エスティマ ウィッシュ…栄華を誇った背低ミニバン 凋落の理由と今後の行方

エスティマ ウィッシュ…栄華を誇った背低ミニバン 凋落の理由と今後の行方

 世界をドン底に追い込んだ、コロナ禍をものともせず、トヨタ・アルファードは、2020年に入ってから、さらに勢いを増している。

 300万円オーバーのLクラスミニバンなのに、2020年7月は8,448台、8月は7,103台、9月は10,436台、1-9月では6万2584台も売れており、この好調が続けば、2020年はアルファード史上過去最大の登録台数となる見込みだ(※これまでの過去最高台数は2019年の6万8705台)。

 だが、今から20年ほど前の2000年頃には、エスティマやオデッセイ、ウィッシュ、エクシーガなど、比較的、背が低いミニバン達が、ファミリーカー市場の主流だった。ニューモデルが登場するたび、多くのファミリー層が買い求め、販売台数は年間10万台を超えるのが通例であり、一時代を築いていた。

 しかしながら、現在は、これらのミニバンはすでに絶滅状態であり、息の長いモデルであったエスティマも、2019年末をもって生産終了となってしまった。なぜ、背の低いミニバンがここまで減ってしまったのだろうか。

文:吉川賢一
写真:TOYOYA、HONDA、SUBARU

【画像ギャラリー】ミニバン界の名車!! 「天才タマゴ」と呼ばれたエスティマの歴代モデルをギャラリーでチェック!!


ミニバンジャンルの開拓者「エスティマ」

 エスティマが誕生した、1990年の国内販売は、1位がカローラ(300,008台)、2位がマークII(224,868台)、3位クラウン(205,259台)、4位カリーナ(175,805台)、5位コロナ(172,410台)、といった感じで、セダンタイプが主流であった。

 商用バンをベースとした、ハイエースやバネットセレナのような、キャブオーバー型のハイトワゴンも、車種は少ないものの、当時から存在していたが、商業車チックなデザインや、背高ゆえにあまり高くない走行性能、良くはない快適性など、ファミリー層には刺さりにくい商品内容であった。

 そんな中に登場したのが、「天才タマゴ」といわれた、初代エスティマだ。それまでのミニバンにはなかった、流線型のボディスタイリング、2.4リッター直列4気筒エンジンを横に75度寝かせ、フロア下に収めて平床化したミッドシップレイアウト、という凝った中身で、世界を驚かせた。

初代はエンジンを75度傾かせミドに搭載したミニバンとして登場 2代目以降はFFになったがフロントウィンドウの傾斜や、ワンモーションで描けるルーフラインなど、流麗なデザインは踏襲した
初代はエンジンを75度傾かせミドに搭載したミニバンとして登場 2代目以降はFFになったがフロントウィンドウの傾斜や、ワンモーションで描けるルーフラインなど、流麗なデザインは踏襲した

 だが、全幅1800ミリというワイドなボディサイズ、そして300万円オーバーという高価格がネックで、当初の販売は思うようにはいかなかった。国内市場でのエスティマが売れるようになったのは、1992年に追加となった、5ナンバーサイズに全幅を収めた姉妹車、エスティマエミーナ・エスティマルシーダからだ。

 その後、続々とこの手のミニバンが登場した。ホンダ初代オデッセイ(1994年~)、トヨタ・イプサム(1996年)、ホンダ初代ストリーム(2000年~)、トヨタ・ウィッシュ(2003年~)など、いずれもデビューイヤーは10万台を超える販売台数を記録した。

 またスバルも、7人乗りのトラヴィック(オペルのOEM、2001年~)の後継車として、エクシーガ(2008年~)を投入した。

初代ウィッシュは2003年に全高を1600mm以下に抑えたワゴン風の3列シートミニバンとして発売 2009年には2代目にフルモデルチェンジされた
初代ウィッシュは2003年に全高を1600mm以下に抑えたワゴン風の3列シートミニバンとして発売 2009年には2代目にフルモデルチェンジされた

 ファミリーの中で最もステアリングを握る機会の多い、お父さんも満足の運転フィーリング、しかも、ボディスタイリングも流線形でスタイリッシュ、乗員は7名分確保されて積載量もある、となれば、このタイプの人気が出るのは必然だろう。

 この1995年頃から2005年あたりが、背の低いミニバンの全盛期であり、徐々にセダン市場が縮小していく流れの原因となった。

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