新型フィット&ヤリスが燃費競争を「降りた」理由  もう狂騒は終わったのか?

新型フィット&ヤリスが燃費競争を「降りた」理由  もう狂騒は終わったのか?

 かつてはコンマ1km/L単位で、カタログに記載される燃費が新車が出る度に塗り替えられ、各メーカー間で抜きつ抜かれつの激しい燃費競争が行われていた。

 しかし、カタログ燃費と実燃費の乖離が大きく、ユーザーの燃費への意識が薄らぎ、いつの頃からかメーカー間でも燃費競争が影を潜めているようにも見える。燃費表示がJC08モードからWLTCモードへの移行期というのもあるかもしれない。

 そんななか、コンパクトカーの両雄、ヴィッツ改め新型ヤリスと、新型フィットがデビューした。注目のWLTCモード燃費はヤリスハイブリッドが36.0km/L、フィットe:HEV(ハイブリッド)が29.4km/L。

 この数値を見ると、もはやコンパクトカーの燃費競争が終焉したようにも思えてならない。

 本当に、かつてのような燃費狂騒(競争)は終わったのか? モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーWEB編集部

【画像ギャラリー】WLTCモード燃費ランキング1位はどのクルマ?


燃費競争は行きつくところまで来たのか?

現在のWLTCモード燃費1位はヤリスハイブリッドXで36.0km/L。ハイブリッドGは35.8km/L、ハイブリッドZは35.4km/L。ガソリン車は1Lが20.2km/L、1.5L車は19.6~21.6km/L。ちなみにヤリスハイブリッドXのWLTC燃費の市街地モードは37.5km/L、郊外モードは40.2km/L、高速モードは33.4km/L
現在のWLTCモード燃費1位はヤリスハイブリッドXで36.0km/L。ハイブリッドGは35.8km/L、ハイブリッドZは35.4km/L。ガソリン車は1Lが20.2km/L、1.5L車は19.6~21.6km/L。ちなみにヤリスハイブリッドXのWLTC燃費の市街地モードは37.5km/L、郊外モードは40.2km/L、高速モードは33.4km/L

 最近あまり使われなくなったクルマ用語に「燃費競争」がある。ライバル車同士で、燃費数値を競い合うものだ。

 昔は最高出力を競う「馬力競争」もあったが、その後は「燃費競争」の時代になった。それが最近はあまり話題にならない。

 燃費性能は今でも重要で、今後は燃費規制も厳しくなる。国土交通省は、2030年度にWLTCモード燃費を平均25.4km/Lまで高める燃費基準推定値を発表した。2016年度の燃費実績が19.2km/Lだから、2030年には32%の燃費改善が求められる。

 具体的な燃費概算値を挙げると、車両重量が1000kg以下のコンパクトカーは27.3km/L、1400kgのセダンは24.6km/L、1800kgのミニバンでも21.1km/Lだから、相当に燃費を改善せねばならない。この数値を守るには、ハイブリッドが不可欠だ。

 それなのに最近は、燃費競争はもう終わったかのような印象を受ける。2020年2月には、フィットがフルモデルチェンジを行い、ヴィッツも一新して車名をヤリスに変えた。

 両車とも全長が4m弱に収まる5ナンバーサイズのコンパクトカーだから、燃費性能もセールスポイントになる。従来の流れでいえば、燃費数値を互いにアピールする燃費競争に発展しそうだ。

 実際、2013年に先代フィットが登場した時のTV・CMのコピーは「リッター36.4km/L(JC08モード数値のこと)、低燃費ナンバーワン、フィット3」というものであった。

 商品開発も燃費数値に神経質で、先代フィットハイブリッドのベーシックグレードは、このグレードのみアルミボンネットが採用され、燃料タンク容量をほかのグレードよりも8L少ない32Lに抑えた。

 この変更により、CMで訴求された36.4km/LのJC08モード燃費を達成している。

 ちなみに燃料タンク容量を8L減らすと、車両重量の数値では約6kgの軽量化が達成され、燃費計測で使う等価慣性重量も変わる。従って燃費数値を好転させやすい。

 そこで燃費重視のコンパクトカーや軽自動車では、燃料タンク容量を小さくするのが常套手段になったが、新型フィットの燃料タンク容量は全車40Lで統一されている。TV・CMコピーも「人が心地いいならクルマは嬉しい」とされ、燃費は訴求されていない。

 新型フィットのWLTCモード燃費は、1.3L、NAエンジンを搭載する、ベーシックが20.4km/L、量販車種のホームが20.2km/L、e:HEV(ハイブリッド)のベーシックが29.4km/L、ホームは28.8km/Lとされている。

新型フィットベーシックe:HEV(ハイブリッド)のWLTCモード燃費は29.4km/L、JC08モード燃費は38.6km/L。市街地モードは30.2km/L、郊外モードは32.4km/L、高速モードは27.4km/L。最量販車種のe:HEVのHOMEグレードはWLTCモードが28.8km/L、JC08モードが38.6km/L。WLTCの市街地モードが29.6km/L、郊外モードが31.8km/L、高速モードが27.0km/L
新型フィットベーシックe:HEV(ハイブリッド)のWLTCモード燃費は29.4km/L、JC08モード燃費は38.6km/L。市街地モードは30.2km/L、郊外モードは32.4km/L、高速モードは27.4km/L。最量販車種のe:HEVのHOMEグレードはWLTCモードが28.8km/L、JC08モードが38.6km/L。WLTCの市街地モードが29.6km/L、郊外モードが31.8km/L、高速モードが27.0km/L

 ヤリスの数値は1Lエンジン搭載車が20.2km/L、新開発された1.5Lエンジン車のXとZは21.6km/L(CVT)、ハイブリッドXは36.0km/Lだ。

 燃費数値だけを比べると、フィットが劣り、ヤリスが勝っているが、それでもヤリスは燃費の優位性をアピールしていない。

 しかもヤリスはガソリン車にあえて、アイドリングストップ車を設定していないのだ。

参考【燃費至上主義に終止符!? それとも…??】新型ヤリスがアイドリングストップをやめた意外な理由

 トヨタの新車開発者に燃費をアピールしなくなった理由を尋ねると、以下のような返答であった。

 「燃費には今でも力を注いで開発しているが、カタログなどに記載される燃費数値よりも、実際にお客様が使われた時の実用燃費にこだわっている。ライバル車の燃費数値はチェックするが、それを見て自社製品の数値を高める目標にはしない」と言う。

次ページは : エコカー減税が燃費競争を助長した

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