STAY HOMEでバス知識増強!! バス界の帝王は健在 あの「エアロキング」にフルステージ試乗

 STAY HOMEが続く2020年のゴールデンウイーク。ベストカーWebは皆さんを暇になんてさせませんよ~!! 今回は単車の自動車として道路を走ることを許された、規制サイズ目一杯のパッケージングを持つバスを紹介します。

 それが三菱ふそうエアロキング。すでに生産が終了してしまった国産2階建てバス最後のモデルながら、見晴らしのいい眺望と独特の姿で、いまもバス好きには人気が高い。お子さまにも大人気の1台です!!

 超弩級「バス界のキング」の迫力を試乗記から感じていただきたい。

文:近田 茂/撮影:石川 智
取材協力:オノエンジニアリング


■誇り高いラスト・ダブルデッカーの咆哮に取材陣は酔いしれた…

こちらが三菱ふそうのエアロキング。堂々たる体躯が見るものを圧倒する

 惜しまれながらも2010年に生産が終了した三菱ふそうのエアロキング。この最後の国産2階建てバスは、バスファンならずとも今もって大人気の、まさに“キング”だ。

 3.8mというギリギリの全高を持つ隙の無い堂々たるフォルムと、2階建てという特別感あふれる構造。バスマガジンではこれまで、この“王様”の試乗を実現できずにいた。しかし良縁に恵まれ、試乗を果たすことができた。

中央高速道路を山梨県方面に向かって入るキング。道のりは上り坂だが、グイグイ走るという表現がピッタリの力強さがある

まさかコイツのハンドルを握る事ができる日が来るとは !!

 今回本誌で試乗のチャンス得られたのは、あのエアロキングだ。オノエン観光バスのご協力を得て、八王子市から中央高速を使用してミニツアーを実施。往路で運転を、復路ではお客として2 階席先頭中央のシートに陣取り「キング」の乗り味を堪能した。

後部から見ると一層の2階建て感を感じる。3軸というのも魅力のポイントだ

 バスファンにとってキングは、 まさに一切の説明を必要としないモデルだろう。今は無き国産2階建て観光バスの代表的モデル。とはいえ念のために触れておくと、そのデビューは1985年。超デラックス観光向け ダブルデッカーとして登場。好景気の中で至高のモデルとして存在した。

駐車場から出庫するエアロキング。路面段差の乗り越え性能も、ほかの高速・観光車と変わりない

 ライバルはいすゞを除き、日野 グランビューや日産ディーゼル(当時)のスペースドリームがそろい、いずれも83年の東京モーターショーで初公開された。

 80年代に入ると国内で2階建て観光バスの人気が高まり、まずはネオプランなどの輸入車が需要を賄い、市場での国産車待望論に国内3社が呼応。

2階客室は3列シート×10列(階段部分は変則レイアウト)の30名定員

 中でもエアロキングは途中中断を経るものの、2010年8月まで製造さ れ、孤高の存在へと昇華。現在もはとバス・オープンバスやウィラ ー・レストランバスなど、企画観光バスとしても注目を集めている。

■見晴らし抜群の2階席は 優越感を覚えるほど気分が良い

 試乗車は2001年登録車。JRから譲り受けた3列シートの高速路線仕様。記者にとってキングの運転は初。

 しかも搭載エンジンの8M21はV8OHV自然吸気の 21 .2L。08年に復活を果たした最終型では、6M70の12.9L直6OHCインタークーラーターボエンジンに換装されていただけに、往年の最強エンジン車を運転できたのは、実に光栄な体験だった。

高速車仕様のため、シートのリクライニング幅はたっぷり。フットレスト、レッグレストも完備で、ドリンクホルダー付きのテーブルも装備している

 ちなみに試乗車V8の最高出力は430ps /2200回転。最 大トルクは155㎏m/1200回転。最終型は同様に420ps/2000回転と185㎏m/1100回転。ミッションはいずれもOD付6MTだ。

こちらもいまは無き21L・V8、430馬力を発生する8M21-3型エンジン。その圧倒的なパワー感が高速バスドライバーたちにいまも高い人気のユニットだ

 運転席はハイデッカーよりも低い位置にセットされ、頭上には天井(2階フロア)があってやや窮屈な雰囲気。アイポイントも低く、かつてのエアロクィーンIIやIIIの運転席を思い出す。1階キャビンは右側に2座シートと左側は横向きソファに改造されていたが、仕様によっては対座シートもあった。

ここがスペシャル席の2階最前席だ。3m超の高さからの魅惑の眺望を堪能できる

 2階は3列独立シートの30人乗りスペース。深いリクライングとオットマンを備 えた豪華シートで、ほかのハイデッカーを見おろせる程の絶景。素晴らしい乗り味が楽しめた。

■17 年前のモデルにしては 運転席はなかなかの豪華さだ 

運転席は先代のふそう高速・観光車のほぼ基本形。ミッションは6MTだ

 さて、アイポイントの低い乗り味はすぐに慣れるが、全高3.8mの高さが把握できない。感覚的に判断できる車体にプラスして、2階部分の存在をシッカリと頭に入れておく必要がある。ガード下の高さや路側に張り出す木立にも要注意だ。

運転席の左後方には、交代ドライバー用の仮眠室が用意されている

 アイドリングは550回転。 2速へシフトし基本通りクラッチミートしてからアクセルを踏み込んで行くと、柔軟なトルクが発揮されて難なく発進していく。その様はまさに悠然たる出力特性が発揮されて実に頼もしい。

2階最後部には非常脱出口がある。これもダブルデッカーならではのレイアウトだ
非常出口のドアを撮影用に開いていただいた。ハシゴが展開してスムーズに脱出できる

 大排気量NAエンジンならではの底力がある。800から1600回転がグリーンゾーンで、レッドは2350回転から。トップ時速100㎞クルージング時のエンジン回転数は1700回転だった。

 トルクゾーンがワイドで極低速域でも十分にネバリ強い。吹き上がりや回転フィーリング、そして車重も重い印象だが、じわじわと継続するスピードの伸び感は好印象。

一般路走行でのアンダーパス。トンネルの天井が高さギリギリな感じだ

 ギヤシフトの選択にも融通が利く。感覚的にも常に力半分で走っているかのようなゆとりを覚えた。高速ではさすがに3軸車の安定感が際立つ。直安に優れ、ロールも驚く程少なく快適。最後輪は自然操舵機構があり、意外なほど小回りが利く扱いやすさも印象的。改めて3軸車の長所も再確認できた。

そしてトンネルも同様にギリギリ感!? がある。接触することは絶対にないのだが、この全高からやはり緊張感が増すのも事実だ

【主要諸元】◆三菱ふそうエアロキング MU612TX◆

全長 11990mm×全幅249mm×全高3770mm
ホイールベース 5650mm
エンジン 出力430ps/2200rpm・トルク155kgm/1200rpm
新車時価格 約5600万円