3月中盤に開催される予定だったジュネーブモーターショーで、世界初公開される予定だったヤリスクロスオーバー。
コロナ渦によってジュネーブモーターショーが中止となってしまったことで世界初公開のタイミングを逸してしまい、現時点、いつ発表されるのか、見通しは立っていないようである。
出ばなをくじかれてしまったヤリスクロスオーバーであるが、クルマの内容は実に興味深く、コンパクトカーをベースにSUVルックスを与えて作るコンパクトSUV(筆者はカジュアルSUVと呼ぶ)の中でも、異彩を放つSUVになりそうなのだ。
ベースのヤリスのポテンシャルが高いだけに、このヤリスクロスオーバーには大いに期待できる。現時点で判明している情報を元に、ヤリスクロスオーバーはカジュアルSUV業界を牛耳ることができるか、考察してみた。
文:吉川賢一、写真:トヨタ、VW、予想CG:ベストカー編集部
【画像ギャラリー】ヤリスクロスオーバー vs 仮想ライバル車たち
ヤリスクロスオーバーの概要は?
ヤリスクロスオーバーの初公開の場が欧州の予定だったことを考えると、グローバル向けSUVとしてデビューさせる計画なのは明らかだ。
そのため、フィットCROSSTARやノートC-Gearのような、車高を上げてエクステリアをSUV風に加飾した「なんちゃってSUV」とは違い、かなり気合が入っているクルマであると、考えられる。
詳細を見ていこう。「高い評価を得ている新型ヤリスと同じ「GA-B」プラットフォームを採用し、ボディサイズを全長4170mm、全幅1765mm、全高1555mm、ホイールベース2560mmに拡大する予定。
搭載エンジンは、ヤリスと同様、1.5リットル直3ハイブリッドと1.5リットル直3ガソリンエンジン。これにCVTもしくは6速MTが組み合わさる。
サスペンションもヤリスと同じく、フロントがマクファーソンストラット式、リアはFFがトーションビーム、モーター駆動の4WD車はダブルウィッシュボーン形式」というのが、現状判明している、ヤリスクロスオーバーの情報だ。
ヤリスに対して、全長が230mmも長く、また車幅も70㎜も広いことを考えると、フィットCROSSTARなどのように、フェンダーアーチやバンパーの拡幅で誤魔化すような設計ではなく、専用車体を作るものと考えられる。
またホイールベースがヤリスよりも10㎜増えているのは、サスペンションストロークを大きく取るために、ホイールトラベルの余裕を考慮したため。フロアを伸ばしてはいない。
ボディサイズは、ロッキー/ライズとC-HRの間に位置する大きさで、最も近いのはフォルクスワーゲンのT-CROSSだと考えられる(表1を参照)。
そうなると、欧州市場に2019年に登場した強敵T-CROSSとガチンコで戦うことになる。
ライバルに対しての長所、短所は?
仮想ライバルをT-CROSSと設定する。T-CROSSのエンジンは1.0リットル直3ターボ。
最高出力116ps/最大トルク200Nmの出力を発揮し、1270kgのボディを7速DSGで走らせる。駆動方式はFFのみの設定だ。燃料はハイオクで、WLTC総合モード燃費は16.9km/L。
車両価格は「T-Cross TSI 1st」が299万9000円、「T-Cross TSI 1st Plus」が335万9000円だ。この違いは、タイヤサイズ(plusは前後215/45R18インチ)のほか、レーンキープアシストシステム、ハイビームアシストといった装備の有無となる。
エンジンに関してはヤリスクロスオーバーの圧勝だ。ヤリスのハイブリッドエンジンは、36.0km/LというWLTC燃費で環境性能とパフォーマンスの両立レベルが高く、現時点世界一のコンパクトカー向けエンジンだ。
3気筒ガソリンエンジンは、21.6km/L(WLTC燃費)とやや落ちるが、加速性能はハイブリッド並みの強さを持ち、パフォーマンスが素晴らしい。
T-CROSSの1.0L直3ターボも、軽快な回転フィールでコンパクトなボディをグイグイと走らせることはできるが、ヤリス程の実燃費は期待できない。
ただし、ヤリスクロスオーバーはボディサイズを拡大するため、重量が100kg~150kg程度は増える可能性はある。
ヤリスのように、加速が良いままではないかもしれないが、たとえエンジンに手を入れなかったとしても、ヤリスクロスオーバーがT-CROSSよりも燃費に優れるのは、容易に想像できる。
車両価格については、ヤリスクロスオーバーは210万~250万円という予想だ。国内向けのヤリスは、岩手工場で生産されており、ヤリスクロスオーバーも同工場生産だとすると、T-CROSSの価格では相手にならない。
だが、英国でのT-CROSSの価格は17,715ポンド≒約239万円(1ポンド=135円)と、一気に割安に感じるレベル。
フランスにある工場で生産されるヤリスクロスオーバーは日本のような破格とはいかないと思われることから、欧州ではいい勝負となるかも知れない。
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