かつて、1980年代。「ボーイズレーサー」と呼ばれた、小さいボディに元気のいいエンジンを積み、切れのある走りで当時のクルマ好きたちを魅了していたモデルが多数しのぎを削っていた時代があった。
手頃に買え、維持費も安く、何より運転していて楽しい。
本企画では、そんなかつての「ボーイズレーサー」たちを回顧しながら、現行車ならばどのモデルが「ボーイズレーサー」と呼ぶのにふさわしいか? それを考察してみたい。
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※本稿は2020年9月のものです
文/片岡英明、永田 恵一、ベストカー編集部、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』 2020年10月10日号
■そこが気になる!「ボーイズレーサー」ってどんなクルマ?
(TEXT/編集部)
そもそも「ボーイズレーサー」という言葉が出始めたのは、1980年代だったようだ。
1970年代から同じようなコンセプトを持ったクルマ(例:2代目のKP61型スターレット)は存在していたものの、担当は個人的に3代目のワンダーシビックに直4、1.6LエンジンZCを搭載して1984年に追加設定されたシビックSi以降にボーイズレーサーが認識されたように思う。
全日本ツーリングカー選手権への参戦マシンとなったことや、ボンネットにはノーマルのシビックにはないパワーバルジがあったことも、そのイメージを色濃くしていた。
同じようなモデルを指す言葉に「ホットハッチ」があるが、こちらはボディ形状が文字どおりハッチバックに限定されてしまう。
ボーイズレーサーにはハッチバック車だけでなく、AE92型以降のカローラレビン/スプリンタートレノ、歴代CR-Xなどのクーペモデル、さらには軽のセダンをベースにしたアルトワークスなどのホットモデル(※軽の過激なスポーツモデルには「ベビーギャング」の愛称もある)まであり、ボディ形状の区別までは厳密にはないと思われる。
下にボーイズレーサーの10カ条を記したが、あくまでこれは原則であり、AT率が向上してクルマ全体の新車価格が上がった現在では、必ずしもこの条件すべてを満たすモデルばかりではないことをお断りしておく。
●ボーイズレーサー10カ条
・求めやすい車両価格(約200万~300万円台前半)
・ランニングコストが安い
・アフターパーツが豊富
・ボディサイズが小さい
・基本的には4シーターで実用的に使える
・絶対的な速さはなくともキラリと光る走りを持つ
・排気量は2L以下
・峠を走るのが楽しい
・3ペダルMTの設定車があるクルマが多い
・基本的にFF車ベース
続いては現行モデルのボーイズレーサーランキングをお届けしよう。
■国産モデル&輸入車混合ランキング 現代ボーイズレーサーモデルTOP20
(TEXT/永田 恵一)
1位はイマイチなMTのクラッチとシフトのフィール、エンジンが「速いけど楽しさに欠ける」という点と、タイヤ代が安くない以外はボーイズレーサーの鏡のようなスイフトスポーツが鉄板だ。
スイフトスポーツは内容を考えれば激安なのに加え安全装備も文句なし、豊富なアフターパーツによる発展性も高いと、日本車の宝。
2位の86/BRZは下の番外コラムで書いた私のレビンのような要素も持ち、FRなので学べる要素も多く、価格も納得できる範囲といまだ魅力的だ。
ボーイズレーサーとして使うなら、新車が残っているかはともかくとして、ベース車となるBRZのRカスタマイズパッケージのホイールを換えるという乗り方がおススメ。
3位のアルトワークスはすべてが安上がりなだけでなく、ボーイズレーサーらしいピリリとした走りも素晴らしい。
4位のマーチNISMO Sはいいクルマ度は低いが、乗って楽しいというボーイズレーサーらしさを評価。
5位のアバルト595はボーイズレーサーらしさに加え、「小さいのにプレステージがある」というブランドイメージの高さも大きな魅力だ。
ノートNISMO SはマーチNISMO S同様の楽しさを持つが、絶対的な価格が安くないので6位、7位とした。
ボーイズレーサーに似つかわしいのはオーソドックスな1.6L+MTだが、新鮮さやレスポンスのよさに代表される電動車の魅力を試してみたいならe-POWERもいい。
8位から10位は「MTのあるコンパクトカーのベースグレード」を安さと、チューニングによる発展性を評価して並べた。
本当の意味での現代のボーイズレーサーはこんなクルマたちかとも思う。順位はアフターパーツの豊富さによる発展性の順と思ってほしい。
オープン2シーターは実用性の低さによりこの順位とした。
しかし、実用性を求めないならボーイズレーサーにも問題なく、このなかではワンメイクレースに出られるという資格もついてくるNR-Aの存在も決め手にロードスターを筆頭にした。
軽の2台は走りに没頭したいならS660、「S660がピュアすぎる」というならMTのコペンのLSDつきという選び方がいいだろう。
トゥインゴは「いいクルマではないけど、この価格でNA+MTのSも含めRRに乗れる」という理由で輸入車では上位とした。
GRヤリスのRSの順位が低いのは1.5L NAにはクルマ自体があり余っている点など、「ボーイズレーサーにはちょっと違うかな」と感じるためだ。もちろん「クルマの余裕を味わう」という楽しみ方もあっていいとは思う。
輸入車のコンパクトカーはこの価格帯だとスポーツグレードでないのもありこの順位としたが、好みが合えばアリなチョイスだ。
このなかでは好みがわかれるところもあるが、シャープなハンドリングを持つミニONEが楽しさでは一番だろう。
アクアGRスポーツはノートe-POWER NISMOに対するアドバンテージがない点と全体的な古さから最下位とした。
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