欧州クリーンディーゼル勢がハイブリッド優勢の日本市場を狙った理由

欧州クリーンディーゼル勢がハイブリッド優勢の日本市場を狙った理由

 近年のクルマは、エンジン音がかなり静かになった。特に、ガソリンハイブリッドが主流となっている日本では「最新のクルマであるほど静か」というのが、多くの日本人の感覚だろう。

 しかし、それとは逆の流れを、欧州メーカーがつくっている。BMW、Mercedes-Benz、フォルクスワーゲンなどが、日本市場へクリーンディーゼルモデルを続々と投入させているのだ。

 しかも、エントリーモデルだけでなく、より上質が求められる上級モデルにも、「ゴロゴロ」というアイドリング音を響かせるディーゼルエンジンを搭載モデルがある。なぜ、欧州メーカーは、これほどにディーゼルモデルを日本へ投入しているのか。それには5年前に発覚した、あの問題が根底に関連している。

文:吉川賢一
写真:MAZDA、BMW、Mercedes-Benz、TOYOTA、VW

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ディーゼルエンジンで「大丈夫なはず」だった

 ディーゼル車は、欧州市場では定番だ。日常的に長距離運転をすることが多い欧州では、ディーゼル車のもつ低燃費は生活するにおいて必須。

 そのため、ブルブルとした振動や、ガラガラというノイズの低減よりも、ロングドライブでの低燃費と、燃料代の安さ、加速の力強さなどが求められ、ディーゼルエンジンが支持されてきた。さらなる燃費向上のため、ディーゼルエンジンに、マニュアルミッションを組み合わせるのが、一般的だ。

 昨今のクリーンディーゼルエンジンは、排ガスの浄化能力が大幅に進化しており、また振動対策や騒音対策も念入りに施されているのは、ご存じの通りだろう。

 欧州メーカーも、燃費向上技術として、クリーンディーゼルエンジンを将来的に進化させていけば、「環境負荷を下げる一つの解」だと考え、欧州のCO2規制、いわゆるCAFE規制(企業別平均燃費基準による厳しい指針)に対応するよう、ディーゼルエンジンの開発を長年行ってきた。だが、その目論見が崩れたのが、2015年のVWのディーゼル不正事件だった。

 あの事件が発覚したことで、排ガス規制強化が一層進むこととなった。ディーゼルエンジンでこの規制に対応しようとすると、コストが大幅に増加することに加えて、ユーザーのディーゼルエンジン車に対する人気も低下。欧州メーカーはディーゼル車頼みのCO2規制対応から、方針転換をせざるを得ない状況となった。

 CAFE規制による罰金を少しでも軽減するため、ハイブリッドやPHEV、EVといった戦略に進路変更し、目下邁進している真っ最中、というのが現状だ。

メルセデスベンツS400dに搭載される3.0リッター直列6 気筒ターボディーゼルエンジン(最高出力340ps/最大トルク71.4kgfm) フラッグシップカーにもディーゼルエンジンのグレードが存在する
メルセデスベンツS400dに搭載される3.0リッター直列6 気筒ターボディーゼルエンジン(最高出力340ps/最大トルク71.4kgfm) フラッグシップカーにもディーゼルエンジンのグレードが存在する

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