徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回は、トヨタ FX-GTを取り上げます。
当時隆盛を極めていた FRスポーツに対抗する勢力として FFスポーツが注目され始めた’84年10月、カローラシリーズにFFホットハッチが誕生しました。
その1カ月後にはホンダからCR-XとシビックSiが誕生し、過激なライバル関係を築いていきます。
ちなみにカローラFX-GTは4A-GELU、1.6L DOHCエンジンを搭載しましたが、これは2BOXにDOHCエンジンを搭載した日本初のモデルで、シビックSiとともにゴルフGTIに憧れる若い層に大人気となりました。
谷田部&筑波サーキットでのテストを敢行した、1985年1月号初出のベストカーガイドを振り返りましょう。
文:徳大寺有恒
ベストカー2017年6月26日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■ホールベース2500mm以下の実用車たちが向かう未来
どうしてFFツウィンカムなのですか? とよく聞かれる。わかりきったことである。
近い将来、小さなクルマ、具体的にいえばホイールベース2500mm以下の実用車は皆FFになってしまうからなのである。ホンダ・バラード・スポーツCR-Xを除いて、ほとんどのFFスポーツはスポーティカーである。
つまり、この種のクルマはほぼ完全な実用性を持ちながら、スポーティな性能とドライブフィールを与えたクルマなのである。けっして純粋なスポーツカーではないのだ。
クルマに実用性を持たせながらスポーティカーを作ろうとすれば実用車をベースに作るのが一番安上がりだ。そして、そのベースとなる実用車がFF化の一途をたどっているのだ。もう当分、この方向は引き返せないだろう。
現在世界中の小型車がFF化に向かい、トヨタだけがFRからFFの過渡期である。レビン・トレノをFRで生かし続けているが、次のカローラのフルモデルチェンジには生き残れまい。
小型車でも、ごく一部はFFコンポーネンツを用いたミドシップカーが少し増える可能性はある。しかし、ミドシップはあくまでスポーツとしてであり、実用性を持つものではない。
もちろん、より大きなエンジン、ボディのクルマにはむろんFRレイアウトが残るだろう。メルツェデス、BMWはその旗手ではあるが、これとてけっして主流ではなく、このクラスにもFFは大いに増えそうである。
つまりもうFRかFFかの時代ではない。ごくピュアな後輪駆動を好む人たちは、より大きなスポーティカーにいくか、ミドシップカーのような本物のスポーツカーにいくしかないのである。二者択一ではない、FFは必然であると思ったほうが正しい。
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