大型SUVもCVTを採用する時代 CVTは日本だけのガラパゴス時代は終わったのか?

■欧州では低人気のためリスク回避で未導入

フォレスターのような大型SUVでもCVTを採用している
フォレスターのような大型SUVでもCVTを採用している

 それほどまでに完成度の高い変速機となったCVTだが、相変わらず日本国内だけで使われている感が強い。他にATを持たないスバルのチェーン式CVT(アウディも以前は採用していた)は別として、金属ベルト式のCVTは世界では少数派だ。

 メルセデス・ベンツは先々代のAクラス/BクラスにCVTを搭載させたがわずか6年、1代限りで見切りをつけ、通常の遊星ギア式7速ATに切り替えている。

 現在販売しているモデルについても、例えばトヨタはRAV4の国内のガソリン車は、2LのCVT搭載モデルを販売しているが、欧州や米国向けのガソリン車は2.5Lの8速ATを販売している。それは、海外ではCVTを搭載しているだけで売れなくなるというリスクを避けるためだろう。

 米国ではアクセルペダルを踏み込んだ瞬間に反応する大トルクによるクルマの反応が求められ、欧州では伸びやかな加速フィールが重視される。そのどちらにもCVTの特性はそぐわなかったのだ。(少なくとも10年ほど前までは)。

 現在のCVTの大半は、かなり出来の良い変速機なのだが、欧州市場にはCVTアレルギーのようなものを感じる。

 欧州の場合、たとえ変速ショックが少し出ようとも、加速感を感じられる通常のATの方が好まれるのだ。MT車の比率もまだ高い市場だけに、古典的なクルマの走行フィールに安心感を得るユーザーが多いのだろう。

 ただし欧米市場でも唯一認められているCVTがある。それはトヨタのハイブリッド車に搭載されている電気式CVTだ。

 これも無段変速機という意味ではCVTなのだから、大々的にアピールすればCVTのイメージ改善に役立つかも知れない。そして実際に金属ベルト式CVTの最新モデルに乗ってもらえば、いかに加速フィールが良くなっているか、実感してもらえると思うのだが。

 しかし欧州市場はライバルメーカーたちがEV化に舵を切っている以上、今のタイミングでは欧州にCVTを投入することは、あまりメリットにつながらないだろう。そういった意味では、今後CVTが存続していけるかは、微妙なところだ。それは国内専用モデルをいつまで用意するか、という問題と極めて似ている。

 その国内市場ではまた様子が違ってくる。スズキはAGSとフルハイブリッドを組み合せたMTベースでシームレスな2ペダル車を作り出したが、価格面でユーザーに受け入れられず、1代限りで姿を消している。バッテリーのコスト低減次第でまた復活する可能性はあるが、国内ではCVTの優位性は当分続きそうだ。

 日産はデイズをフルモデルチェンジした際にCVTも見直し、副変速機を廃止して実質的なレシオカバレッジを縮小している。これだけだと時代に逆行しているように思われるが、軽自動車の場合は副変速機による駆動ロスや制御の複雑さは無視できない。

 そこでエンジンを新設計してトルクアップしたことと、マイルドハイブリッドによるトルク補完も利用することで、CVTのレシカバが小さくなっても、先代以上の走りと燃費を実現したのだ。

 つまり電動化になっても、CVTは活躍することができる。むしろより燃費性能を高めるためには、マイルドハイブリッドの積極利用とCVTの組み合せに期待したいところだ。

■いいCVT、悪いCVTの指標

新型レヴォーグのインパネ。CVTでありながら8速AT搭載車クラスのレシオカバレッジを持つ
新型レヴォーグのインパネ。CVTでありながら8速AT搭載車クラスのレシオカバレッジを持つ

 本企画で何度も出てきた言葉、レシオカバレッジ。最後にこのレシオカバレッジとはなにか、これまで聞いたことがなかった、という人のために、説明しておきたい。

 レシオカバレッジとは、変速機の変速比幅(適用可能な変速比の範囲)とも呼ばれ、最も低速のギア比を最も高速のギア比で割って求める値だ。

 この値が大きいほど、エンジンが低回転のままで走ることができる車速の幅が広いことになり、燃費が良く、静粛性に優れるという評価につながる。CVTの場合は、最も低速(ロー)のプーリー比を最も高速(ハイ)のプーリー比で割った数値になる。

 4速ATで4程度、6速ATで6程度、8速ATでは8程度、9速ATでは9.8、10速ATでは8.23となっている。CVTは一般に5.5~6程度。 巻末で各社の主な車種のレシオカバレッジを紹介しているので、いいトランスミッションの指標としてみてほしい。

 CVTの場合、変速用プーリーの大径化の制約があるため、多段ATよりも変速比の幅を広げられなかったが、日産とジャトコが2009年に実用化したCVTは副変速機をつけて、乗用車としては当時最も広いレシオカバレッジを7.3とし、後に8.7にまで広がった。

 いっぽう、トヨタは2018年12月、レクサスUXから採用したダイレクトシフトCVTは、CVTに発進用1速ギヤを組み込み、ベルトをハイ側に設定できたことで、レシオカバレッジ7.555を実現した。

 つまり副変速機と発進用1速ギヤを組み込むことで、発進、加速時にはギア比をロー側へシフトし、力強い駆動力を得ることと、高速巡航時にはギア比をハイ側へシフトし、静かで燃費の良い走りを両立させている。

 スバルの最新モデル、1.8Lターボを搭載した新型レヴォーグと、1.8Lターボを搭載するフォレスタースポーツのレシオカバレッジはついに8を超え、8.098を実現した。

 レヴォーグは先代の6.442、フォレスターは2.5Lの7.031からの進化。これは6速ATが8速ATに進化したレベル。副変速機を持たないCVTとしては世界最高クラスだ。

 このレシオカバレッジの数値が大きいほど、いいAT、CVTなので、参考にしてほしい。ちなみに過去の車種の数値を比較してみると進化の幅がわかるだろう。

主なCVT搭載車のレシオカバレッジ
主なCVT搭載車のレシオカバレッジ
主なAT搭載車のレシオカバレッジ
主なAT搭載車のレシオカバレッジ
主な過去の車種のレシオカバレッジ
主な過去の車種のレシオカバレッジ

【画像ギャラリー】これはスーパーガラパゴス!! 日本のCVTの超絶進化を見る

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