【マツダ3超辛口新車試乗】今年最大の注目車 乗ってわかった強みと弱点

 欧州市場でいうCセグメントにあたり、VWゴルフの独壇場となっている超激戦区に殴り込みをかけたマツダ3。マツダ3は王者ゴルフ7に追いついたのか? そして、世界のプレミアムコンパクトのベンチマークとなりうるのか?

 2019年8月には、販売不振が伝えられたマツダ3だが、近々の販売台数をみると、確かに月販目標台数2000台に比べ、6月1591台(36位)は大きく下回ったものの、7月、3668台(23位)、8月、3916台(16位)と販売が上向いているのがわかる。

 2019年9月20日に行われたCX-30の発表会では、マツダ丸本社長は、日本でのマツダ3の受注について「2万台の大台を超えている。そのうち8月は4000台弱、9月は7000台弱程度」といい、「計画の135%くらいで推移しているので、うまくいっている」とコメントしている。

 そんな状況のなか、元日産開発エンジニア、吉川賢一氏が、マツダ3ディーゼルを徹底試乗! 3日間にわたってじっくり乗った、忖度なしの厳しい評価をくだす!

文/吉川賢一
動画・写真撮影/エムスリープロダクション鈴木祐子

※本企画は、下記の本文&写真のほか、動画でも紹介していますのでお楽しみください。

【画像ギャラリー】写真で見るマツダ3の美しいデザイン

連載第一回目【日産GT-R超辛口新車試乗】もうやり切ったのか!??世界最高を目指すGT-Rの旅路の行方はこちら!


マツダ3ディーゼルにじっくり乗ってみた

 ボディタイプはハッチバックボディの「FASTBACK(ファストバック)」と、セダンボディの「SEDAN(セダン)」の2種類。

 販売の中心となるハッチバックのボディサイズは、全長4460×全幅1795×全高1440mm、ホイールベースは2725mmと、先代アクセラに対して全長は+10mm、全幅同じ、全高は-30㎜、ホイールベースは+25㎜となり、より低くスポーティな外観へと進化しました。

 エンジンは、排気量1.5Lと2Lガソリンの「SKYACTIV-G」、1.8Lディーゼルの「SKYACTIV-D」に加え、12月には、マツダが世界で初めて実用化した独自の燃焼方式「火花点火制御圧縮着火:SPCCI(スパークプラグ・コントロールド・コンプレッション・イグニッション)」を採用した新世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を世界初搭載したモデルが登場します。

 今回試乗したのは、ディーゼルエンジン&ハッチバックのマツダ3 XD 2WD(FF)のモデルです。

■マツダ3の価格とラインアップ(消費税10%込)
MAZDA3 FASTBACK 15S Turing 2WD(FF)/4WD 231万5989円/255万2489円
MAZDA3 FASTBACK/SEDAN 20S Burgundy Selection 2WD(FF) 276万9555円
MAZDA3 FASTBACK/SEDAN XD Burgundy Selection 2WD(FF)/4WD 304万4555円/328万1055円

1/マツダ3ディーゼルのポイントは?(エクステリア、インテリア)

ポリメタルグレーメタリックのマツダ3。これだけデザインに凝ったハッチバックは今まであっただろうか?  これだけカメラマンを悩ませるクルマも珍しい。面に映り込む情景も考えなければいけないからだ

 マツダ3のデザインはどのライバルのクルマにも似ていません。マツダの推し進める「魂動デザイン」が完璧に具現化された、どこか日本的なデザインに感じます。

 写真では、Cピラーの無駄のないシンプルな美しいデザインが際立っていましたが、実物でもその印象は変わりません。

 いかにも「走り」のイメージを持たせたデザインは、行き交う人の目を釘付けにする、なんともいえない魅力があります。

 対するセダンは、マツダ3ハッチバックの最大のウリであるCピラーがない代わりに、オーソドックスなトランクがつきます。

 通常、FFハッチバックをベースとしたセダンだと、フロントとリアのデザインバランスが大きく崩れることが多いのですが、オーバーハングの長いマツダ3だと、まるで小型FRのようなスタイルに見えます。どこか懐かしいスタイルであり、セダンも秀逸なデザインとなっています。

ボディサイドの面に映り込む情景はざまざまな表情を見せる
デザイン性、質感の高さ、手で触る部分にまでこだわったマツダの本気は伝わるインテリア

 インテリアは、運転席から助手席の窓まで続く、レザーのダッシュボードが印象的。試乗したモデルには、レザーシートと同色のレッドレザーの表皮が装着されており、車内が調和されていました。

 特筆すべきはシート形状。マツダが提案する「骨盤を立てる」運転姿勢を作ってくれるシートが、ドライバーの身体を腰中心に支えてくれます。腰が落ち着く印象は、ゴルフ7とはまた違う「安心感」を感じられます。

シート形状が秀逸だという。腰が落ち着く印象はゴルフとはまた違う印象

 ただし、残念なのが後席のドアを閉じた時の音。「パスッ」と軽めの音に聞こえます。

 VWゴルフなどの「ガスンッ」という重たい音と比べると、チープな印象となってしまっています。

 マツダ3の価格帯だと、輸入車に乗っている方の乗り換えも考えられます。たとえ運動性能が素晴らしかろうと、これでは初期の印象で損をしかねないと思います。欧州車超えを狙うならば、こうした点にも質感の高さが欲しかったところです。

リアドアを閉める音が安っぽいと指摘。やはりドイツ車のガッチリした剛性感のある音にはかなわない

2/走りはどうだったのか?(ボディ、シャーシ、エンジン、サスペンション)

外観はスポーティだが、実際に走らせてみると意外に普通のクルマだった?!

 今回試乗したモデルは、1.8Lのディーゼルエンジン「SKYACTIVE-D」 。排気量1756cc、最高出力は116ps、最大トルクは27.5kgm。

 このスペックからは、トルクフルなエンジン特性と予想していましたが、実際に乗ってみるとイメージとは異なりました。

 中低速からアクセルペダルを踏み込めば力強い加速をしますが、ゼロ発進での初期トルクの立ち上がりには、「穏やか過ぎる」という印象を受けるほど。

 良い言い方をすると「おおらかなアクセル特性」ですが、従来のハッチバックで殆どのメーカーがいう「キビキビと元気に走る」というイメージで作られたクルマではありません。

 上手に発進するためには、ゼロ発進の初期にはペダルの踏み込みをやや増やし、速度が増してきたら力を抜く、といったコツが必要です。

1756㏄の直4、ディーゼルターボは116ps/4000rpm、27.5kgm/1600~2600rpmを発生。トランスミッションは6速ATを組み合わせる

 サスペンションは、フロントマクファーソンストラット式、リアトーションビーム式と、オーソドックスな組み合わせです。

 トーションビームは廉価でコストが下げられるメリットの反面、車体との接合点が左右2カ所のアーム取り付け点のみのため、ハンドリングと乗り心地、そして音振性能との両立がしにくい、というデメリットがあります。

 しかしながら、マツダ3はリアフロア周りからのロードノイズ侵入はほぼなく、またフロントからの音の侵入も少ないため、高い静粛性を実現しています。

 単なる遮音材の追加投入ではなく、車体のどのパス(経路)をノイズが伝搬していくのか予測して対策をしたボディ設計がされているようです。

 その結果として、高速直進性も高い次元で確保されており、マツダの設計技術の水準の高さを、改めて実感いたしました。

 ハンドリングに関しては、アクセルと同様、エクステリアから想像していた「キビキビ」というイメージは大外れとなりました。

 率直に言って、マツダ3のハンドリングは「ダル」です。交差点で大きくステアリングを回すシーンでは、操作量が3割ほど足らず、切り足すことが何度かありました。

 まるでギア比を「故意にスロー化」した印象を受けます。(この点については、4章の考察編で詳しく説明しています)。

3/じっくり試乗してわかった、このクルマのココが凄い、ココがダメ

良い点(1)静粛性の高さ

ディーゼルのアイドリング時の音を車外ではエンジンフード先端、車内では前席の中央付近で計測

 この静かさには驚かされました。ディーゼルエンジンであることを忘れてしまうほどに、マツダ3は遮音がしっかりとされています。

 クルマに乗り込んでしまうと、アイドリングの音はごく小さく、ガソリンエンジン並に聞こえなくなります。また、走り出して巡行走行となれば、エンジン音はほとんど気にならないほどに静かなクルマです。

 参考に、ゴルフ7ディーゼル(2019年式2L TDI)のアイドリングの車内音と車外音を、スマホの騒音測定アプリで測定しました。

 もちろん簡易計測ですので誤差はありますが、アイドル騒音の大きさは、この順序の通り、マツダ3の音振性能は圧倒的に優秀なのです。走り出してもこの印象は変わりません。

VWゴルフディーゼルは2L、直4ディーゼルターボは150ps/34.7kgm。WLTCモード燃費は18.9km/L。価格は323万~391万円

■3車種の静粛性は?
●マツダ3(1.8L)/車内音47.3㏈、車外音58.7㏈
●VWゴルフTDI(2L)/車内音53.2㏈、車外音65.0㏈
●※参考 ベンツC220d(2.2L)/車内音51.0㏈、車外音62.5㏈
※車内音はドライバー席と助手席の中央付近、車外音はエンジンフード先端にて、10秒間測定
※アプリ名:デシベルX-dbAデシベルテスター(使用端末:iPhone SE)
※一般的に3dB(≒30%)違うと、人は有意差として認知します

良い点(2)圧倒的に良い実燃費

 マツダ3ディーゼルエンジンモデルのWLTCモード燃費は19.8km/L。今回の走行での実燃費は、高速道メインで23.7km/L、一般道メインで15.7km/Lでした。

 マツダ3の燃料タンク容量は51Lですから、1度の給油で約1000kmを走行できる計算です。これほどの燃費の良さはなかなか見ることができません。

 なおゴルフ7ディーゼル(2.0L TDI)の燃費はWLTCモードで18.9km/L。カタログ値比較でも、マツダ3の勝利です。

気になる点(1)荷室の使い勝手が悪い

今回、ベストカー本誌でお馴じみの三本和彦さんの不躾棒を参考に自ら製作した。テープとテープの間隔は10cm刻み。マツダ3のトランクは、地面から750mmの高さ、またトランク内の深さが200mmあるため、重たい荷物を載せる時は高さがあるため使いにくい
通常時のトランク容量は334L。VWゴルフは380L
荷室長(通常時):840mm。荷室長(リアシート可倒時):1500mm。荷室幅(タイヤハウス間):1010mm。荷室幅(最大):1100mm荷室高(背もたれ最上部):510mm荷室高(天井部):710mm
デザイン重視のため後席はやや狭い

 デザインを優先したマツダ3ですので後席が狭いのは仕方ないのですが、大きく開くハッチバックドアを生かして荷物が詰みやすいかというと、残念ながらそうはなっていません。

 リアのハッチドアの入り口は地面から750mmの高さ、またトランク内の深さが200mmあるため、重たい荷物だと乗せ降ろしが非常に大変です。

 後席シートを倒すと奥行1500mmとやや広めの荷室となりますが、せめてリアハッチゲートの下端の高さと荷室とがフラットになれば、もう少し使い勝手がよかったのに、と思います。

気になる点(2)ACC仕様時の右足フットレストは欲しい

左足を置くフットレストはあるが右足を置くフットレストがない

 現代のクルマにおいて、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKAS(車線維持支援システム)は、もはや必須の装備。当然、マツダ3にも優秀な先進走行支援技術が導入されています。またペダル配置にもこだわっているマツダらしく、左足フットレストの位置も大きさも完璧です。

 気になるのは「ACC使用時の右足の置き場がない」ことです。オルガンペダルではありますが、ACC中にアクセルペダルの上に右足を乗せていると、ついうっかり踏み込んでしまうことがないよう、右足を常に緊張させていなければなりません。

 フットレストほどに大きなものでなくてもいいので、アクセルペダルの横に引っかかりがあると、右足も休ませることができます。ちなみにゴルフ7などのVW車には、立派な右足フットレストが付いています。

4/世界のプレミアムコンパクトのベンチマークとなりうるのか?

デザイン、作り、インテリアなど定評があるが世界の名だたる欧州Cセグメントのベンチマークになりえるか?

「ゴルフ7に追いついたのか?」については、筆者はNOだと考えます。

 マツダ3は、乗り心地、静粛性、加速減速性能など、ゴルフ7とは見劣りしないレベルまで到達できていると感じます。

 しかし「クルマとしての使いやすさ」が確保されていない点が気になります。長い距離を走る「グランドツアラー」的なクルマの特性ですので、大きな旅行バッグを荷室に積んで移動するシチュエーションを想定して、より荷室の使い勝手への配慮が欲しかったと感じます。

 ディーゼルのエンジン音の遮音については、マツダ3の圧勝です。デザインに関しても、よりチャレンジング精神にあふれるのはマツダ3だといえるでしょう。

 もし、もう少し荷室の使い勝手がよかったら? もしかすると「ゴルフ7に追いついた!」と言えたかもしれません。おそらく、こうした理想を実現した完成形はマツダ3をベースとしたSUV「CX-30」までのお預けでしょう。

 ハンドリングに関しては、優劣をつけることが難しいポイントです。ここ10年(いや、20年)、自動車メディアや評論家、そして各自動車メーカーの間では「キビキビとよく曲がる=良いクルマ」と考えてられています。筆者もその一人です。

 クイックギア比やVGRの様な可変ギア、また、日産のダイレクトアダプティブステアリングまで、少なくとも交差点などの低速走行では「ギアはクイック化」をするのが、世界中の自動車メーカーのクルマの作り方であり、少ない操作量でクルマが向きを変え、テンポよく曲がっていく方が良いというのは「正解」だと思っています。

 筆者が感じた「スローなハンドリングのマツダ3」、その謎を解くにはマツダが啓蒙する「人馬一体」とは何か?に立ち戻る必要があるように感じました。

 そして、筆者がたどり着いた仮説は、「アクセルペダルにしても、ステアリングにしても、操作量を意図的に増やすことで、マツダはドライバーに運転操作を楽しんでもらおうとしている」です。

 「なぜこれほどにマツダ3のハンドリングやアクセルレスポンスにクセを持たせたのか?」の謎については、マツダのエンジニアの方と話をする機会がありました。

 彼が言ったことを要約すると、「人間中心のクルマ作りをしたかった。マシン(クルマ)の良さを求めると、それはゲインの大きさや、遅れの縮小化に行きつく。

 しかし進化するマシンに対して、ヒトの特性はそうそう変えられないので、どこかには「快に感じる適値(ゾーン)」がある。それを探っているのがマツダ3」とのこと。

 こうした「マツダ流の溜め」が正解なのかどうか、現時点、筆者にも結論をつけることができません。

 しかし、「クイックな方向を目指してきた業界に対し、別のアプローチを見せてくれた」という点は、評価できると思います。

まとめ

日本の美しい風景にも溶け込むマツダ3のエクステリア

 マツダ3は、単純に「ゲイン(※)が低くて遅れがある」クルマだと処理してはなりません。「クルマの運動性能の究極の探求」に、最もチャレンジしているクルマだといえると思います。それ故、どうしても人によって好き嫌いが分かれてしまうことにはなるでしょう。

※「ゲイン:ハンドル操作角に対する回頭感(具体的にはヨーレイト)の度合いを意味する」

 しかしながら、静粛性と好燃費、そして素晴らしいデザインのマツダ3が、たったの300万円強(304万4555円[消費税10%込])で購入できてしまうのは、他の自動車メーカーにとっては、脅威でしかない、と思います。

<元開発技術者目線から見た辛口採点チェック!!>

■コーナリング性能 8点/旋回切り増し、旋回中ブレーキング、加速、減速、車両挙動は乱れずに至極安定している。応答ゲインが低いため軽快さがやや感じられる
■高速直進安定性 9点/横風にも強く姿勢を乱されにくい。LKASも優秀で安心感高い
■乗り心地 8点/ボディの上下動は小さくフラット。段差でのショックはあるが突起音が静かであるため不快に感じない。片輪段差乗り越しではリアからの左右振れをやや感じる
■ロードノイズ 9点/一般道(60km/h)、高速(100km/h)を問わず極めて静か。薄い膜の上を走る様な滑らかさを感じる
■エンジンフィール 10点/ディーゼルだということを疑うほど静粛性が高い。回転フィールもスムーズ、まるで静かなガソリンエンジン
■加速フィール 8点/ゼロ発進でのアクセル踏み始めにトルク出ていない。中速度からの加速は滑らか。エンジンを回していくと早めに息つく印象
■走りの質感 9点/良い。ロードノイズ、エンジン音が抑え込まれており、ワンランク上のクルマに乗った印象。ディーゼルエンジンの静粛性はゴルフ7を明らかに超えている
■居住性 7点/前席は広く快適。ドラポジもよく足の置き位置も考えられている。後席への乗り時は頭部衝突に注意(ルーフピラーが低い)
■インテリアの質感 9点/レザーのダッシュボードはソフト感を持たせており感触が良い。落ち着いた内装。ナビディスプレイは運転中に見やすい位置にレイアウトされており運転時には役立つ
■コストパフォーマンス 10点/この性能とデザインを300万円ジャストで提供したのは驚異的

■総合点/87点

※個別項目は10点満点、総合点は各項目を集計したものです

MAZDA3 XD 2WD Burgundy Selection 主要諸元
■全長×全幅×全高:4460×1795×1440mm
■ホイールベース:2725mm
■車両重量:1410kg
■駆動方式:前輪駆動
■エンジン:SKYACTIV-D 1.8直4ディーゼルターボ
■排気量:1756cc
■最高出力:116ps/4000rpm
■最大トルク:27.5kgm/1600~2600rpm
■トランスミッション:6速AT
■サスペンション前後:前/マクファーソンストラット式
           後/トーションビーム式
■タイヤ前後: 215/45R18(89W)
■WLTCモード燃費:19.8km/L
■最小回転半径:5.3m
■燃料・タンク容量:軽油・51L
■価格:MAZDA3 XD 2WD Burgundy Selection 298万9200 円

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