日産と合併なんてあり得ない!? なぜホンダは独立独歩を貫くのか

日産と合併なんてあり得ない!? なぜホンダは独立独歩を貫くのか

 日産との合併交渉報道で注目。ホンダが今も「独立独歩」を続ける訳と今後は?

 日本国内の乗用車メーカーは、8社ある。このうち、トヨタと提携しているのは、ダイハツ(完全子会社化)、マツダ、スバル、スズキだ。そして、日産と三菱自が提携関係にある。

 残るはホンダであり、米国のGMと技術提携関係はあるが、基本的に一社で奮闘している。

 かつてホンダは、英国のブリティッシュレイランドと提携したり、米国クライスラーのジープ・ラングラーを国内販売したりしたこともあったが、それ以外は独自路線を歩み続けている。

 世界の自動車メーカーが、提携や相互補完を行っている時代に、ホンダはなぜ独自路線を歩み続けるのだろう。また今後もそれを継続できるのだろうか。

文:御堀直嗣/写真:HONDA

【画像ギャラリー】四輪・二輪・汎用……世界一のエンジンメーカー・ホンダの夢の軌跡を写真で追う


■ホンダ創業の精神「自分たちの手で、日本一や世界一を」

日本で初めてF1に参戦したのがホンダだ。本田宗一郎の創業精神を体現しているのが当時のF1参戦だといっても過言ではないだろう。写真は参戦2年目で初優勝を記録したRA272

 ホンダの創業者である本田宗一郎は、子どものころに見た自動車と飛行機に憧れ、尋常小学校を卒業すると自動車修理の丁稚奉公をした。そこで暖簾分けをしてもらい、のちに本田技術研究所を設立する。

 以後、宗一郎が求めたのは「世のため人のため」になることであり、それを実現するうえで他人の真似ではなく自分の力で技術開発することにこだわった。しかも、ただ仕事をし、生活を支えるだけではなく、夢に挑戦する人生を生きることを意識してもいた。だから、自分の力で考えることを重視したのである。

 そして、「3つの喜び」を掲げ、関わる人すべての幸せを願った。「買って喜び、売って喜び、作って喜び」である。

 年間500万台以上を販売する大手自動車メーカーとなった今日、ホンダは創業時代の精神だけで世界の従業員を守ることはできないかもしれない。それでも、本田宗一郎の創業精神に基づいて開発した商品にファンが生まれ、ホンダの企業活動を支えてくれてもいるのである。

 競合他社と似たような商品をただ品質よく提供するでは、顧客も納得しないという関係にもなっているはずだ。

 ホンダ初の電気自動車(EV)であるホンダeは、開発責任者がわざわざ創業時代の志を学ぶため、静岡県浜松市にある〈本田宗一郎ものづくり伝承館〉へ赴き、「当社は絶対に他の模倣をしない。どんなに苦しくても、自分たちの手で、日本一や世界一を」という宗一郎の言葉に触れ、開発の方向性を定めたと話している。

 1991年に84歳で本田宗一郎が亡くなってから30年近く経つが、自主独立の精神がいまもホンダの開発陣に宿っている以上、企業文化や風土が異なる他社との提携は、新商品を生み出すうえでかえって障壁となっていくのではないか。

■ホンダは今後も独立を維持できるのか?

四輪メーカーとしての規模は世界的視点から考えると中途半端といえなくもないが、ホンダは二輪メーカーとしても世界一である。写真は1958年発売の初代スーパーカブC100

 一方、世界の自動車メーカーが連合を進めるなか、一社独自でホンダが存続できるのだろうかとの懸念があるかもしれない。しかし、その道はあると考える。

 年間500万台前後の販売台数という数字は、1000万台規模を狙うトヨタやフォルクスワーゲン、あるいは日産・ルノー・三菱自の連合などに比べ、その半分でしかない。

 逆に、プレミアムブランドとされるメルセデス・ベンツやBMW、あるいはボルボやジャガーといった200万台前後かそれ以下の自動車メーカーに比べ、大きくなりすぎているともいえる。悪くいえば、中途半端な規模といえなくもない。

 自動車メーカーの規模としてみればそういうことだが、ホンダは、2輪・4輪・汎用という基盤を持つ世界一のエンジンメーカーでもあり、2輪に関しても世界一のメーカーである。2輪・4輪・汎用という総合力でみれば、大きな力を備えた企業といえるのではないか。

 しかも、この先は、そうした幅のある製品のメーカーであることが、存続を促す可能性は高いのである。

 背景は、電動化と自動運転への世界的な動きだ。

Honda Autonomous Work Vehicle(オートノマス ワーク ビークル)。アタッチメントを取り付けることでさまざまな用途に活用できる、自律移動モビリティーのプラットフォーム

 EVは、まだ一般的に環境保護のためのエンジン車の代替としてしか価値を認識されていないが、10年前にEVを発売した日産は、すでに移動体としてだけでないEVの価値に気付いている。

 初代リーフの発売を前に、EV廃車後のリチウムイオンバッテリーの再利用を視野に、フォーアールエナジー社を設立し、すでに再利用バッテリーの販売をはじめている。

 あるいは、東日本大震災のあと、VtoH(ヴィークル・トゥ・ホーム)の機器を電機メーカーのニチコンと開発し、EVから家庭への電力供給をはじめている。

 急速充電器の整備が遅れていると見るや、自ら急速充電器を開発し、原価を大幅に低減した。さらには、EVを系統電力とつなぐスマートグリッドの研究を長年続けている。

 すなわち、EVは、単なるクルマに止まらず、電力社会基盤(インフラストラクチャー)の一要素という責務を担うことができ、それはエンジン車では不可能なのだ。

 このことにホンダも気づけば、汎用事業ではすでに発電機のほか、コージェネレーションシステムの開発と販売を行っており、そこにEVを連携させ、VtoHの総合的価値を生み出すこともできるだろう。

 汎用と4輪事業を総合的に組み合わせていけば、ホンダ流のEVの世界を生み出すことができるだろう。ホンダeの開発においても、家とクルマ、電力会社とクルマ、webとクルマとつながる「シームレス・ライフ・クリエーター」と位置付けているのである。

次ページは : ■自動運転や高齢化でもホンダの独自性が活かせる?

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