スイフトやミライースなどが従来モデル比で大幅な軽量化を実現したように、“軽くなること”は、最新車の一大トレンドだ。
安全性の向上が叫ばれるなか、なぜ矛盾する軽量化が実現できるのか? 今後、軽量化はどこまで進むのか?
芝浦工業大学機械工学科卒で自動車技術ジャーナリストの高根英幸氏が解説する。
解説:高根英幸/写真:DAIHATSU、SUZUKI、HONDA、Shutterstock.com
ベストカー2017年6月26日号
BMW7シリーズは130kg“減量” 高級車で加速する軽量化
車を軽量化する勢いが止まらない。新型車が登場する度、先代モデルからの軽量ぶりが話題になっているほどだ。
それというのも、従来に比べてケタ違いに車重の削減が進んでいるからだ。
実際の軽量化ぶりは【表】を見てもらえば一目瞭然だ。BMW、メルセデスベンツなどのドイツ製高級車は、ボディパネルやサブフレーム、補強ブレースなどに高張力鋼板を使用しているほか、
アルミ合金やCFRP(いわゆるカーボン)も構造材に積極採用している。アウディもアルミ合金の採用に積極的なメーカーだ。
安全性や快適性、車格を超えたプレミアム感を演出するため、ボディサイズはどんどん大型化する傾向にある。従来の作りのまま大型化してしまったら、たちまち重量増から燃費や衝突安全性が低下してしまう。
いっぽうでボディサイズが限られ、プレミアム感はそれほど求められないコンパクトカーや軽自動車でも、軽量化は重要な要素になってきた。
ミライースは80kg減、スイフトは120kg減 大衆車も軽量化の流れ
5月9日に発表されたダイハツ新型ミライースのJC08モード燃費は先代と同じ35.2km/L。60kg軽量化して37.0km/Lとした最大のライバルであるスズキアルトの燃費をあえて超えてこなかった。
新しい車を所有する喜びがなければ、先代ミライースなどエコカーからの買い替えは進まない。装備や走りを洗練させながら実燃費を向上させるためにも軽量化は必須だったのである。
また、スズキスイフトは新型プラットフォームやエンジン、足回りなどの軽量化でトータル120kgもの減量を達成している。
これもプラットフォームを刷新したことで従来踏み込めなかった領域の設計変更を可能にしたことがさらなる軽量化を実現させた。
ボディだけで軽量化しているわけじゃなく、エンジンや変速機などのパワートレーン、足回り、内装といったあらゆる部分で軽量化は進められクルマを進化させているのだ。
軽量化のメリットとデメリット
なぜ自動車メーカーは新型車を軽量化するのか。それは、車のほとんどの性能を向上させる万能の対策法だからだ。
燃費がよくなるのはもちろん、加速やブレーキの性能も向上するし、ハンドリング性能もよくなる。さらに衝突時の衝撃力も減少するから、衝突安全性も高まる。
燃費だけを考えれば、空力性能の向上や転がり抵抗の低減、パワートレーンの効率アップでも改善は見込めるが、軽量化することで燃費を含めたトータル性能の向上が実現できるため、自動車メーカーにとって大きなアドバンテージとなるのだ。
面白いのは部品を軽く作ることで、その部品の支持剛性を落とすことができるから、さらにステーやブラケットを軽量化することもできる。軽量化が更なる軽量化を生むような現象も起こるのだ。
自動車メーカーとしては部品点数を減らすことで、部品の在庫管理のコストを削減できるのもメリットといえる。
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