2018年3月7日より、トヨタ自動車は燃料電池バス「SORA」の型式認証をFCバスとして国内で初めて取得し、販売を開始しました。トヨタによると、2020年までにこのFCバスを100台納入する予定だとのこと。
燃料電池バス。なんだかすごそうです。ですが、普通の人にはこれがどれだけすごいのか、今いちよくわかりません。もやもやしていたところ、トヨタから当編集部に「ぜひ試乗に来てください」というお誘いが届きました。マジか。
そこで『バスマガジン』(弊社刊/奇数月27日発売)の末永編集長を解説役に抜擢。この「SORA」のどこがすごいのか。そもそも最近のバス事情はどうなっているのか。そこのところから伺いました。
文:末永高章(『バスマガジン』編集長) 写真:平野学
■現在、バスの主流の動力ユニットはなんなのか?
いよいよ燃料電池バスの量産化が開始された。
昨年のはじめ頃、いまとなっては「プロトタイプ」といえる2台の燃料電池バス(FCバス)が発表され、その車両は東京都交通局に納入された。続き、今年になって同じ型式のFCバスが豊田市で[ミラノス]という公募によるマスコットネームで、市内の一般路線ルートを実証運行している。
そんな中、2020年の東京オリンピックを照準とした量産化となったのが「SORA」だ。この車両は自動車としての技術もさることながら、燃料電池バスとして、国内で初めて型式認証を取得した点がバス業界として超大ニュース。
現在、バスの主流の動力ユニットはディーゼルとディーゼル+ハイブリッドだが、20世紀終わり頃からジワジワと強化(?)され続けている排出ガス規制と大型車燃費基準で、目まぐるしいほどの技術革新が迫られている。いま売っているバスはすべて、現在の基準である「ポストポスト新長期規制」という、20年前からは考えられないほどにクリーンな排出ガスとほとんどPM(煤)も出さない、ヨーロッパのユーロ6という基準よりも厳しい、世界一の規制値をクリアしている。
そのために排出ガス処理装置の開発やエンジンの小排気量化、ミッションの自動化などの技術が進み、排出ガス規制ばかりでなく、ドライバーの負担軽減、客室内の容積拡大化、騒音の低減などといった通過効果(?)も得られ、世界一のバス技術を持っていると言えるほどになった。
■今回の「SORA」はどこがすごいのか?
トヨタから発売されている乗用車に、おなじ燃料(水素)電池を使ったEV「MIRAI」が発売され、世界中が驚いたが、バスは場合、それをそのまま大きくすればいい、というものではないことは、内燃機関を使った従来の自動車/バスとの関係と同じだ。
走行に必要なトルクはモーターが発生するためわかりやすいが、問題は車体。
バスは数少ない“立っている人も乗っている自動車”だ。つまり、乗用車よりもはるかに少ない挙動で動くことが要求され、しかも「SORA」はほぼフルサイズの大型車というスケールだ。
バスのボディは多くの乗用車のような全体を全体で支えるモノコックではなく、シャシーに柱を立ててその間をパネル(梁)で埋めるスケルトンという構造だ。このボディ、やたらと頑丈だが重心が高い、という特徴がある。
なので、現在のほかの大型路線バスのように、地上最低高の低いノンステップ床なのは功を奏しているが、16tという路線バスにはあるまじきGVW(車両総重量/既存のバスは12t以下と14t以下がほとんど)であり、さらに重いバッテリーをルーフに載せながら、立ち乗車客が安定して乗っていられる点は、バスの性能としてすごすぎる。
もちろん、水素を燃料としたEVであること。これを2020年までに100台納車するという体制と技術力。そして満充填で100㎞の営業運行が可能なことなどが凄いというのは言うまでもないことだ。
ただ、バスという目線で見ると、見た目はブルーリボンやエアロスターと同じサイズでありながら、GVWが16tであることと、にも関わらずバスとしての走行安定性の高さに凄さを感じた。
それともうひとつ、実験車両では充電式EVのバスはすでに珍しくはないが、内燃機関エンジンから完全に離脱したバスが型式認証を取得したということも驚きのニュース。これも超すごいことだといえる。
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