F1王者のGT参戦を喜ぶべき!? バトンの「レースがしたい」はどこまで本気か

 F1の元ワールドチャンピオン、ジェンソン・バトン(2009年ブラウンGPでチャンピオン)が2018年は日本のスーパーGTに参戦する。親日家としても有名なバトン。ほとんどのファンもメディアも彼の参戦を喜んでいる。

 しかしどうしても日本のモータースポーツを考えると手放しにこの状況を喜べないという意見もある。

 彼が走るGT500は各メーカーのトップドライバーが目指す頂点であり、若手ドライバーはそこを夢見て日々の経験を積んでいる。

 そこに突如として現れた元F1王者。現実として彼のシートのために日本人ドライバーがGT500から去った。手放しにバトンの参戦を喜ぶべきか、元GTドライバーの松田秀士氏が語ります。

文:松田秀士/写真:ホンダ
ベストカー2018年3月26日号


■バトンは本当にスーパーGTで走りたいのか?

 いちおうボクはスーパーGTに100戦以上出場したグレーテッドドライバーです。だからこそ日本のレース界の10年先、20年先を見越したことを考えてしまいます。

 今年注目すべき話題といえば元F1ワールドチャンピオンでもあるジェンソン・バトン選手が出場することですね。彼は昨年の鈴鹿1000kmに第3ドライバーとしてスポット参戦して話題を振りまいた。

 そこでバトン選手はスーパーGTで成功するのだろうか? という失礼なお話。というのも、昨年アロンソ選手がインディ500に急遽出場。一時はトップを快走するなど、そのポテンシャルを見せつけた。今年、彼はトヨタからWECにも出場するという。

 彼が目指すのはインディ500、ルマン24時間、そしてすでに手にしているF1モナコGPに勝利することだ。ではバトン選手は何を目標にスーパーGTにやってくるのだろうか。はっきり言って、ボクにもよくわからない。

昨年の鈴鹿1000kmに参戦したバトン。スポット参戦ならばその狙いはわかるのだが、フル参戦となるとまた話は別かもしれない
昨年の鈴鹿1000kmに参戦したバトン。スポット参戦ならばその狙いはわかるのだが、フル参戦となるとまた話は別

 スーパーGTのレベル、集客はモータースポーツショーとして疑う余地のない盛大なイベントだ。

 しかし、開催国はほとんどが日本だし、グローバルという意味では「?」だ。今後、DTMとの共催はあるとしてもまだこれからの段階。

 アロンソ選手と比べて、すでにF1王者のドライバーがスーパーGTのチャンピオンになりたくて、というのはどうもしっくりこないのだ。

 もし、もっとレースをしたい、楽しみたいから日本にきた、ちょうどホンダと仲いいし。というレベルのモチベーションだったら、迷惑な話だとボクは思う。

 彼のシートを確保するために、若手が1人シートを失っているはずだ。これは、日本のレース界にとって損失だと考える。

■興行としての成功とバトンの立ち位置

 スーパースターの登場でレースは盛り上がることは明白。しかし、一人でも多くの日本人ドライバーに育ってほしい。それがレース界の財産なのだから。

 バトン選手のドライバーレベルをいまさら疑う余地もない。F1王者なのだから。ならば、日本人若手が彼をガンガン抜きまくって、来年はホンダが戦力外を突き付けるほどに戦ってほしい。

今年バトンが乗るのが高橋国光監督率いる、実質的にホンダのエース車両の100号車だ。エース山本尚貴とのコンビで勝ちにいけるか
今年バトンが乗るのが高橋国光監督率いる100号車。相棒もエースの山本尚貴で、これ以上ない環境をホンダから提供されている

 そして、再来年バトン選手がGT300クラスに降格したとしてもスーパーGTに出場して、「ボクはスーパーGTが大好きだ」と言えば心から拍手を送り、応援したい。

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