世界をリードする欧州ミドルサルーンを水野和敏が斬る!

世界をリードする欧州ミドルサルーンを水野和敏が斬る!

日産自動車でV35スカイライン、Z33フェアレディZ、そして何より現行型GT-Rを作り上げた水野和敏氏が、欧州サルーンの雄、BMW523d、メルセデスベンツE220d、ボルボS90を連続試乗。このカテゴリーを牽引する3台を、水野和敏氏はどう評価したか? 車好きなら間違いなく唸る、試乗インプレッションの真髄をぜひご覧ください。記事末にはスペシャル試乗動画もあります。
写真:小宮岩雄
ベストカー2017年6月10日




開発者だからこそわかる、この3台の強さ


こんにちは水野和敏です。今回は編集部にお願いをしてBMWの新しくなった5シリーズを試させてもらいました。

今回用意してもらったのは523dラグジュアリー、ベンツE220dアバンギャルドスポーツ、ボルボS90・T6インスクリプションAWDの3台です。いずれも直列4気筒の2ℓエンジンで、BMWとベンツはディーゼルターボ、ボルボはガソリンでターボ+スーパーチャージャー。3台とも最大トルクは40.8㎏mです。

3台並べてみるとボディサイズはほぼ同じ。ほんの少しだけボルボS90が大きいですが、いずれも全長4900㎜超で全幅も1850㎜超。フロントタイヤのセンターからバルクヘッドの位置、アクセルペダルを置く位置は縦置きエンジンの後輪駆動であればメーカーによる差というより、機械的に決まってしまうため、ベンツもBMWもそれほど違わずほぼ同じです。

しかし見た目から受ける印象はずいぶんと違います。横から見るとよくわかるのですが、BMWはフロントガラスとAピラーの傾斜が大きく寝ています。これは視覚的にスポーティに、そしてノーズを長く見せるためでしょう。さらに5シリーズではノーズ先端のオーバーハングも少し伸ばして、伸びやかさとプロポーションのスポーツ感をより強調させています。フロントガラスとAピラーの傾斜を強く寝かせているぶん、5シリーズの前席乗員は後方に配置されています。加えてキャビン前後寸法長のカタログ記載値を長くするために後席乗員はEクラスに対してはるか後方に追いやられて配置されています。

競合車であるEクラスとほぼ同じ全長のなかで、強調したスポーティ感の演出とカタログ値室内長の拡大を狙ったため、後席の乗員は必要以上に後方に追いやられてしまっておりその結果、後席とリアタイヤが下級クラスなみに近くなっている。リアホイルハウスの出っ張りが後席に大きく張り出していて、身長170㎝以下の私が後席に乗った時も乗降時にお尻や腰が当たるとか、ドアアームレストに手を乗せようとするとリアホイルハウスの出っ張りに肘が当たり体が傾いてしまうということが起こりました。

さらに後席乗員が後ろに下がっているためにトランクの前後の長さも短く、そのなかであえてカタログ値VDA容量を確保するために床面を凹ませていますが、このクラスで凹んでいて平坦でないトランク床面では、スーツケースやキャリーバッグを2個平置きにした時に斜めにぶつかり合って載せることになり、凹みのサイズと合わない大きさの物を載せようとすると不便もあると思われます。5m近いサイズのプレミアムセダンとして、この後席とトランクのパッケージングに私は疑問を感じます。

「バランスさせること」こそがプロの仕事


対するベンツEはフロントオーバーハングとデザイン代と空力性能、前後の乗員配置とガラス傾斜、トランクルームとリアオーバーハングなど、すべてがバランスされてパッケージングされています。5シリーズに対してフォーマルでラグジュアリーなフォルムを作り出しているのです。フロントタイヤの位置とエンジンの搭載位置の関係は5もEもほとんど同じでも、パッケージングによってそのクルマの狙いや個性が生み出されていきます。

ここで私の一言ですが、私も長い間車両計画やパッケージングの開発をやってきました。その経験から「よい悪い」ということでなく一言言わせてもらうと、ある特徴を強調しそのために他の部分を犠牲にする仕事より、すべてを完璧にバランスさせて向上させる仕事のほうが地味だけどもはるかにプロフェッショナルな技術やノウハウやリーダーシップが要求されるということです。

ボルボS90のプロポーションは横置きエンジンのFFベースとは思えません。「アクセルペダルと前席乗員位置、フロントピラーの配置と傾斜、そしてフロントタイヤセンターの位置関係」などプロポーションバランスが縦置きエンジン高級FR車とほぼ同じなのです。一般的なFF車だと、Aピラーの延長線は前輪の前側に伸びます。この位置関係によりFF車はフロントが重い、前のめりのプロポーションに見えてしまうのです。しかしS90では5シリーズやEクラスと同じく、ホイールセンター部に合致しています。これにより均整の取れたプロポーションとしているのです。横から見ると5シリーズやEクラスと同じようなプロポーションバランスとなっていることがわかります。アウディA4やA6は縦置きエンジンFFベースなので、フロントタイヤより前にすべてが配置されているようなフロントが重い感じのプロポーションです。高級車のプロポーションとしてはアウディよりもボルボS90のほうが高級車としての素性のよさを感じます。


次ページ:続いてBMW、ベンツ、ボルボ、個別評価




BMW523d Luxury 90


フロントセクションはボディ、フロア、サスペンションともにガッチリとアソビなく高い精度で作り込まれており、これはM4で感じた精度に通じる。惜しいのは電動パワステの味付け。極低速域での切り始めの重さと、大きく切り込んでいった際にスッと軽くなる切り替え点のチューニングが雑で違和感を感じる。またリアセクションはよくできたフロントと相対的にちょっと弱さを感じる。

BMWのディーゼルエンジンはアクセル操作に対するトルクレスポンス、ピックアップのよさが魅力なのだが、排ガス対応のためかその魅力が薄らいだのは残念。後席とトランクのパッケージングに対してはこのクラスとしては疑問を感じずにはいられない。


BMW523d/運転すると全長4945㎜、全幅1870㎜とは思えないほどコンパクトに感じるのは、ドライバーの意のままに動いてくれるからである


メルセデスベンツE220dアバンギャルド 95


新技術をドライバーに感じさせる液晶インパネのデザイン、徹底的に空力性能を追求したエクステリアの造形。後席の乗降性や座り心地、居住性まであらゆる点でお客に対して気を配ったクルマ作り。もちろん圧倒的なスタビリティに根ざした操縦安定性の高さ、ロングドライブでの疲労の少なさ、安心感、そして立て付けパネルの隙間を4㎜でこなせる技術。ベンツのクルマ作りは隙がない。これらを総合的に判断すればBMWとの差は明確と言わざるを得ない。しかも、これをCとEで多くの部分の設計を共用化しながらしっかりと作り分けている。

それでも100点を与えられないのはリアセクションから感じるロードノイズだ。


メルセデスベンツE220d/いっけん何のことはなく見えるベンツEクラスだが、細部の作り込みの緻密さなど、設計思想、それを実現する工作精度などレベルが高い


ボルボS90 T6インスクリプション 88


これまでのボルボ車と比べて2ランク以上進化していると感じたけれど、S90がベンツやBMW、アウディなどと肩を並べる高級サルーンの世界に挑戦してきたのであれば、もっともっと走り込みをして熟成、合わせ込みをしてほしい。ボディ剛性自体は高く、フロアの作りやサスペンションなど個々の性能は充分高く、素性はとてもよく、ポテンシャルを感じるのだが、トータルでのバランス、コーディネート感が不足しているのだ。

しかしこれは現場の実験開発部隊の走り込み、作り込みで解決していける問題なので、マイナーチェンジに向けてレベルアップが期待できる。ポテンシャルを生かしきれていないのが残念。


ボルボS90/伸びやかなプロポーションのS90だが、その秘密は前輪とAピラーの位置関係。FR的な配置とすることで美しいスタイルを作りだしている


水野和敏氏による、この3台のさらなる評価が知りたい方は、ベストカー本誌2017年6月10日号(5月10日発売号)をチェックしましょう!

【水野和敏氏のスペシャル試乗動画はこちら】



水野和敏の試乗哲学を知るならこちら!:水野和敏の目線】私がメディアでクルマの評価をするわけ

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