日本車のファミリーフェイスの完成度はどんなものなのか?

日本車のファミリーフェイスの完成度はどんなものなのか?

 かつて日本車の顔(フロントマスク)はどのメーカーもバラバラで、どこのメーカーのクルマなのかもわからない状態だった。それがここ10年くらいの間にファミリーフェイスを採用するケースが増えてきている。

 日本車のファミリーフェイスで有名なのは、レクサスのスピンドルグリルがあるが、特別な名前を謳っているメーカーもあれば、特に命名はしていないが、共通アイデンティティを与えているメーカーもある。

「人形は顔が命です」、というCMもあったが、クルマだって顔は最も印象づける要素として重要だ。

 ここでは、清水草一氏に、最近増えてきた日本車のファミリーフェイスについて評価してもらった。

文:清水草一/写真:LEXUS、TOYOTA、NISSAN、HONDA、MAZDA、SUBARU、MITSUBISHI


ファミリーフェイスの積極採用はグローバル化の証

 海外の高級車ブランドは、メーカーのアイデンティティとして、たいへん昔からファミリーフェイスを採用していた。

 メルセデスベンツは、戦前からの流れを汲んだラジエター型のグリルが定番。ラジエター型とは、文字通りラジエターそのものに近い形のグリルで、以前はボディから一部が突き出していたが、それが徐々にボディ平面に近くなり、現在に至っている。

 BMWと言えばキドニーグリルだが、これも戦前からのもの。そしてロールスロイスのパルテノングリルは、アテネのパルテノン神殿をモチーフとしたもので、まさに権威の象徴だ。

BMWのアイデンティティといえば昔からキドニーグリル。BMWが1933年に初めて作った303以来の共通アイコンだが、昔は縦長だったがどんどん横長化している
ロールスロイスファントムも伝統のパルテノングリルを装着。メッキ処理されたグリルは下品にもなりかねないが、ロールスロイスは威厳に満ちあふれている

 これら歴史あるファミリーフェイスを持つブランドは高級車に限られるが、現在は経済のグローバル化もあって、大衆車も含め、世界中のブランドがファミリーフェイスを採用している。

 自由貿易が行き渡ったことで、世界各国で多くのブランド車が販売されるようになった結果、一見してどのブランドが見分けられない顔つきのクルマは、「わけのわからない安物」と見られてしまうようになったのが、主な原因と言われている。

 日本車は、大衆車が中心だったこともあり、ファイリーフェイスの採用は非常に遅く、ここ10年ほどの歴史しかない。果たして日本車のファミリーフェイスは、ブランドアイデンティティを構築できるのか? そこを軽く検証しつつ、各メーカーの”顔”を独断で採点してみたい。

レクサス/スピンドルグリル

 スピンドルとは「糸車」のこと。糸車を横から見た形をイメージしたのがスピンドルグリルで、アウディのシングルフレームグリルの変型版とも言える。

 トヨタ自動車の前身は豊田自動織機という織物機械メーカー。糸車はその流れを汲んだもので、決して奇を衒っただけではない。

 最初の採用は2012年登場のレクサスGS。当初は「エグイ」とか「浮いてる」といった厳しい評価が多かったが、ポン付けではなくフォルムと一体でデザインされるようになるにつれて、全体が成熟しなじんで来た。

レクサス車で初めてスピンドルグリルを採用したのは2012年にデビューしたGS(写真は2013年に追加されたGS300h)。上下を分割するバンパーが残るなどおとなしい

 こうなるとスピンドルグリルは非常に印象的で、現在は多くの人がひと目でレクサスと見分けるようになった。

 まだ好き嫌いは分かれているが、嫌う人がいなくなったら、その顔は空気のような存在になってしまう。そういう意味も含め、スピンドルグリルは大成功だろう。

初めてスピンドルグリルを採用したGSに比べて最近のモデルは突き抜けた感がある。大胆ながらデザイン的に洗練されてきていて、レクサスのアイデンティティとして定着

清水草一の採点: 80点

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