日本で買えるクルマの中で唯一のミニバンに軸足を置きながらSUVの要素も強く持つ三菱デリカD:5の販売は、2019年2月にフルモデルチェンジ級の超ビッグマイナーチェンジを受けてからも堅調である。
クルマメーカーは好調なマーケットと判明すれば、ライバルの独占を阻止すべく同じコンセプトのモデルを開発して後追いするのが常套手段だ。
しかしことデリカD:5については、ライバルすら存在しない状態が続いている。これは非常に稀有な現象にも映る。
当記事ではデリカD:5の販売が堅調な理由やデリカD:5の未来を考察してみた。
文:永田恵一/写真:MITSUBISHI
【画像ギャラリー】2019年のフルモデルチェンジ並みの改良で大幅に魅力アップ 三菱デリカD:5はライバル不在で唯我独尊、我が道を行く!!
デリカD:5の現状
デリカはスターワゴンのサブネームを持つ2代目モデル以来、「オフロードも走れるミニバン」というキャラクターを最大の武器に堅調に売れていた。
2代目モデルのキープコンセプトだった3代目モデル、ベース車を2代目パジェロとし1994年の登場以来13年間販売された4代目モデルのデリカスペースギアを経て、現行モデルは2007年に登場。
現行モデルは初代アウトランダー以来現行の三菱車まで幅広く使われるエンジン横置きのFFプラットホームを使い、乗用車的なハンドリングや快適性を得ながら、デリカに求められるオフロード走破性は十二分なレベルをキープ。
超ビッグマイナーチェンジ前の現行モデルはデリカのキャラクターによく似合うディーゼルエンジン搭載車を追加するなどしながら、超ビッグマイナーチェンジ直前まで堅調に売れ続けた。
超ビッグマイナーチェンジされたデリカD:5はより個性の強いものとなったフロントマスク、超ビッグマイナーチェンジ前とは別物といえるくらい高級感を増したインテリアが与えられている。
6速から8速となったATに代表されるパワートレーンの改良(搭載されるのは2.2L、4気筒ディーゼルターボのみ)、待望の自動ブレーキと停止まで対応するアダプティブクルーズコントロールを採用。
同時に細部の改良も徹底的に行われており、通常のフルモデルチェンジ以上にいいクルマ、魅力あるクルマに進化した。
結果、超ビッグマイナーチェンジされたデリカD:5は内容が大きく向上したこともあり、価格もだいぶ上がった。
それでも月1500台という2019年度の販売目標台数に対し、2019年は月平均1500台、2020年も同1000台と、2020年はコロナウイルス禍の影響もあったことを加味すれば、堅調な販売をキープしている。
デリカD:5はなぜ堅調に売れる?
デリカD:5が根強い人気を得ている要因として、大きくわけて筆者には3つの理由が浮かぶ。
(1)オンリーワンの存在だから
冒頭に書いたように日本で買える「ミニバンに軸足を置きながら、SUVの要素も強く持つクルマ」というのはデリカD:5だけである。
またクルマに限らずほとんどの商品にはライバルがあり、「代わりになる商品もある」のが普通だ。
しかしジャンルは別にして日本で買えるクルマでデリカD:5と同様のオンリーワンのクルマは、「ライトウエイトオープン2シーターFRのマツダロードスター」、「現実的な価格のFRスポーツクーペのトヨタ86&スバルBRZ」、「軽&小型本格オフローダーのスズキジムニー&ジムニーシエラ」、「マルチパフォーマンススーパーカーの日産GT-R」くらいのものだ。
こういったクルマはアップル社のパソコンやアイフォンのように、「文句があっても、代わりになるものがないから欲しいならそれを買うしかない」というライバル不在の商品だけに、ニッチな市場にせよ一定数は売れるものだ。
(2)超ビッグマイナーチェンジでの商品力の劇的な向上
デリカD:5が超ビッグマイナーチェンジ前からオンリーワンの存在だったのは事実ながら、自動ブレーキ&運転支援システムがまったくなかったため万人向けとは言えず、オーバーに表現すれば「マニア向け」と言わざるを得なかった。
それが超ビッグマイナーチェンジで「最新」とか「完璧」とまでは言えないにせよ、自動ブレーキ&運転支援システムが付いたことで、大きな弱点も一定まで改善されれば一気に魅力を増し、デリカD:5も少なくない気になっていた人が一気に有力な選択肢としたに違いない。
(3)以前からミニバンとしても魅力があった
デリカD:5はビッグマイナーチェンジ前からシートに厚みがあることなど、ミニバンとしてだけ見ても魅力があった。
また標準モデルと中身は同じながら都会的なエクステリアを持つアーバンギアが追加された点も、デリカD:5を普通のミニバンとして使う層には小さくない後押しとなったと言えそうだ。
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