軽トラックは、日本に欠かせない“道具”のひとつ。軽自動車規格のなかで、農家や配送業などプロの厳しい要求に応え、進化を遂げたその存在は、世界的にも例をみない独自の価値を持つ。そして、その機能美や意外な走りの楽しさから、自動車ファンにも注目を浴びるマニアックな存在でもある。
そんな軽トラ界の新しい異端児が、スズキのスーパーキャリイとダイハツのハイゼットジャンボだ。
普通の軽トラよりちょっとだけ室内を広く取った両車の特徴は、当サイトでも既報のとおりだが、本稿ではよりマニアックに、室内の広さから積載性、小回り性能、加速性能に至るまで徹底的に比較。
制約の大きい軽規格ゆえ、その戦いは超接近戦かつハイレベル。両車は、まさに日本独自の技術を集めた最新軽トラの象徴だ!
文:渡辺陽一郎
写真:平野学
ベストカー 2018年8月26日号
室内が広いのはどっち?
スーパーキャリイとハイゼットトラックジャンボ(以下ハイゼットジャンボ)は、両車とも車内の上側だけを後方へ張り出させた。
標準ボディに比べて、シートの背もたれを後方へリクライニングできて快適だ。車内の下側には段差があり、荷台床面の長さを標準ボディと同等に確保。脚立などの薄型の荷物なら長くても収まる。
この共通点を踏まえて両車を比べると、車内が広いのはスーパーキャリイだ。ハンドルの上端からリアガラスまでの間隔は126cmで、110cmのハイゼットジャンボよりも余裕がある。リクライニングの最大角度も少し大きい。
ただしシートの座り心地は、ハイゼットジャンボが圧倒的に快適だ。座面の長さはスーパーキャリイよりも4cm長く、大腿部のサポート性がいい。カーブを曲がる時も着座姿勢が乱れにくい。
背もたれの形状も異なり、ハイゼットジャンボは肩の周辺まで支えるが、スーパーキャリイは体から離れやすい。座面の柔軟性はスーパーキャリイも相応にあるが、サイズと形状でハイゼットジャンボが快適だ。
ハンドルの角度もスーパーキャリイは水平に近くトラック的。ハイゼットジャンボは角度を立てて乗用車に近づけた。
快適性の総合評価はハイゼットジャンボが勝る。乗降性はスーパーキャリイが優れる。足が通過するホイールハウスの前端と、ドア開口部との隙間に24cmの余裕があるからだ。
ハイゼットジャンボは19cmで少し狭い。
軽トラの本領発揮! 積載性に優れるのは?
積載性は軽トラックにとって最も大切な機能だから、両車ともに徹底追求されている。軽自動車だからボディサイズは等しく、荷台の広さもほぼ同じだ。
例えば荷台の奥ゆきは1.5cmしか違わず、誤差の範囲に収まる。荷台の最短部(車内が荷台側へ張り出した部分)は、スーパーキャリイが18.5cm短い。
先の項目で述べたように、スーパーキャリイは車内の上側を広く取り、ハンドルの上端からリアガラスまでの間隔も16cm長いからだ。そのぶんだけ荷台の最短部が短くなった。それでも脚立のように薄型の長い荷物であれば積みやすい。
このほか荷台の横幅は、ハイゼットトラックの標準ボディを含めて同じ数値だ。路上から荷台までの高さも、2WDのスーパーキャリイとハイゼットジャンボは等しい。メーカーを超えたこの統一ぶりには驚かされた。
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