トラックの脱輪事故はこうして防げ! タイヤ履き替え時期は特に注意を!!

ナットの締め付けについて

 まずナットの締め付けですが、きっちりナットを締め付けるには車両メーカーが定めた「規定トルク」で全てのナットを均等に締め付ける必要があります。ところが、この規定トルクへの理解が浅いと諸刃の剣になってしまいます。「規定トルクで締めてさえいれば大丈夫なんだろ!?」という誤解です。

 本来、ボルト・ナットの締め付ける力は「軸力」で表されますが、タイヤ交換等の作業中に軸力を測定しているとかなりの作業時間を要します。そこで締め付ける力を簡易的に測定するためトルクが用いられるのです。

 効率よく締め付け具合を管理できるのが締め付けトルクで、ねじを回して締め付ける時の回転方向に回す力を表しています。軸力は締め付けた場合のねじの伸び等から測定するデータで、物体を固定させるための力を表しています。

締め付け時の回転力がトルク。ボルトが伸びて戻ろうとする力を利用するのが軸力
締め付け時の回転力がトルク。ボルトが伸びて戻ろうとする力を利用するのが軸力

 規定トルクが規定の軸力となるには、ボルト・ナットがスムーズに回転する必要があるので、国交省の見解にある通り、トルクによる締め付け具合の管理では「清掃、潤滑剤の塗布」が大事な作業のひとつだと言えます。

 ねじの清掃(ハブとホイールの合わせ面も含む)や潤滑剤の塗布によりスムーズに回転し、摩擦等による抵抗を少なくするのがトルク管理では重要です。ねじ山に傷や錆などがある場合、当然摩擦は大きくなりますから、清掃・潤滑油が不充分ですと規定トルクに達していても、実際の締め付け時の回転力は減少する可能性があります。

 ISOでは、潤滑剤を塗布する部分は、ボルト・ナットのねじ部、ナットに付いているワッシャーのナットとワッシャーの間です。このワッシャーの間の潤滑がされていない傾向が多いように思います。新品のナットはワッシャーがスムーズにガタツキもなく回転します。

 潤滑剤を塗布していないワッシャーは、がっちり噛み込んで動かないモノや、金属同士の摩擦で摩耗しているもの、回転はするものの引っかかりがありスムーズに回転しないものも存在します。

 この状態で規定トルクでの締め付けを実施しても、ワッシャー部分にトルク値を喰われて締め付け力が不足する可能性は高いですね。また、「ワッシャー部への潤滑剤の塗布」を勘違いされている方もいらっしゃいます。ホイールとの当たり面(ワッシャー座面)に潤滑剤を塗布しないでください。潤滑剤を塗布するのはナットとワッシャーの間です。

ISOのナットには回転するワッシャーが付いており、ナットとの隙間の潤滑も重要なポイントの一つ。スムーズに回転すれば規定トルクもかかりやすくなり締め付けもしっかりする。ワッシャー座面は塗布NGです! 塗り過ぎにも注意
ISOのナットには回転するワッシャーが付いており、ナットとの隙間の潤滑も重要なポイントの一つ。スムーズに回転すれば規定トルクもかかりやすくなり締め付けもしっかりする。ワッシャー座面は塗布NGです! 塗り過ぎにも注意

 また、潤滑剤なら何でもよいってワケではなくグリスを使用されるケースもあるようですが、これは締めすぎの危険性がありますのでお勧めいたしません。可能ならば締め付け専用の軸力を安定させる潤滑剤が良いでしょう。
 
 専用の潤滑剤でなくても近い成分の油脂があります。エンジンオイルです。ガソリン、ディーゼル、低燃費用、グレード等は関係ありません。ただしエンジンオイルで代用する場合、新品のオイルにしましょう。廃油は不純物が多く含まれ潤滑剤としての機能を発揮できないので使わない方が賢明です。

やはり大事な日常点検

 それとやはり日常点検ですね。点検ハンマーによるナットの打診、目視によるナットの脱落、錆汁の有無、ホイールのクラック等、運行前点検を適切に実施して、異常を発見して対処していれば脱輪事故にまで至らなったケースは数多く存在します。

 点検ハンマーによる打診は緩んだナットを判別する方法として一般的ですよね。打音の違いで「緩んでいるナット」を特定する作業です。耳が鋭い方は音だけで緩みの違いも聞き分け可能かもしれませんが、完全に違う音に聞こえる段階ですと、もうかなり緩んでいます。

 もちろん、それも大事な点検ですが打診により「これから緩む可能性が高いナット」を特定することもできます。

 お勧めする方法はナットの叩く場所の反対側に指を添えて振動を感じる点検方法です。完全に締まっているナットは、しっかりホイールを押さえ込んでいるので反対方向に振動が伝わりません。

 ところが規定トルクの2/3〜半分くらいになると指先で振動を感じることができます。緩み始めのナットを特定できたのならば、そこで増し締めをすれば当面の車輪脱落は防げるわけです。可能であれば、締め付けトルクの管理ができる機器で締め直せばベストです。

叩いた音の違いや指に伝わる振動で緩みんでるナットを特定します。ある程度練習した方が確実
叩いた音の違いや指に伝わる振動で緩みんでるナットを特定します。ある程度練習した方が確実

 この振動による緩み判断を習得するにはある程度の練習が必要ですが、いったん緩ませたナットを、トルク管理ツールで段階的に締め付けを強くしながら振動を指で感じ取る練習をすることで身に付けることができます。社内での研修などで実施されるのも良いかもしれません。

 ここで凄く大事なことをお伝えします。こういった体験研修などを実施すると、研修の後半などはだんだん判断の精度も上がってきます。規定トルクまで達していないものの、打診ではわからない程度に緩んでいる状態のまま研修を終わらせてしまうことがあります。

 ですので、研修の最後は必ず規定トルクまで締め上げ、ナットへのラインマークをすることをお願いいたします! これを書いている本人が実際にやらかしました! あ、でも緩んだままで研修を終え、その後気づいて増し締めはしておりますので、もちろん事故は発生しておりません。研修もご安全に!

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