ベストカーの国沢光宏氏の連載『クルマの達人になる』。連載回数479回を数える人気の連載だ。
今回は街中でよく目にするトラックの回送風景に国沢氏が目を付けた。実はあれ、とっても危険なんです。
文:国沢光宏
写真:shutterstock
初出:ベストカー2017年5月26日号『クルマの達人になる』第478回
もっとも大きなトラックには事故予防策がたくさんある
道路上で最も脅威度大きいのはいうまでもなく大型トラックである。ほかの車両や歩行者と衝突すれば圧倒的な破壊力を持つし、止まっていても強固な構造物と同じ。
道路にはガードレールなどを設置し、衝突時の衝撃を緩和させようとしているものの、硬いトラックと衝突したら大きなダメージを受けてしまう。
そんなことから、痛ましい死亡事故が発生するたび、教訓を活かし安全策を加えてきた。最近では自動ブレーキの標準装備化などが代表例。
あらためてトラックを見て頂きたい。ボディの側面には『巻き込み防止装置』の装着が義務づけられている。
この装置のない時代、左折時に横断歩道などでたくさんの人を巻き込んだ。内輪差により後輪で人や自転車を轢いてしまうのだった。
巻き込み防止装置を付けることにより、万一歩行者や自転車を巻き込んでしまっても、後輪で轢いてしまうケースは激減。そのうえ、バイクなどが入り込むこともなくなった。
ボディ後部には『車両突入防止装置』の装着が義務づけられている。トラックの荷台の高さを見るとわかるけれど、乗用車のバンパーより高い位置になってしまう。
何の対策もおこなっていないトラックに追突すると、ボンネット部分は荷台の下に潜り込み、荷台の後端にフロントガラスが衝突してしまう。対応策として前述の車両突入防止装置を義務化。2012年から3.5トン以下のトラックにも付くようになってます。
残念ながら未だに車両突入防止装置が付いていなかったり、付いていても効果という点で怪しいケースを見かけるが、なぜか警察は熱心ではないように感じます。
トラックの場合、後部のナンバープレートが見えなくなっていても、はたまたヘッドライトを反射するメッキ板をブラ下げ、後続の乗用車にめくらまし攻撃をするようなトラックも見逃している。
キチンと法規を守っているトラックのために、積極的な取り締まりをおこなってほしい……と、思っていたらさらに恐ろしいトラックが走ってます。
もはや時代錯誤の裸シャシでの回送
仮ナンバー付けたシャシだけの大型トラックである。トラックの工場からボディ架装工場まで移動させるため、仮ナンバーを付けて一般道走らせているのだった。
この時に何の安全装備も付けていないケースが多い。巻き込み防止装置ないばかりか、フェンダーすら付いていないため、凶器にしか見えない後輪が剥き出し。この手の回送シャシが頻繁に走る地域では恐ろしさも感じる! 時代錯誤だ。
ちなみに一応「最小限の安全装備でよい」とされているが、最小限の安全装備に指定されているボディ後部の車両突入防止装置なしの回送トラックなど街中でいくらでも見かけるから、ザル法のようなものなのだろう。何より警察に取り締まる気がない。
この際、簡易構造でいいので、巻き込み防止装置など最低限の安全装備を義務づける方向で動くべきだと思う。安全を考える場合、最も重要なのはバランス。自動ブレーキを義務づけてるのに、裸シャシを認可するなんてオロカです。
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