三本和彦、「鈴木修」会長の素顔を語る- 気を許すと面白いおじさんです

三本和彦、「鈴木修」会長の素顔を語る- 気を許すと面白いおじさんです

 売り上げ規模が3兆円にも関わらず、「スズキは浜松の中小企業」と言い続けてきた名物経営者の鈴木修会長。

 つい先日には「トヨタと業務提携に向けた検討に入る」と発表して、世間を驚かせたばかりである。

 そんな鈴木会長のことをよく知るのが、御大の三本和彦氏。

 修会長のことを「用心深いところがありますが、気を許すと面白いおじさんです」と語る言葉からは、二人の親しい間柄がうかがえる。

 三本さんに、修会長の人となりを語ってもらった。

 文:編集部
ベストカープラス2015年6月18日号


鈴木修氏との初めての出会い

 修さんと初めて話したのはスズキの新車発表会でした。一見すると気難しそうな顔をしていますから、ジャーナリストも寄りつかなかったのでしょうか。

 退屈そうにしているので、少しはクルマの余談があるかと思って話しかけたのが最初でした。

 そんなことがきっかけで、顔を見るたびにご挨拶して話をするようになりましたが、無駄話といいましょうか、馬鹿話が多い。

 アルトの時には、僕が修さんに「アルト便利、なくても便利」なんて軽口をたたきましたら

 「三本さん、それいいね。広告に使っていいかな?」 と返してくる。

 僕も 「いいですよ。でも、それで余計に売れたら、キックバックあるんでしょうね」と言いましたら

 「ウチの会社、そういうのないのよ」 なんて思わず吹き出すようなことを言う。この人もなかなか面白いと思いましたね。

 修さんは注意深い方で、ジャーナリストでは特に親しい人を作らないようです。ただ、僕は図々しいですから

 「お変わりありませんか?」と馴れ馴れしく話しかけると

 「変わりようがないんだよ」

 面白いでしょ。それから話が弾みます。修さんに会うのが楽しみで、スズキの発表会に行ってましたね。

社員を大切にする経営者

 昔のことですが、新入社員にどんな教育をするのか聞いたことがあります。

 修さんは、 よその会社に聞かれると恥ずかしいから、って言いませんでしたが 「ウチにも間違えて帝大出が二人入ってきた」 と話されたことがありました。

 「ウチを志願した理由を聞いたら、他に就職先がなかった、なんて言いやがって、俺は頭にきてるんだ」とのこと。修さん流の言い回しですが、そんな学生を採用するほうも凄い。

 それからは、ずいぶん官学出身の人が来たそうです。今では、就職希望者が殺到するほどで、こんなに人気のある会社になるとは思いませんでしたね。

 最初に会った時はまだ社長就任前でした。いつ社長になるんですかと聞いたら、 「社長予備軍にそんなこと聞いたってわかんないよ」なんて言う。

 社長になりたくないんですかと聞いたら 「できればね」 といってました。真顔で。

 当時、従業員が1万8000人いたそうですが、毎日のように社員の親族が亡くなる。亡くなれば、葬式に参列して挨拶しなければならない。それが辛いし、仕事にならないと言ってました。社員との関係を大事にする経営者だと思いませんか。

 部長クラスと話すと 「本当にありがたい社長」 と、悪口を言う人は一人もいなかったですね。こっそり 「ケチですけど……」 と付け加える社員もいました。でも、経営者としてはそのくらいでいいと思います。

フォルクスワーゲンとの提携

 外国の会社と契約ができそうだという話は、ずいぶん前に聞きました。その時は、メーカー名は言いませんでしたね。ものになるかどうか解らない段階だったんでしょう。

 相手がフォルクスワーゲンだとわかってからも、何度か話をしました。どんな会社か聞いてみると、とても堅苦しい会社だと言ってました。

そして、 「約束を守らないんだ」 と言うんです。

 僕が 「ドイツ人は守るでしょ」 と言うと

 「俺もそう思っていたけど、それが間違いの元だった」 と言ってましたね。

 そのうち情報が漏れてしまった。フォルクスワーゲンには関連会社や子会社がたくさんありますが、そこを通じて流れたそうです。どこにも話さない、という約束で始まった交渉なのに情報漏れ。

 しかも誰が漏らしたのかわからない。それでは具合が悪いですよね。修さんは早い次期から 「あの話はやめることにしたよ。なかなか信用できる会社ってないね」 と残念そうでした。

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