三菱i-MiEVが窮地に立ちつつしぶとく生き残る事情 先駆者の苦悩??

三菱i-MiEVが窮地に立ちつつしぶとく生き残る事情 先駆者の苦悩??

 日本初の量産型EVである三菱i-MiEV。かなりエポックメーキングが存在なはずなのだが、最近はあまり風の便りもなく心配になっていた。

 そんな矢先に2018年になんと軽自動車規格から脱却。なんと5ナンバーになった。とはいえカタログ航続距離164kmのEVがなぜ2009年の発売から生き残るのか?

 三菱はPHEVを基軸技術として腰を据えており、リーフを持つ日産とのアライアンスでピュアEVを新たに作る可能性はそう多くあるまい。

 i-MiEVの今後の可能性に迫ります。

文:鈴木直也/写真:三菱自動車


■EV先発組だからこその苦悩が三菱にはある

 近代技術史にはよくある話だけど、画期的な発明をした人が最大の利益を得ることはそう多くなく、市場をよく研究した後発組に美味しいところを攫われるケースが珍しくない。

 技術進化が激しいコンピュータやIT業界にはそんな例はゴロゴロしている。パソコンの元祖アップルがIBM PCに追い落とされたのもその例だ。

三菱 i-MiEVは登場から10年が経とうとしている2019年現在もバリバリの現役車種。なぜここまでして三菱はi-MiEVを残すのだろうか? 価格は294万8400円だ

 逆に携帯業界の覇者だったノキアやモトローラをアップルがiPhoneで逆転したり、めまぐるしい栄枯盛衰を繰り返している。

 クルマ業界でいえば、モータリゼーションそのものを創造したのはフォードT型だったけれど、T型に対するユーザーの不満をよく研究したGMが最終的にはフォードを追い越して最大のシェアを握った例が有名。

 しかし、そのGMも1970年代に急成長した日本車に苦しめられたあげく、リーマンショックで連邦破産法申請に追い込まれ、今度は日本車が電動化シフトなど「業界100年に一度の大変革」にピリピリしている。

 世の中の変化に目配りしリスクをとって新技術にチャレンジしないと、業界の王者でもいつ足をすくわれるかわからない。歴史はそれを教えてくれる。

 だから、新しい技術にチャレンジして未踏の新市場を開拓した先駆者は、たとえ結果的に失敗したとしても評価されるべきだと思う。

 最近はそういうリスクをとった挑戦者のことを「ファースト・ペンギン」と言うらしいが、今もっと評価されるべきファーストペンギンは三菱i-MiEVだ。

 ご存知のとおり、i-MiEVのデビューはリーフより1年以上早く、2009年半ばに法人リースを開始し、翌年春に一般への市販をスタートしている。

三菱が想定していたi-MiEVの使い道。シティーコミューターとしては充分な航続距離を持っていたのだが、消費者は都合よく「EVだからいいか」とはならず、ガソリン車と真正面から比較してしまう。これは少々想定外だったのかもしれない

 初代リーフは2009年8月には発表されていたが、発売開始は2010年末。「世界初の量産型EV」のタイトルは、i-MiEVに与えるのが正当というものだ。

 しかし、残念ながらi-MiEVは三菱が望むほどには売れなかった。i-MiEVの開発が始まった時点の常識では、軽自動車をベースにして車体コストを引き下げ、電池も16kWhに抑えないと商品として成立させるのが困難だった。これは、当時のコスト感覚からもよく理解できる。

 しかし、初代リーフが24kWhバッテリーを搭載して航続距離200km(JC08モード)で登場すると、初期型i-MiEVの航続距離120kmではさすがに商品性が厳しくなってくる。

 おそらく、三菱は「初期のEV市場は短距離のシティコミュータから始まる」と予想したのだろうが、電動化への流れはその予想以上に速かったのだ。

 そういう意味では、初代リーフですら充分ではなく、この時点でもっとも採算ベースに乗せやすかったのは、電池をてんこ盛りにして無理やり航続距離500km超を達成したテスラ・モデルSのやり方。

 最初のEV市場は、三菱の予想したシティコミュータからではなく、テスラ・モデルSのような「富裕層のアクセサリー」から始まったのだった。

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