるという方が無難な方向に感じる。

【3】歩行者に横断を促すとき

歩行者に横断を促すために使われたりする場合もあるが、後続にバイクや自転車がいないのを確認する必要がある(Dieter-Hawlan-Stock.Adobe.com)
歩行者に横断を促すために使われたりする場合もあるが、後続にバイクや自転車がいないのを確認する必要がある(Dieter-Hawlan-Stock.Adobe.com)

 これは歩行者に自車の停止を知らせる、対向車に横断しようとしている歩行者の存在を知らせるという2つがある。最近は横断歩行者妨害(横断しようとしている歩行者がいた際には停止する行為)に対する取り締まりが増えていることもあり、パッシングをせずに双方のクルマが止まるケースが増えている。

 ただ、その際にはただ停止するのではなく、前述した右折の時のように陰にいるバイクや自転車がいないのを確認することも必要だろう。

【4】先行車や対向車にトラブルなどを知らせる

 具体的にはそれぞれに無灯火などを知らせるという受け入れるべき、ありがたく感じなければならない行為なのだが、そう解釈されないケースがあることもあり、見ることは少なくなっている。

【5】合流や進路変更などの際に「入っていいですよ」のサイン

 これもいい意思表示なのだが、譲られた相手がパッシングした方の意図を素早く汲み取ってくれないことが増えているようにも感じる。

【6】(取り締まりなど)対向車の進行方向に何らかの異変があることを知らせる

 対向車の進行方向で取り締まりがおこなわれているのを知らせるパッシングは某チューニング雑誌が広げたイメージがある。このパッシングは10年以上前から見ることが激減し、今おこなっても意味が伝わる人が少なくなっていることもあり、ほとんど見なくなった。

【7】ハイビームで走っている対向車に対し眩しいことをアピール

 これは自車が迷惑なだけにやってもいいだろうと感じるパッシングで、現在も減少傾向ではあるもののおこなわれている。ただ、昨今のご時世を考えるとあまり回数をしないなど、控えめなパッシングとした方が無難だろう。

 また、ここ数年問題になっている、非常に明るいため非悪天候時に点灯されると後続車にとっては眩しくて仕方がないバックフォグランプの点けっぱなしを先行車に知らせるためにパッシングを使いたいところだが、誤解を招く恐れもあるためしない方が無難だろう。

【8】先行車に「道を譲れ」という意味のパッシング

 かつては見ることもあったが、現在は前述したように「あおり運転」と見なされる可能性もあるため、そのようなパッシングはしないに越したことはない。

 追越車線を、周囲の流れを乱すペースで走っているクルマに対してのアピールとしては、一時期減少していた右ウインカー点灯という方法もあるが、ウインカーの点けっぱなしも違反行為となるので、厳密には何もしないのがもっとも間違いない。

次ページは : ■ルールのないパッシングよりもコミュニケーションが取りやすい路上に

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