見た目なのか? 機能なのか? 自動車のアンテナにいくつもの種類があるのはなぜ?

見た目なのか? 機能なのか? 自動車のアンテナにいくつもの種類があるのはなぜ?

 ひとたび気になり始めると、ちゃんと調べ上げるまで納得できないのが本企画担当のいいところ。最近気になっているのが、ルーフに設置されているアンテナ。ポール形状のシンプルなものやイルカのヒレのような形状のものがあるけど、あれってどんな違いがあるのだろうか?

 ということで、クルマのアンテナのあれこれについて調べてみることにしました。

※本記事は2017年6月のものです。
文:ベストカー編集部
写真:Shutterstock.com、ベストカー編集部
初出:ベストカー2017年6月10日号


スバル360はルーフ埋め込み型アンテナ!

 調べてみると、ひと昔前まではルーフの運転席側上部に設置される手動式の長い伸縮アンテナが主流だった。今はコンパクトポールタイプやシャークフィンタイプなどが逆に主流となり、車外にアンテナ自体がない車種も多い。

 そもそも国産車で最初にラジオが設置された車種は1955年に登場した初代トヨペットクラウン。オプション設定による富士通製の真空管式AMラジオだった(FM放送はNHKが1957年から開始)。その後は1958年に登場したスバル360もオプションでカーラジオを設定していた。

 その当時はルーフやピラーに設置する手動式のアンテナが多かったのだが、珍しかったのは前述したスバル360だ。パッと見にはどこにもアンテナがないようなのだが、実はFRP製のルーフ内部にあらかじめ渦巻き式のラジオアンテナが埋め込まれているのだ。クルマの方向が変わっても感度が乱れず、いたずらや破損の心配がないのがメリットだと当時のカタログでは謳っていたのだが、このあたりはさすがにマニアックなスバルの面目躍如といったところか。

スバル360のFRP製ルーフにはなんと渦巻き式のアンテナが埋め込まれている!
スバル360のFRP製ルーフにはなんと渦巻き式のアンテナが埋め込まれている!

現在の自動車用アンテナの情勢を探る

 自動車用アンテナは基本的にAM/FMラジオの受信用のものなのだが、主に次の5種類に分かれている。

■手動式伸縮ポールアンテナ

 クルマ用アンテナといえば、この長いアンテナのイメージが最も根強い感もあるのだが、現在では採用している車種が激減。NV200バネットやアクティバン、アルトバンなどの商用車系モデルが採用するくらいだ。ちなみに道路運送車両法での保安基準の指定部品になっており、全高3800mmを超えない範囲なら交換しても構わない。

 で、実はラジオの受信感度で最も優れているのがこのタイプなのだが、基本的にアンテナの長さが感度のよさに比例するためだ。印象が古めかしいので見た目はあまりよくないかもしれないが、それでいて実用面ではイチバンいいというのだから侮れない。

手動で伸縮できる昔ながらのアンテナ。実は受信感度は今でもこれが最強!?
手動で伸縮できる昔ながらのアンテナ。実は受信感度は今でもこれが最強!?

■オート伸縮アンテナ

 降雨時でもウィンドウを開けることなく、ボタンひとつでアンテナが伸びていく快適装備がこれ。1970年代に登場し、当初は国産上級モデル中心に採用され、1990年代以降はその下のクラスのクルマにまで波及した。オーディオ電源やスイッチを入れると自動でアンテナが伸縮するこの「オートアンテナ」が採用されていたが、こちらも最近ではほとんど見なくなってきている。

 モーターでシリコンワイヤーが伸び縮みする仕組みだったのだが、後に改良されてボタンを押すことで伸縮の途中でポールを止めることもできるようにはなった。しかし、経年劣化によって内部でワイヤーが破断して出てこなくなるトラブルを構造的に抱えていた。

1970年代以降に登場してきたオート伸縮アンテナ。当初は高級車に採用されていた
1970年代以降に登場してきたオート伸縮アンテナ。当初は高級車に採用されていた

■フィルムアンテナ

 ポールアンテナの見た目の悪さを解消するため、1990年代後半になって代替手段として出てきたのがこれ。クルマのフロントウィンドウ、もしくはリアウィンドウに貼り付けるフィルム式のアンテナで、車外にアンテナが設置されていないモデルはほとんどこれが内蔵されている。日本車でも上級車を中心にこのタイプが採用されている。

一時期は車外にアンテナのないフィルムタイプアンテナが流行していた
一時期は車外にアンテナのないフィルムタイプアンテナが流行していた

■コンパクトポールアンテナ

 軽やコンパクトカーを中心に現在主流となっているのがこのタイプで、垂直からほぼ水平になるまでの可倒式となる。見た目には伸縮アンテナよりもスマートになっているのが特徴だ。

 樹脂製でポールの内部にコイル状のアンテナが詰まっている構造を採用しているのだが、長さ的には不利とはいえ素材や工程の進化によって受信感度はこれまでの伸縮アンテナとほぼ同等を保っているというから凄い。

軽やコンパクトカーを中心に主流となっているのがこの短いポールタイプだ
軽やコンパクトカーを中心に主流となっているのがこの短いポールタイプだ

■ドルフィンアンテナ(シャークフィンアンテナ)

 最近の日本車にも続々採用されているタイプのアンテナがこれ。ヒレ状のアンテナで、イルカのヒレに似ているためドルフィンアンテナと呼ばれる。メーカーによってはシャークフィンアンテナと呼ぶ場合もある。

 BMWが2001年の4代目7シリーズ(E65型)に初採用し、レクサス車はLXを除いたラインアップのほぼ全車がシャークフィンタイプを採用している。メルセデス・ベンツは現行Cクラス及びEクラスではシャークフィンタイプではなく、内蔵タイプに変更している。

BMWがE65型7シリーズから導入したのが別名シャークフィンアンテナ
BMWがE65型7シリーズから導入したのが別名シャークフィンアンテナ

 やはり「見た目」というのが、アンテナの進化の根本にはあるようだ。

 ちなみにコンパクトポールアンテナの取り付け位置は車種によってまちまち。スズキによると「ハイトモデルはアンテナに手が届きづらいので背の低いユーザーでもリアドアを開けてフロアに足をかければ届くように運転席側にオフセットしている」とのこと。なおコスト的に最も高くつくのは、感度を上げるブースターが必要なフィルムタイプであるとのことだ。


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