徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。
今回は日産のMID4、そのプロトタイプを取り上げます。’85年のフランクフルトショーで発表されたMID4。
その後、WRCを見据えターボを装着したMID4-Ⅱに発展するも、プロジェクト自体が消滅、ついに陽の目をみることはありませんでした。
そんなMID4を徳さんはどう評価したのか? 試乗が行われた追浜テストコースでのインプレッションを振り返ります。
※この原稿は1985年に執筆されたものです
文:徳大寺有恒
ベストカー2016年2月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■「熟成中」ながら確かな存在感を示した高機能ユニット
V6、3L、フォーカム、24バルブユニットは独特の音をコックピットに伝える。それはストレート6とは明らかに異なり、V6のものだが、6000回転以上になると高性能エンジン特有の金属音を発生する。
最高出力230馬力/6000回転、最大トルク28.5kgm/4000回転という目標値を掲げたこのユニットだが、熟成中で230ps、28.5kgmのスペックは出ていないという。
しかし、そのトルクの大きさはさすがなもので、コーナーをセカンドで抜けてからの加速は背後からグイグイ押される感じである。
■開発責任者は櫻井眞一郎氏
フランクフルトショーで発表されたMID4はその名の通り、ミドシップで2シーターのスポーツカーだ。
しかし、このミドシップ2シーターは駆動方式が凄い。4WDなのだ。
オーストリアのシュタイア・プフ社の開発によるフルタイム4WDであり、センターデフでフロント37%、リア63%の駆動力配分が行われた。サスペンションは4輪ストラットだが、まったく新しい4輪操舵システムHICASが与えられていることが目を惹く。
MID4の車両重量は1230kgでこのクラスのスーパーカーとしては軽い。ボディはスティールモノコックでスキンはFRPを採用している。
開発責任者を務めるのはスカイラインでお馴染みの櫻井眞一郎さんで、彼はこのクルマはまだ市販するかどうかわからないし、市販するにしてもこのままのスペックで出るわけではない。と話すが、1年後かあるいは1年半後かわからないが、テスト期間を経た後、市販される可能性は高いと思う。
とにかく、この種の高性能スポーツカーの分野へ日産が参加する意思を見せたということが重要だ。
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