衰退セダンに復活の時は近し!? ミニバンに喰われた伝統セダンの生きる道

 近年SUVが人気を集めるなか、2018年の年間販売台数トップ10を見ると、日産のセレナやトヨタのシエンタ、ヴォクシーが名を連ねるほか、上級クラスではアルファード/ヴェルファイアが圧倒的な人気を集めるなど依然ミニバンの人気は高い。

 セダンの衰退とも密接な関係にあるミニバンの人気はなぜこれほど高まったのだろうか。そして、ミニバンの隆盛とともにセダンは今後も衰退していくのか?

 ミニバンの隆盛とともにセダンは今後も衰退していくのか? 実はセダンには独自のメリットがあり、復活の日は案外近いかもしれない、と自動車ジャーナリストの御堀直嗣氏は解説する。

文:御堀直嗣
写真:編集部、HONDA、Newspress Ltd.


乗用車的なミニバンがセダンを食うという“ジレンマ”

セダンのアコード(上)をベースに開発されたオデッセイ(下)は、制約を逆手に取った乗用車感覚のミニバンとして大ヒット。以後、同様に乗用車的なミニバンが市場を席巻し、ある意味ではセダンの需要をも奪う形になってゆく

 ミニバンは米国で生まれた。そして日本で旋風を巻き起こすきっかけとなったのは、ホンダ オデッセイの誕生による。オデッセイが誕生した1990年代初頭に、ホンダは当時流行していた4輪駆動車を商品に持たなかったため苦戦していた。

 そこで、4ドアセダンのアコードを基にし、またその生産工場で製造できる寸法のミニバンを開発したのである。それがオデッセイだ。米国市場を主戦場とし、ミニバンの兆しを掴んだホンダらしい着想といえる。

 オデッセイの誕生はまた、米国にも影響が波及した。より乗用車としての快適性や走行性能を高めたオデッセイが消費者を魅了したからである。

 米国で生まれたミニバンは、ピックアップトラックを基にしたフルサイズのバンに対し、より小型(ミニ)のバンとして生まれている。もちろん、米国で最初に生まれたミニバンも、乗用車を基にした作りではあった。

 だが、後のオデッセイやUSオデッセイなどに比べれば、床の低いことによる乗り降りのしやすさなど含めた実用性はともかくも、快適性の面では必ずしも上質とはいえなかった。米国では、フルサイズカーが最上級で、次にミッドサイズがあり、ミニバンに用いられたような小型乗用車というのは実用本位の廉価な作りであったためだ。そもそも大型の車が好まれる米国では、小型車開発が得意ではない。

 米国で当時乗用車1位の売り上げを誇ったアコードは、日本では上級車種の扱いになるから、そこから生まれたオデッセイも格段の上質さがあった。静粛性に優れた快適な乗り心地であり、また4ドアセダンに通じる走行性能の高さも備えていた。人気となるのも当然である。

 その米国でミニバンは、既存の4ドアセダンやステーションワゴンに追加して購入されることで、販売市場のパイを拡大したとされる。しかし日本においては、4ドアセダンやステーションワゴンを食い、売れ筋はミニバン一辺倒といった市場へ変化していった。

なぜ欧州ではセダンやワゴンが根強く支持される?

ドイツをはじめ、欧州では依然セダンやワゴンも根強い。その背景には日米とは違う交通環境も関係しているという

 それから約20年を経て、今度はSUV(スポーツ多目的車)が市場を席巻する。SUVが流行るきっかけは、やはり米国のカリフォルニア州で、ビバリーヒルズなど高級住宅街に住む人たちが上級4輪駆動車であるレンジローバーを日常的に使いだし、そこへ、トヨタがハリアーを投入したことで巻き起こる。

 ハリアーも、オデッセイと同じように4ドアセダンのカムリを基に4輪駆動車のような見栄えの車体を組み合わせることで、4ドアセダンと違った価値を与えた。休暇に郊外へ出かけ余暇を楽しむような雰囲気を備えながら、快適で運転のしやすい乗用車的感覚をもつ、新しい価値の登場だ。

 ミニバン時代の米国では市場を拡大したが、SUVも加わることで4ドアセダンやステーションワゴンの市場が食われていくようになる。いよいよ、日米ともに4ドアセダン冬の時代の到来といえる。

 一方、欧州では、MPV(マルチ・パーパス・ヴィークル)としての利用は、たとえばフォルクスワーゲン・タイプ2のように以前からあり、エンジンを車体前方へ搭載するミニバン形式になってからもそれなりの需要はある。

 しかし、日米に比べ欧州は全般的に走行速度が速く、郊外の道路では80km/hほどの速さで走るのが当たり前だ。また、高速道路は130km/h規制で、速度無制限区間のあるアウトバーンのような例もある。

 そうした交通状況では、よほど大勢で出掛けたり荷物をたくさん積んで出掛けたりする以外は、4ドアセダンやステーションワゴンの方が走行安定性は高く、理にかなっている。したがって、人も荷物もという要求に対してステーションワゴンの人気は根強い。

 また、企業における雇用の面で、役職に就く人にはカンパニーカーが与えられる制度もあり、通勤用に4ドアセダンが選ばれることから、その人気も堅調だ。カンパニーカーは、ある一定の車種の中から選ぶことになるため、日本メーカーの車は入り込む余地があまりなく、欧州でも4ドアセダン販売に苦戦している一面がある。

ミニバンにはないセダンの意外なメリット

左から順にシビックセダン、WRX S4、スカイライン。衰退したといわれながら国産セダンの選択肢は各社に残っている

 セダン離れという言葉とともに、日本車から4ドアセダンの選択肢が減っていった。それでも、たとえば2018年の乗用車ブランド名商別販売台数を見ると、上位50位の中に、トヨタ カローラ、クラウン、カムリ、プレミオが入っている。また、ホンダ シビックの中に4ドアセダンがあるし、マツダ アクセラにも4ドアセダンの選択肢はある。

 50位以内に入らなくても、レクサスのLS、ES、GSがあり、日産には、シーマ、フーガ、スカイライン、ティアナ、シルフィーが、またホンダのレジェンド、アコード、グレイスもある。マツダにはアテンザ、アクセラ、そしてスバルにレガシィB4、インプレッサG4というわけで、各社とも4ドアセダンはそれなりに残している。

 では、4ドアセダンが残される理由は、どこにあるのだろうか。

 改めて4ドアセダンの価値を考えれば、大人が5人乗れる客室が確保されている。ミニバンやステーションワゴンのような背の高い荷物は難しくても、荷室は奥行きがあり、容量としてはかなり物を積むことができる。重心が低いため走行安定性に優れる。

 特にミニバン、SUV、そしてステーションワゴンと比べ、3ボックス形状であるがゆえに荷室部分が低いので、後輪側の重心が低いことにより俊敏な操縦性を得られる。車の後輪は走行安定性を担うので、実は後輪側の重心の低さは操縦性を左右することになる。スポーツカーとまではいかなくても、4ドアセダンの運転が楽しいのはそのためだ。

 さらに、背が低いことによって、実は高齢者にも乗り降りしやすい側面がある。年配になるほど体の節々の可動範囲が狭まり、また筋力の衰えによって、足を上げて踏ん張り体を持ち上げるのが難しくなる。そのため、背の低い4ドアセダンの座席に腰から座る乗り方が便利だ。

 ミニバンやSUVに手すりを付けたとしても、床の高い車は高齢者には乗りにくい。降りる際には、4ドアセダンなら介護者が腕を引っ張ってあげれば外に出られる。SUVのように座席が高いところから降りる際、足がすぐ地面に着けないと不安になり、着地した時に体のバランスを崩しやすい。

衰退したセダン 復活の時は意外に近い?

 日本は、世界に先駆け高齢化社会になっていくといわれている。元気なお年寄りで平地は歩けても、足が上がりにくくなったり、体を持ち上げるのに苦労したりするようになる。そのようなとき、従来からの4ドアセダンやステーションワゴンは、乗り降りしやすい車となるのである。

 目新しさや家族の事情でミニバンやSUVを選んできた人たちも、再び4ドアセダンやステーションワゴンに戻る消費行動が、年齢を重ねることで起こるのではないか。また、ミニバンやSUVから車の利用をしはじめた人たちにとっては、4ドアセダンやステーションワゴンが目新しく見えるようになってくるかもしれない。

 4ドアセダンやステーションワゴンが注目を集める時代が、間もなく来るのではないかと、実は私は秘かに思っているのである。

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