小池都知事が初試乗! トヨタの燃料電池(FC)バスが東京都で運行開始

小池都知事が初試乗! トヨタの燃料電池(FC)バスが東京都で運行開始

東京都交通局は、トヨタが開発した燃料電池(FC)バスを2台導入し、3月21日から運行を開始する。運行路線は「都05系統」で、東京駅丸の内南口~東京ビッグサイトを結ぶ。これに先立ち3月6日、小池百合子東京都知事が行政視察としてFCバスに試乗した。

取材:バスマガジン編集部/撮影:伊藤嘉啓、西尾タクト



MIRAIに続いて、バスにも燃料電池(FC)車が登場


グリーン基調のカラーでおなじみの都営バスに、新たにブルー基調の新型バスが加わった。次世代のエネルギーとして期待される燃料電池(FC)バスだ。

この分野で世界をリードするトヨタが、乗用車のMIRAIに続いて今度は大型車のジャンルで、世界初のFCバスを実現させた。かねてより東京都交通局は排出ガスのクリーンなFCバスには注目しており、過去二度にわたって行われたトヨタの実証実験に乗務員などスタッフを派遣する形で協力してきた。平成15年の実証実験では、開発段階のFCバスの基本的な構造などの確認を、平成27年の実証実験では導入予定車両のチェックのため、大都市特有の交通事情での操作性などをテストしている。こうした経緯を経ての、今回の導入となった。


小池知事と報道陣を乗せて体験走行したFCバス。ブルー&ホワイトのボディカラーは、営業中の都バスにはないカラーリングで意外に目立っている

都営FCバスは、ブルー基調のカラーリング


冒頭にも挙げたとおり、都バスといえばグリーンのカラーリングで親しまれているが、今回の都知事視察のタイミングでお披露目されたFCバスのボディは、青と白の爽やかなボディカラー。そして右側面には東京の都市をイメージさせるイラストも描かれる。FCバスのクリーンなイメージを印象づけるカラーリングと言えそうだ。ちなみにフロントとリア、屋根の両サイドには「FUEL CELL BUS」、ボディ両サイドとリアには「TOYOTA」の文字が記される。

小池知事の感想は「静かですね


さて、小池都知事による試乗。場所は、都営バス深川自動車営業所で実施された。小池都知事は、バスの概要と外部給電機能の説明を受けると、最後列シートに座って深川車庫からイワタニ水素ステーション東京有明まで約15分間の走行を体験した。また、水素ステーションでは水素充填設備などを視察した。


イワタニ水素ステーション東京有明に移動して水素充填の説明を受けた小池都知事。ノズルを持った記念撮影では満面の笑み

視察後、FCバスの印象について聞かれると、都知事は「とても静かですね。前の話し声が後ろまで聞こえるくらい。乗り心地も快適でした」との感想を述べたほか、「燃料電池車両という新しい技術を積極的に採り入れていくのは重要」などと話した。さらに「2020年までに東京都でFCバスを100台導入し、うち70台を都営バス、30台は民間バス事業者が運行する予定」という計画を改めて強調していた。都営バスの70台は基本的に既存車両と入れ替えになる。現在、東京都交通局が保有する路線バス車両は1463台(ほかに観光車両5台)で、2020年には全体の5%がFCバスになる計画だ。

編集部としては、都バス営業所内での水素ステーションの設置計画や、2020年以降の導入計画、さらにメンテナンス体勢や安全対策など聞きたいことがたくさんあったのだが、囲み取材の代表質問はすぐさま「豊洲問題」に早変わり。残念ながら、以降、FCバスに関する知事のコメントは語られなかった。当日のテレビの報道番組では、FCバスよりも豊洲に関する知事のコメントが大きく扱われたことは言うまでもない。

 

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運転しやすいFCバス


ところで、バスマガジン編集部では東京都に納車されたFCバスと同じ型の車両をすでに取材、試乗しているので簡単に紹介しておこう。

バスの車体は日野自動車のブルーリボンがベースとなり、パワーユニットにトヨタのFCシステムが組み合わされる。外観で最も特徴的なのは屋根かもしれない。フタコブラクダのように屋根上の前後に突起があり、前方に高圧水素タンク、後方にはバッテリーが積まれている。重量物を上方に搭載するのは自動車として邪道と思われる読者の方も多いかもしれないが、現在の路線バスではバリアフリー対策としてノンステップの低床フロアが必須で、そのため屋根上のスペースを活用せざるを得ないのが実情だ。エアコンユニットも屋根上に設置するのがバスでは常識である。ちなみに、モーターは後輪の後ろに設置されている。従来のバスのエンジンとほぼ同じ位置だ。またヘッドライトのデザインが特徴的で、やはり近未来をイメージさせる。


都市郊外の市街地にて実際の路線バスの走行をイメージして試乗。すべての操作が軽く感じられるが、ステアリングを通して路面状況の変化がしっかり伝わり、ドライバーにとって運転しやすいバスといえそうだ

コクピットは従来のバスと大きく変わらないが、シフトノブはトヨタのハイブリッド車に近く、シフト操作も軽い。Dレンジに入れて走り出してみると、シフトだけでなくアクセル、ブレーキ、ステアリング操作すべてが軽く感じられて扱いやすい。ボディが大きいことを除けば乗用車ライクな感覚で、これまでのバスより運転しやすいといえる。実際にFCバスを運転した都バスドライバーの声を聞いてみたところ、同じように操作性の良さを挙げる意見が多かった。さらに、サスペンションは適度に硬めで立って乗車する場合でも乗り心地は良さそうだ。静粛性が高いため車内アナウンスのボリュームを絞ったほうがいい、といった現場のドライバーならではの感想も聞かれた。


MIRAIで培われたFCシステムの信頼性は高く、非公式ながらトヨタは東京都に「故障しない」と断言したと伝えられている

推定価格1億円とも言われたFCバスだが、東京都へは月額約25万円のリースで納車されている。車体のメンテナンスや修理は基本的に都バスが行い、FCシステムに不具合があればトヨタのディーラーが対応する。また、課題となる水素ステーションに関して東京都は、当面は有明など民間施設を利用するとしているが、2020年に70台体制になれば施設の不足は明らかで、営業所内の設置も視野に入れて検討していくという。

環境対策の旗手として、また深刻なドライバー不足に直面しているバス業界の救世主として、期待大のFCバスの今後に注目したい。