三菱&日産の新戦略 次期「i-MiEV」こそ新たな扉「軽EV」が目指すべき未来

三菱&日産の新戦略 次期「i-MiEV」こそ新たな扉「軽EV」が目指すべき未来

 2020年9月に一部報道で、「i-MiEV」の生産終了が報じられたが、これに関して三菱自動車からの正式な発表はされていない。また、ベストカーWebの取材でも、当面生産終了の予定はなさそうだという情報を得ている。

 とはいえ、三菱は中期経営計画でも発表したNMKVで開発中の軽EV投入が確定しており、近い将来その座を譲ることは確実だ。

 今回のi-MiEVの去就で再注目された軽EV。そもそも軽EVというものに魅力はどこにあるのか? 航続距離は200km程度と言われているが、どういった使い方の人にマッチするのか?

 その将来性と、なかなか進まないEVの普及を促進するためにどのような一手が必要なのか? 考察していきたい。

文/御堀直嗣
写真/MITSUBISHI、Peugeot、NISSAN

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■軽自動車の価値を大きく広げる可能性を示した「i-MiEV」

 三菱自動車工業は、2009年に軽自動車の電気自動車(EV)「i-MiEV(アイ・ミーブ)」を発売した。当初は法人向けだったが、翌2010年に一般消費者にも販売を開始した。そして同年、日産自動車から「リーフ」が発売されたのである。

2009年に発売された電気自動車(EV)「i-MiEV(アイ・ミーブ)」。2010年12月に発売された日産「リーフ」よりも早く発売された市販EVのパイオニアだ
2009年に発売された電気自動車(EV)「i-MiEV(アイ・ミーブ)」。2010年12月に発売された日産「リーフ」よりも早く発売された市販EVのパイオニアだ

 社会の関心も、販売台数も、登録車のリーフに注目が集まった。リーフはまた、グローバルカーでもあったのでなおさら話題にものぼりやすく、販売台数は累計50万台を達成している。

 これに対し、i-MiEVは、日本特有の軽自動車規格のEVであるため、国内販売は2020年3月末時点の数字で1万1666台、海外を含めても2万3650台に止まる。ただし、PSAへも供給され、プジョー「ion」、シトロエン「C-Zero」として発売されており、その台数は三菱自では公表していないという。それらを含めても、リーフに比べれば1/10ほどの台数にしかなっていないのではないか。

PSAへも供給されている「i-MiEV」。写真はプジョー「ion」
PSAへも供給されている「i-MiEV」。写真はプジョー「ion」

 また、2018年には、衝突安全性能の改善のため、車体寸法が拡大されて登録車扱いとなった。そして2019年には年間で海外を含め200台強という販売台数でもある。それでも、私は三菱自がi-MiEVを販売し続ける価値はあると考えている。

 i-MiEVは、軽自動車の価値を大きく広げる可能性を示した。EVとなることで、リチウムイオンバッテリーを床下に搭載することから、車両重量が200kgほど重くなる。これによって、重厚さが増し、なおかつ軽自動車用の3気筒エンジンによる振動や騒音もなくなり、上質な乗り心地となる。一言でいえば、「小さな高級車」の誕生だ。

2009年に発売時は軽自動車扱いだったが、2018年の一部改良で、対歩行者安全強化の理由にバンパー形状(フロント・リア)を変更したことで、登録車扱いに変更された。実電費は1充電で約100km(エアコン使用)だ
2009年に発売時は軽自動車扱いだったが、2018年の一部改良で、対歩行者安全強化の理由にバンパー形状(フロント・リア)を変更したことで、登録車扱いに変更された。実電費は1充電で約100km(エアコン使用)だ

 車両重量が重くなれば、加速が非力になるのではないかとの懸念があるが、最高出力こそ軽自動車規格内に収められているものの、最大トルクは160Nmで、これは1.5Lガソリンエンジン並みの数値だから、通常の運転に十分であるばかりか、瞬発力にも優れる。

 当然ながら、床下のバッテリーの重さによって低重心にもなり、操縦安定性が高まる。実際に私は数百キロを高速道路で旅したが、前後の席でともに疲労は少なく、静かな室内で仲間との会話も弾み、快適に移動できた経験を持つ。

 衝突安全性能については、今日ではコンパティビリティ(共生)の考えから登録車と衝突実験をしながら同等の安全性を確保するようになっている。さらに、自動運転までいかなくても、リーフのような自動駐車が装備されれば、車庫入れが苦手な人にも大いに喜ばれるだろう。

 したがって軽EVは、上質で、性能は十分あり、日常から高速まで快適に利用でき、なおかつ小さな車体寸法により市街地でも手軽に運転できる、ある意味で次世代の理想的なクルマとなり得るのである。

次ページは : ■三菱自が取り組んだ もうひとつの軽EVの可能性

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