噂のユーザー車検、どれだけ安くてどれだけ面倒なの?

 クルマを持っていると乗用車であれば新車から3年、それ以降は2年に一度の車検はそれなりの費用もかかる大イベントである。

 車検はディーラーや修理工場、車検代行といった業者に頼むことが多いと思うが、自分で陸運局にクルマを持ち込み車検を継続するユーザー車検という手もある。

 ユーザー車検であれば極端な話、削りようのない法定費用となる自賠責と重量税、印紙代と呼ばれる車検のライン使用費と紙代でとりあえず車検を継続できることも多々あり、費用が安くすむのは事実だ。

 しかし、世の中「安いものには何かある」というのも常で、単に安さだけでユーザー車検に飛びつくというのは勧められることではない。

 そこで当記事では継続車検の方法ごとの○と×や大まかな費用、ユーザー車検に挑戦する際のやり方や注意を、素人ながら年に1回はユーザー車検を受ける筆者が解説する。

文:永田恵一/写真:永田恵一、平野学、ベストカー編集部


車検を業者に任せた場合の○と×

 車検を受けるクルマは、トヨタ86を例とすると、法定費用となる24カ月分の自賠責と重量税はそれぞれ2万5830円、2万4600円、印紙代1200円の合計5万1630円となる。

■ディーラー車検(某ディーラーの場合)

 費用は法定費用5万1630円+基本料金(定期点検料、測定検査料、代行手数料、クルマのサイズによって異なることも多い)4万8600円=10万230円。

 ここに整備費用も加わることがほとんどなので、最終的には合計約12万から15万円程度だろうか。

【ディーラー車検の○ 】
・扱い車種であれば作業するケースも多いのでクルマごとの弱いところに代表される予防整備を含め、整備の確実性、安心度は高いこと

【ディーラー車検の×】
・内容を考えれば納得はできるが、絶対的に安くないのは否めない

■車検代行業者(某社の場合)

 費用は法定費用5万1630円+車検基本料9500円(最も安いコース)=6万1130円。

 なお、車検基本料はクルマのサイズによって異なる場合が多く、いくつかコースが用意しているところもあり、整備費用を含めると10万円程度だろうか。

民間の車検代行業者は、車検するユーザーの確保のためにいろいろな料金プランを用意するなど予算によって選べるのが魅力。クルマについての相談もできるのは○

【車検代行業者の○】
・手間の少なさと料金のバランスはいい
・そのクルマに今後乗る期間に代表される使い方に応じた車検の継続の仕方を相談しやすい

【車検代行業者の×】
・車検を継続するクルマ特有の深い知識、作業にはあまり期待できない

いざユーザー車検にチャレンジ!

 費用は前述したとおり単純に車検を継続するだけなら法定費用のみですむので、とりあえず5万1630円程度。そこにコンディションに応じた整備費用を用意しておきたい。

■事前準備

 ユーザー車検は、事前準備が必要になってくるので注意が必要。事前準備に必要なこと、項目を書き出しておく。

(1)予約
 ユーザー車検の場合、いきなりクルマを陸運局に持ち込んでも継続車検を受け付けてくれる場合もあるようだが、基本的には枠を予約したほうが無難だ。

 予約はインターネットから行い、車検証を見ながら必要な情報を入力すればOK。ただし予約できるのは平日の午前午後となるので、この時点で筆者のような自由業なら受けやすいが、普通のお勤めの方にはハードルが高いのは事実だ。

 車検を受ける陸運局は自分のクルマのナンバーの管轄と違う陸運局でも構わないので、最寄りの陸運局で予約が取れない場合はほかの空いている陸運局で受けてもいい。

 時間は車検に合格しなかった際に対処する時間を確保する意味で、可能なら午前にしておいたほうが無難だ。

 なおユーザー車検を受けるのは登録車の場合は陸運局だが、軽自動車の場合は陸運局とはまったくちがう場所にあることが多い軽自動車検査協会になるので、予約の段階から注意してほしい。

軽自動車のユーザー車検を受ける場合は、まず陸運支局と同じ場所にないケースが多々あるので、どこにあるのかを確認しておけば慌てることもない

(2)クルマの確認
 現在の車検制度では24カ月点検と呼ばれる車検前の整備は車検後でもOKとなっているので、そのまま車検を受けても通ればとりあえずはいいと言えばいいのだが、やはり車検前に確認しておきたいところ。

 やり方としてはクルマのメンテナンスノート(整備手帳)に記載されるように確認を行い自分でサインするなり、プロに見てもらうなり、自分にあった方法を選んでほしい。

■車検当日

 ここからが、実際に車検を受ける、という行程となる。

★テスター業者(予備検査業者)の利用

 当然ながら慣れてない人が車検を受けるのは不安なものである。

 そこで覚えておきたいのが陸運局の近くに必ずあり、俗にテスター業者と呼ばれる予備検査業者の利用だ。

 テスター業者には車検のラインに近い機材が揃っており、車検前に行くと予行練習になりラインに並ぶ際のアドバイスも受けられる。

 また光軸(ヘッドライトの照射角度)の狂いに代表される細かな調整もやってくれるので、テスター業者でOKならほぼ車検はクリアできると考えていい。

ユーザー車検を受けた際に最も落ちる可能性が高いのがヘッドライトの光軸の狂い。テスター業者にチェックしてもらい、OKが出ればまず落ちることはない

 費用はところによって異なるが、車検の前にフルコースで確認を頼むと4000円から5000円といったところなので、安心料と考え利用するのもいい。

 テスター業者は重大なトラブルには対応してくれないが、逆に光軸の狂いなどの調整は単品で受け付けてくれるので、車検に落ちてしまったらそこだけ直してもらい再検査を受けるという考え方もある。

 続いて、実際に車検を受けるユーザーがやるべきことは以下のとおり。

(1) 書類記入
 特に個人の場合は時間に余裕を持って陸運局に行ってほしい。陸運局に着いたら先にサブとなる建物で印紙を購入し、重量税を支払う。

 自賠責の継続は陸運局の近くでもできるが、事前に自分の保険屋さんに頼み、受け取っておいたほうが何かと無難だ。またここでは自動車税の納税も確認があるので、納税証明も持参しよう。

 次に印紙を購入した際に渡される書類を記入する。継続車検の書類の記入は1000円程度払って代書屋さんにお願いしてもいいが、時間がないかよほど字を書くのが苦痛でなければ自分で記入することを勧める。

 書類にはその時点での走行距離も記入するので、メモしておくか携帯電話のカメラで記録しておくと後がスムースだ。

(2)予約確認
 陸運局のメインとなる建物に「ユーザー車検」と書かれたところがあるので、予約の確認と受付をすませる。

 その際にたいてい「車検をされたことはありますか?」と聞かれるので、慣れてないなら素直にその旨を伝えれば車検ラインの見学、やり方のビデオの鑑賞、初心者マークを渡してくれるといった対応をしてくれるので従おう。

 ユーザー車検に限らず陸運局での手続きは全体的に用紙の出し入れが頻繁にあるので、クリアファイルを1つ持っていると何かと便利だ。

■車検を受ける

 手続きが終わったら、指定された検査ラインに並び、いよいよ車検だ。ただ無暗に進むことはNG、表示に従って進んでいく検査ラインは空いている時はあっという間、混んでいる時は渋滞よりも動かないなど、流れの波は大きい。

 では、その後の行程を順を追って紹介していこう。

(1)ラインに入る前の各種確認
 ボンネットを開けて車検証と車体番号の一致、走行距離、ウインカーやバックランプといった灯火類、ホーン、ワイパー&ウォッシャー、前のドアのガラスフィルム、ホイールナットもしくはボルトの締め付け(そのためホイールキャップのクルマはホイールキャップを外しておく必要がある)といった確認が行われる。

ボンネットを開けて、エンジンルーム内をひととおりチェックしておこう。あと、車体番号が車検証と一致しているのかも要確認

 確認は指示に従って受ければいいのだが、ここで注意したいのがメーター内のエンジンチェックランプに代表される警告ランプの点灯だ。

 警告ランプが点いているとそれだけでアウトなので、点いているようなら点かないよう事前の整備が必要だ。

警告灯が点灯しているとそれだけでアウト。警告灯類は事前に要チェック。走行距離を控えておく必要があるが常時ODDメーターが常時表示されないタイプもあるので要注意

(2) サイドスリップ検査
 ホイールアライメントを簡単に確認するサイドスリップ検査は単純に通過するだけだ(検査中は正面のディスプレイに合否や「もう一度」などの指示が表示され、次の検査に行く前に機械で用紙に結果を記録する)。

(3) テスター上での検査
 ここではスピードメーター、ヘッドライトの光軸、ブレーキ関係の検査。

●スピードメーター
 テスター上でタイヤを回し、メーターが40km/hになったらパッシングする。実測とメーターの誤差はざっくり10%認められている。コツはトラクションコントロール付きのクルマは解除する、メーターが安定したところでパッシングする、メーターを安定させる意味も含めMTなら2速あたりの低いギアでタイヤを回す、といったことが挙げられる。

スピードメーターの検査では、MT車の場合、1速ではギクシャクするので、2速あたりの低いギアにホールドしてタイヤを回すのがベスト

●ヘッドライトの光軸
 ハイビームにしたヘッドライトが映る機械が測定するだけなので、特に注意はないが、車検において最も不合格になることが多い検査でもある。

●ブレーキ関係
 ブレーキ関係はギアをニュートラルにし、フットブレーキは回転するローラーに対しシッカリとジンワリ踏む、パーキングブレーキは強くかけるのがクリアのコツだ。

ブレーキ検査はタイヤを外すことはない。回転するローターに対してしっかりブレーキペダルを踏むことが重要。リラックスしてやれば問題なくクリアできる

(4) 排ガス検査
 これは排ガスのクリーン度を計測する検査で、マフラーにプローブと呼ばれる細い棒を入れるだけなので、不合格の場合は重大なトラブルを抱えている可能性が高い。

 強いて注意を挙げるなら、排ガスをクリーンにする触媒が冷えないようシッカリ暖機をすませておくことと。

 あとハイブリッドカーではクルマ任せだとエンジンがかからないことがあるので、車検などの際に使う整備用のメンテナンスモードの入れ方を確認しておきたい点くらいだ。

基本的にノーマル状態で異音が大きくなっているなどなければ排ガス検査はすぐに終わる。ハイブリッドの場合は、メンテナンスモードのやり方を事前に要チェック

(5)下回りのチェック
 クルマを揺らされるなどしながら、地下から各部のオイル漏れ、排気漏れなどがチェックされる(軽自動車の場合は乗車したままリフトが上げられるのでちょっと楽しい)。

 下回りのチェックは問題がなければOKだし、問題があれば整備が必要になるので成り行きに任せるしかない。

■検査後

 検査後は用紙に結果を記入し、合格ならメインとなる建物で新しい車検証が渡され、不合格ならテスター業者などでの対応後に不合格部分を再度検査するという流れだ。

 文字にすると難しいようにも感じるが、実際には陸運局のスタッフは基本的に親切なので、ちゃんとしたクルマであればアドバイスを受けながら車検をクリアすることは特に難しくない。

 ユーザー車検についてまとめると、所要時間は移動も含めザッと半日かかるのに加え、平日しか受けられないので前述したようにやはりお勤めの人にはこれだけでもハードルは高い。

 それ以上に重要なのは「車検に合格した」というのは「その場では問題ないとしても、長期的な安心安全は一切保障されない」ということだ。

 そのため車検をクリアする方法はともかくとしても、いずれにしてもクルマは車検を期にするなどして定期的に入念なチェックが必要な訳で、安さだけでユーザー車検に飛びつくのは賛成できず、ユーザー車検は万人に勧められるものではない。

 しかし「整備をちゃんと行う」という人であれば、ユーザー車検は安さに加え、車検制度や行政を自分の目で確認するという一種の社会勉強の機会とも言えるので、一度くらいユーザー車検を受けるのも有意義な行為といえるのではないだろうか。

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