大地震は25年以内に高確率で発生 日本の高速道路は安全なのか!? 『古いから危険は間違い』

耐震基準は阪神大震災を機に見直されている

 1995年に発生した阪神大震災で、阪神高速が倒壊したことで、高速道路の耐震基準は大幅に見直され、順次耐震補強工事が行われた。

 最も老朽化が進んでいる首都高でも、全線でその工事が完了している。

 もちろん、次の大地震に全線が耐えられる保証はないが、「ここが危ない」と指摘できる個所があったら大変で、そういう個所がないように、道路管理者は日々点検を続けているわけだ。

『盛土区間』には耐震基準がない

 それでも、あえて危険度の高い個所を指摘すると、「盛土区間全般」だとは言える。

 盛土とは、文字通り平野部に土を盛り、その上に道路を通している部分のことだ。首都高などの都市高速にはほとんどないが、東名などの都市間高速道路では一般的な構造だ。

 首都高の高架などの「橋梁」には、明確な耐震基準があるが、盛土に関しては、材料や構造、突き固めの圧力など造り方の基準はあれど、いわゆる耐震基準はない。

 なにせモノが土だから、材料の品質にどうしてもばらつきが出る。しかも地面の上に造っているから、元の地盤によっても強度は左右される。

 元の地盤に関しても、さまざまな対策(サンドバイルによって地下水を抜く等)を取った後に土を盛るのだが、個所ごとの強度は、正直、大地震が来てみないとわからない。

 よって、先般の東日本大震災や熊本地震でも、崩れたのは盛土区間だった。

地震が起きた後と修復工事中の写真<br>盛土区間
地震が起きた後と修復工事中の写真
盛土区間

耐震基準はコストとの兼ね合いによる『見切り』

「そんなの危ない! 崩れないようにできないの?」

 そう思われるだろう。しかし世の中に絶対はなく、絶対に崩れない盛土は造れない。

 では「現在の3倍の強度を持つ盛土はできないのか」と言うと、そうなると盛土という構造自体が不適で、連続高架構造にするしかないだろう。実際、軟弱地盤地帯では盛土ではなく高架構造が採用されている。

 なぜ崩壊のリスクが高い盛土構造があるのかというと、コストが安いからである。

 日本の高速道路の建設コストは猛烈に高い。主な理由は「地価の高さ」「地形の険しさ」「地震の多さ」「地盤の軟弱さ」「人口の多さ」などだ。

 ただでさえ世界一コストがかかる上に、今の3倍地震に強い高速道路にしようと思ったら、建設コストはいったいどこまで上がるか見当もつかない。

高速道路建設中を撮った写真
高速道路建設中を撮った写真

 建設コストが上がれば、それだけ料金も上げなくてはならない。「安全がなによりも優先だ! 税金でなんとかしろ!」となれば、税金を上げなくてはならない。

 つまり現状、大地震が来た時は、高速道路のどこかが被害を受け、崩壊する可能性はある。それを完全に防ぐことはできない。

 耐震基準とは、コストとの兼ね合いによる「見切り」なのである。耐震基準を今より低くしてコストを下げる、という選択肢もあるにはあるのだ。

 民主党政権で国土交通大臣を務めた馬淵澄夫氏は、政権交代直前のインタビューで、

「日本の高速道路の建設費は高すぎる。耐震基準が厳しすぎるからだ。政権を取ったらそれを下げることを検討し、実行する」

 と私に明言した。それはそれでひとつの考え方なのである。東日本大震災で、そんな提案は跡形もなく消えたが……。

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