登場からすでに65年、現行モデルは15代目にもなり、国内ではトヨタランドクルーザーに続く、古い歴史を持つトヨタ クラウン。常に時代に合わせて変化し、ユーザーから支持され続け、今も日本の高級車として広く認知され続けているクルマだ。
現行モデルである、S22型が登場したのは2018年6月。それから2年が経ち、マイナーチェンジの噂が飛び交っているクラウンだが、マークXやティアナなど、セダンがどんどん消えていくこの時代だ、クラウンといえども、将来は楽観視できるものではない。
果たして、国産セダンの王者「クラウン」はどこへ向かうのだろうか。考察してみよう。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、ベストカー編集部
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欧州車に肉薄する乗り味を得た
最近の販売台数は、月1500台程度(6月1783台、7月1631台、8月949台、9月2050台)と落ち着いてきたものの、現行クラウンは、発売直後、約1カ月間で受注台数が3万台にもなった驚異的なセダンである。
デザイン、環境性能、走行性能、安全性能など、クルマとしてのあらゆる性能が刷新され、さらにはクルマ自身が情報をやり取りするコネクティッド技術も充実させた。
中でも大きく進化したのが、走りの質感だ。高速直進性が非常に高く、クルマ自身が「ビシッ」と真っすぐに進んでくれる。真っすぐに突き進むこの運転感覚は、BMWやベンツといった欧州車のレベルだ。
乗り心地も、ふわふわと柔らかな感じではなく、うねり路を走った際のボディの揺れがすぐに収まる。減衰力を高めつつも、ゴツゴツとせず、しっとりとした落ち着きのある乗り心地、そしてハンドル操作に対して「じわっ」と曲がるフィーリングも良い。
また、足を固めて初期の応答性を上げる一般的なシャシーセッティングではなく、車両重心高を見直し、車体剛性やサスペンションの横剛性など、クルマのポテンシャルそのものを上げた運動性能の素性の良さを感じる。
BMWやベンツの乗り味が好きな方には、これこれ!と感じるが、先代までのロイヤルのイメージで乗り込むと、「やや硬め」と感じるだろう。おそらく、エンブレムを隠されてブラインドテストをしたら、欧州車と間違える人も多いはず。それだけ走行性能と快適性の完成度が高いクルマだ。
10年後のクラウン、方向性は2つ
とある営業マンの方に、クラウンの目下の課題である「顧客層の若返り」について尋ねたところ、「70代が60代後半になりました。」と苦笑いで応えてくれた。
ただ、続けて「新型クラウンが出るたびに、「オプションフル装備のクラウンを買う!」と言っていただけるお客様がいるのは、クラウンだけ。若返りと同時に既存顧客も大切にしたい」とのことだった。
クルマはモデルチェンジできるが、人間の方はそうはいかない。今日時点は自らステアリングを握ることができるオーナーであっても、年を重ねるごとに、足腰に故障が生じて満足に運転できなくなったり、反応速度の衰えを感じ、自ら免許返納をする方も多くなるはずだ。
こうして、顧客が減り続けるであろう10年後、20年後のクラウンは、どこへ向かうべきなのか。筆者の考えは以下だ。
ひとつは、現行型が求めたBMW5シリーズやメルセデス・ベンツEクラスの方向性で、クラウンという名のもとで更なるパフォーマンスアップを目指した「万能優等生セダン」だ。環境性能に優れた新型パワートレイン、たとえばPHEV化、EV化も有効だろう。「トヨタの最新技術の起点モデル」としての登場が相応しい。
レクサスのセダンLS、ES、ISは受け入れられない、というトヨタ党のオーナーにとってはベストチョイスなクルマとなる。プレジデントのような御料車の一歩手間のイメージ、以前あった、クラウンマジェスタのような存在を目指すのがいいかもしれない。
もうひとつは、高齢者対応のドメスティック特化型セダンへ進化する方向だ。自動運転レベル3に近しい先進技術の搭載はもちろんのこと、クルマとのコネクティッド機能を進化させ、運転行為のオートメーション化を進める。
自動パーキング、オートドア開閉、自動エントランスお迎え機能など、70代でも安全に運転ができるクルマとして仕上げる。現クラウンのプラットフォームを生かし、フェイスチェンジやパワートレインの改良を加えながら、ユーザーの高齢化に寄り添って生き延ばす方向だ。
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