ヘッドライトのロービームとハイビームは、それぞれの正式名称が「すれ違い用前照灯」と「走行用前照灯」と呼ばれるように、法規においてはハイビームが基本で、対向車や先行車がいるなど必要な場合にのみロービームを使うと定められている。
しかし、それはヘッドライトの性能が低く、周りも暗く、クルマも少なかった自動車黎明期の話であり、現代の街頭などが増え、周りにクルマが密集している交通環境下においてハイビームを基本に走行することはなかなかできないというのが現実だ。
それでも「明るく照射距離の長いハイビームをできるだけ使って、早めに周囲の情報を収集する」というのは適切にロービームとハイビームの切り替えができれば正しい行為であり、それを自動化したのがここ数年装着車が激増しているオートマチックハイビームなどと呼ばれるものである。
当記事ではオートマチックハイビームを改めて紹介し、その是非などを考察していく。
文:永田恵一/写真:NISSAN、SUBARU、TOYOTA、LEXUS、HONDA、MITSUBISHI、AUDI、BMW、MERCEDES-BENZ、PEUGEOT、JAGUAR LAND ROVER、ベストカー編集部
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オートマチックハイビームの仕組みとは
オートマチックハイビームはフロントガラスに置かれるカメラを使って対向車や先行車を検知し、オンにしておけばロービームとハイビームを状況に応じて切り替えてくれるというものだ。
オートマチックハイビームに使うカメラは、自動ブレーキ&運転支援システムの情報収集源となる単眼カメラや人間の目のような2つのカメラとなるステレオカメラが兼ねていることがほとんどだ。
そのため自動ブレーキ&運転支援システムが付いているクルマならオートマチックハイビームも付随している可能性は非常に高く、この点がここ数年のオートマチックハイビーム装着車の激増と強く関係している。
オートマチックハイビームの種類
オートマチックハイビームは大きくわけると2つに分類することができる。
■単純にロービームとハイビームを切り替えるもの
こちらは前述したカメラが付くクルマであれば、安価なハロゲンヘッドライトのクルマでも装着可能だ。
■アダプティプタイプ
アダプティプタイプのオートマチックハイビームは、「視界確保のため少しでも積極的にハイビームを使いたい」というコンセプトを持つものだ。
ハードウェアにはヘッドライト自体に、「LEDの三眼タイプ」などといったきめ細かいロービームとハイビームの切り替えができるものを使う(そのためコストは高い)。
具体的な作動は「先行車がいる場合には中央はロービーム、左右の端はハイビーム」、「対向車がいる場合には右側はロービーム、左側はハイビーム」といった具合だ。
名称はトヨタではアダプティプハイビームシステム(AHS)、マツダではアダプティプLEDヘッドライト(ALH)など、各社で異なる。
アダプティプタイプのオートマチックハイビームをさらに発展させたものとしては、2019年にマイナーチェンジされたレクサスRXにオプション設定(7万1500円)されるブレードスキャンAHSがある。
ブレードスキャンAHSは高速回転する2枚のブレードミラー(リフレクタ=反射板)にLEDの光を照射し、光の残像効果を用いて前方を照射する方式だ。
RXの場合はブレードミラーの回転に合わせて12個のLEDの点消灯を制御しており、従来のアダプティプタイプのオートマチックハイビーム以上にきめ細かい積極的なハイビームの使用を可能としている。
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