自動化全盛の今、その功罪を斬る!
世はまさに自動化全盛時代。クルマ界でもその傾向は顕著。今まで人が行っていた操作は次第に機械まかせに。人が介在する余地はどんどん減っている。
そこで今回はそんな自動化は実際どこまで進んでるの? といった実情。そして自動化の功罪も含め、クルマ界から家電業界まで徹底的に自動化の〝今〟と〝未来〟をお見せします!!
※メーカーにより誤解を避けるため、意図的に「自動運転」という言葉を使わないところもあるが、意味合い統一のためクルマに取り付けられた各種センサーでなんらかの物体や事象を検知した上で、ドライバーの手を介さず、クルマが自律的に動くことを「自動運転」と定義した。
話題の自動運転 各社の技術と今後の展望に迫る
どのメーカーも自動運転の開発に励んでいるが、仮に手離し運転ができる完全自動運転を最終目標とするならば、現時点では10%程度の達成度だ。日産やトヨタは「’20年までに自動運転を実現させる」と発表したが、高速道路などかぎられたエリアでの限定的な運転アシストで、〝手離し運転でテレビを見ながら目的地へ〟という夢のような世界が提供されるわけではない。
<トヨタ>
ASV技術を応用した自動運転が進んでいる。追従型クルーズコントロール機能(通称、ACC)の発展型であるCACCと、レーンキープ機能を組み合わせた「オートメイテッドハイウェイドライビングアシスト」(AHDA)がそのひとつ。
ACCで使われているセンサーであるミリ波レーダーやカメラに加えて、760MHzの電波を使い同システム搭載のほかの車両と連携しながら、きめ細かい車間調整を行う。
これにより追従車両がいなくなった場合の再加速がスムーズになるほか、追従時も前車の減速タイミングとほぼ同時にこちらも減速動作に入るため精度も高まる。
従来がセンサーで前車のふるまいを察知してから自車の制御を行っていたのに対し、CACCでは車両の加減速情報が無線通信ですばやく処理されるためタイムラグが減り、結果的にドライバーの心理的な負担も軽減される。
これに、車線の中央を維持しながら、曲率半径120まで(現時点)のカーブに合わせてステアリングを自動操舵するレーンキープが加わることで高速道路での部分的な自動運転が行える。
トヨタが13年10月に行った先進技術説明会にてレクサスGSで自動運転する様子
<日産>
将来の自動運転には必須となる「レーザースキャナー」を搭載した「NISSAN AUTONOMOUS DRIVE」(プロト車両は「リーフ」)で研究開発を行う。使用するセンサーは大きく4タイプ。
- ①フロントウィンドウ上部のCMOS単眼カメラ(モノカラーで120m先まで検知)。
- ②車体の前後中央/前部左右/側面左右の計6カ所に設置されたレーザースキャナー(同80m先)。
- ③車体の前後/両ドアミラー下にあるアラウンドビューモニター用カメラ。
- ④車体後方の情報を得るための24GHzミリ波レーダー。
このうち中心的な役割を果たすのが、②のレーザースキャナーだ。測定誤差はミリ波レーダーの約30㎝に対して数㎝程度とわずかなので、狭い道路でのすれ違いや車庫入れにも貢献する。
ちなみに、この「リーフ」はナンバープレートを取得ずみ。加えて11月25日からは「さがみ縦貫道路」(神奈川県)を使った実証実験がスタートしている。
見るべきは、一般車両との混合交通下で自動運転の実証実験(有人走行で緊急時には人が運転する)が行われている点だ。高速道路本線への合流や、出口への分岐、さらには車線変更なども自動運転のみで行う。トヨタよりも半歩抜きん出た。
日産は13年11月25日に神奈川県さがみ縦貫道路で自動運転の実証実験を実施。写真はその時のもの。混合交通下での実験は史上初だ
<ホンダ>
先端技術のITSにコミュニケーション能力をもたせた自動運転が得意だ。
10月に開催された「第20回ITS世界会議 東京2013」では、5・8GHzのDSRC通信、パソコンの無線LANにも使われている一般的なWi-Fi通信に加えて、ミリ波レーダーやステレオカメラなど各種センサーを総動員しながら、さらに車両の4面に、緑/黄/白の3色を発するLEDを搭載した。
これは、それぞれ道路上に、危険なし/目に見える危険あり/目に見えない危険あり、という分類で、自車が周囲の車両や状況をどのように捉えているかを意思表示するために設けられたもの。
二輪車やセニアカー(ホンダでは「モンパル」)は、クルマ以上に周辺交通とのアイコンタクトが必須となる乗り物だが、そのすべてを製造するホンダらしい独創的な自動運転の概念を早くも確立したようだ。
<スバル>
独自の技術である「アイサイト」を昇華させ、制御項目を増やしながら自動運転を目指す。
東京モーターショーにも出展された新型のレヴォーグには、新世代の「アイサイト」であるVer・3が搭載されているが、これまでのモノクロカメラをカラー化したことで、前を走るクルマのストップランプ(赤色)を認識できるようになった。
また、従来型よりも幅、奥ゆきともに40%広く、遠くまで見通せるようになったためACCでの制動タイミングの早期化や衝突被害軽減ブレーキでの衝突回避速度を50㎞/hまで高めることにも成功した。
このことはCACCの効果にも近いが、将来的には、「Futureアイサイト 202X」という新しいシステムにより、高速道路での自動運転や現状、進行方向にしかないセンサーを側方や後方にも搭載して全方位の衝突回避支援を行っていく。
<ドイツ勢>
メルセデスベンツ、BMW、VW/アウディのドイツ勢は、目標とする自動運転の将来像が近いことが特徴。これは、先進技術を得意とする二大サプライヤーであるコンチネンタルとボッシュが、ともにドイツを本拠地としていることなどの影響が大きい。
注目は走行速度の高い領域での自動運転に対する考え方。コンチネンタル社の「ドライバーフォーカス」は、ドライバーの状態をカメラで監視しながら、よそ見をしている時に危険が迫った場合には、車内周囲に配置したLEDを点滅させドライバーによる危険回避を行わせる。
これに、いわゆる自動運転技術を組み合わせることで、万が一の際のフェールセーフも考慮した自動運転の世界を提案。
また、自動操舵に関しては国際規制であるUN/ECE(国連欧州経済委員会)R79(ステアリングシステム)との連動性も高められる。
<その他>
Google X Labで研究が進められているグーグル自動運転技術は、頭上にグルグルと回るレーザーレンジファインダーを搭載したプリウスで一躍有名になった。実証実験での走行距離を伸ばしながら、現在は、自動運転技術の精度を上げることで、5年以内の実用化を目指す。
センサータイプなど日産の自動運転技術の考え方に近いが、描いている世界はドライバー要らずの「完全自動運転」。これには賛否両論があるものの、Google Glassと連動した新たな研究もスタートした。
自動運転の功罪とは?
メルセデスベンツのアクティブセーフティ技術を開発するヨッヘン・ヘルマン氏は「手離しでの自動運転は新型Sクラスのシステム+αで実用化できますが、そこに固執していません」と言い切る。
最終的にはドライバーが運転の全責任を負うことが望ましいからだ。この先10年、20年と時を経る頃には、自動運転もかなりのレベルで普及する。
ただ当面は、自動運転技術を搭載していないクルマとの混合交通になるわけで、残念ながら軽微なものを含めて交通事故がゼロになる可能性は非常に低いといえる。
大切なことは、技術がどんなに進歩しようとも、〝運転は人間が主体である〟ということだ。新しい技術やHMIをもってしても、運転操作を行う人間が一度に処理できる能力は有限で、機械のような劇的なグレードアップも難しい。
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