アメリカ車を代表するプレミアムブランドいえば、真っ先に頭に浮かぶのがゼネラルモーターズが展開しているキャデラックだろう。
1950年代には隆盛を極め、巨大なテールフィンを備えたキャデラックは、アメリカ文化やアメリカンドリームを象徴するアイコンとして、その後も世界の高級車に影響を与え続けた。
2000年代以降になると、モダンなスタイリングに統一し、ニュルブルクリングサーキットで開発テストを行うなど、欧州メーカーをターゲットとするようになった。
そして、2010年代に入り、セダン最小モデルのATSや高級SUVのSRX、エスカレードの人気に火が付いた。
特にアメ車らしい豪華絢爛なSUVのエスカレードは、日本でも富裕層を中心にブームを巻き起こした。
またグローバル戦略の一環として新しい車名を採り入れたこともトピックス。セダンやクーペにはCT、SUVにはXTが車名として付けられ、その後ろに車格を示す数字を付ける方式となっている。
最新のキャデラックは、60代以上の方がイメージしているであろう、1990年代初頭までの優雅なイメージとは大きく変わっているのだ。
そこで、いまいち、よくわからないという方のためにキャデラックの最新事情について、モータージャーナリストの岩尾信哉氏が解説する。
文/岩尾信哉
写真/ゼネラルモーターズ
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最近のキャデラックは何が違うのか?
キャデラックといえば、米国生まれの大手自動車メーカーが抱えるブランドの中で、1902年創業と118年を超える歴史を持つ、アメリカを代表するプレミアムブランドである。
たとえば最近ではトランプ大統領の来日時に大統領専用車「ビースト」が姿を見せたことが話題に上ったが、大統領専用車を手がける特別なブランドとしてなど、そのステイタスは揺らぎのないものだ。
いっぽうで20世紀末に将来に向けて打ち出された、斬新なデザインコンセプト「アート&サイエンス」が注目を浴びるなど、キャデラックは欧州のプレミアムカー市場での拡販も視野に入れつつ、商品開発に注力してきた。
日本市場でも最近のキャデラックは、大型SUVのエスカレードの人気が際だっていたこともあって、SUVを軸に新たな商品戦略を展開し始めている。
はたして、親元であるゼネラルモータース(以下GM)はキャデラックについて、どのような戦略を打ち出そうとしているのか。
将来日本市場に展開が噂されるモデルなどを含めて、新世代「キャディ」の動きを追ってみよう。
進化し続けるプレミアムブランド キャデラックの現在地
キャデラックの2000年代のモデルの変遷については、頂点に君臨するエスカレードを除いて、ネーミングの変化などを辿っていけばその動きがわかってくるのだが、近年のキャデラックの北米市場の動きは慌ただしさを増している。
まずのセダンに関しては、北米市場では従来のミドルレンジのCTSと日本市場に正規では未導入のXTSを、ニューモデルとして2019年4月に発表したCT5に集約。
続いて前述のようにATSの代替わりとして、同年9月にコンパクトセダンのCT4を米国で発表した(2018年にATS、2019年にCTSの生産が終了)。
対して日本市場では、後述するビッグセダンのCT6が2015年の本国発表に続き2016年に、ネーミングを変更した新世代キャデラックの先駆けとして導入された。
SUV系の新車種については、最近では2019年に改良を受けたミドルクラスSUVのXT5(日本市場では後ろに“クロスオーバー”が付く)と、XT5とフルサイズSUVのエスカレードの間を埋めるモデルとしてXT6を2020年1月に同時に導入している。
新たなSUVモデルとしてフロントデザインを改め、横方向に伸びるLEDヘッドライトと大型グリルなどを備えた共通のコンセプトが与えられている。
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