2019年10月の新車販売台数を見て唖然とした。
日産ノートは2018年の車種別年間販売台数で1位を獲得、2019年に入ってからも月間販売台数1位が3回、2位が4回、4位が2回と、たびたび好成績を記録してきた。そんなノートが2019年10月の月間新車販売台数で5263台(対前年同月比54.0%)の6位と、大きく落ち込んでいたからだ。
アクアの販売台数の落ち込みも目立っていた。 2019年はこれまで2位2回、3位4回、5位2回、6位1回と上位にランクインしてきたが、 2019年10月の販売台数は、なんと4967台(対前年同月比47.7%)で8位にまで後退していたのだ。
ノートとアクアはなぜこれほどまでに販売が落ち込んだのか? 新型カローラのデビューやマイナーチェンジしたプリウスの巻き返しが原因なのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWEB編集部
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常連の人気車が上位を占めていた時代は終わった?
かつて、販売ランキングの上位車種は、比較的頻繁に入れ替わった。カローラのように常に安定的に売れる車種は珍しく、フルモデルチェンジを受けて新型になると販売台数を伸ばし、時間を経つと低下する。
マイナーチェンジで少し盛り返し、再び下がった頃にフルモデルチェンジする周期があった。
ところが今は違う。販売ランキングの上位車種は安定的に売れ続ける。例えばN-BOXは、先代型だった2015年から現行型の2018年まで、連続して軽自動車の年間販売ランキング1位を守っている。2017年と2018年は、登録車と軽自動車を合わせた国内市場全体の1位だ。
このほかの軽自動車ではスペーシアとタント、小型/普通車ならノート、アクア、プリウス、シエンタ、フリードといった車種が販売ランキング上位の常連だ。
クルマが目新しさで選ばれる商品ではなくなり、生活のツールになったことで、売れ方も変わった。
便利に使える割安な商品は、発売から時間を経過しても堅調に売れ続ける。逆に日本のユーザーの好みと使用環境に適さない海外向けの商品は、発売時点から低迷して、販売面では注目されずに終わることも多い。
そして今の日本メーカーの多くは、世界生産台数の80%以上を海外で売るから、国内市場に適した商品が減っている。限られた車種だけが好調に売れる二極分化が進んだ。
また海外向けの車種が増えたり、先進技術に対する投資が高まった影響もあり、フルモデルチェンジの周期が以前の4年ごとから6年以上に伸びている。
そのために売る意欲のある車種は、2年ごとくらいに改良を行い(スバルやマツダの主力車種は毎年改良している)、安全装備などは常に刷新させる。
発売から時間を経過しても、機能や装備では古さを感じにくく、これも人気車が長く安定的に売れる理由だ。
ノートとアクアが売れなくなった原因は?
このように安定化した販売ランキングに、2019年10月はちょっとした異変が生じた。ノートが販売台数を大幅に下げて、販売ランキングの順位も後退したからだ。
2019年は1月から3月まで1位、4月4位、5月から7月まで2位、8月4位、9月2位だったのが、10月には6位まで後退したのだ。またアクアも2019年7月以降、伸び悩んでいる。
ノートは2019年度上半期(2019年4~9月)の小型/普通車市場における販売ランキングはプリウスに次ぐ2位(5万9474台)で、9月単月でも2位(1万3183台)であった。
アクアは2019年度上半期が4位、9月単月は6位、10月は8位と順位が下がり、10月の対前年比は-52.3%になる。
2019年10月の国内販売台数を見る時に注意すべきは、9月から10月にかけて、台風15号と19号が日本に甚大な被害を及ぼしたことだ。
クルマの売れ行きも下がり、10月の対前年比は、レクサスブランドを除くと各メーカーとも-8%から-50%の範囲で大きく落ち込んだ。
2019年10月は以前ほどではないものの、消費増税による需要の低下も生じたから、台風の影響と併せて販売面のマイナスが拡大した。
このうち、アクアを扱うトヨタは21.8%、ノートの日産は29.9%、前年に比べて減少している。
アクアはトヨタ自動車東日本の生産で、同じ工場が手掛けるC-HRも、10月の対前年比が56.4%のマイナスになった。
ノートは追浜工場で生産され、同工場は、台風15号の影響により9月に操業を停止した経緯がある。
以上のように、台風の影響も大きいから販売減少を差し引いて考える必要があるが、アクアは以前から売れ行きを下降させていた。
2019年度上半期の対前年比を見ると、前年同期に比べて約18%減っている。2018年(暦年)は3.8%の微減だったが、2019年に入ると減少が目立ち始めた。アクアの発売は2011年12月だから、むしろ約7年も続いた高人気の期間が長かったと考えるべきだろう。
同じトヨタのコンパクトカーでは、背の高いルーミー&タンクが2016年11月に登場して安定的に売れており、2019年10月はなんとルーミーが3位6962台、タンクは5420台で5位にランクインしている。
販売店では「ハイブリッドの必要をあまり感じないお客様は、車内が広く価格の安いルーミーやタンクを選ぶことも多い」という。
2019年9月には新型カローラも発売された久しぶりの10月の新車販売台数では1万1190台と11年ぶりに1位となった。
カローラセダン&ツーリングのハイブリッドは、1.8Lエンジンがベースだからボディサイズも含めてアクアより大きいが、価格は装備の違いを補正するとセダンの場合で35万円上まわる程度だ。
5ナンバーサイズにこだわらないのであれば、アクアではなく設計の新しいカローラハイブリッドを選ぶユーザーもいるだろう。
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