フィットクラスのEV投入? ホンダEV試乗で見えた『3分の2を電動化』戦略

フィットクラスのEV投入? ホンダEV試乗で見えた『3分の2を電動化』戦略

年に1回、国内外からジャーナリストを招き、まだ世に出ていない車や技術を見せる。『ホンダミーティング』は、“ホンダの未来のショーケース”だ。過去にはNSXのプロトタイプや1.0L直3ターボエンジンも公開されている同イベントで、今年も“ホンダの未来”が見えた。

文:WEB編集部/写真:池之平昌信、Honda



「2030年までに3分の2を電動化」ホンダが描く未来


栃木県宇都宮市にある本田技研工業栃木研究所には、国内外からこの日だけで数百名の報道陣が集まった。その報道陣を前に、八郷隆弘社長はホンダの未来について語り始めた。

「2030年にグローバル販売の3分の2を電動化することを目指す」

「ハイブリッドモデルの拡大より、ハイブリッドをベースとするホンダ独自の高効率なプラグインハイブリッド(PHEV)システムを生かしたモデルを、今後の開発の中心として取り組む。FCに加え、バッテリーEVの開発を強化する」


レーシングドライバーの山野哲也氏(左)と話す八郷社長(中央)。当日は社長自ら電動化についてプレゼンをおこなった

——2030年に、ホンダが全世界で販売する車の6割強が電動化される。遠い未来の話に感じるが、残された時間は13年。開発期間や普及に必要な時間を考えると、“遠い未来”の話ではない。

ちなみに2017年1〜4月期の、ホンダの国内登録車におけるハイブリッド車比率は50%。つまり、2030年には現在のハイブリッド車以上にEV/PHEVが普及していることになる。

八郷社長はさらに続ける。

「クラリティシリーズは、同一プラットフォームでPHEV、バッテリーEV、そしてFCVをラインアップに持つ初のモデル。バッテリーEVは2018年発売予定の中国専用モデルに加え、他地域に向けても専用モデルを現在開発しており、今秋のオートショーにてご紹介したい」

今回栃木研究所には、そのクラリティシリーズ(PHEV/バッテリーEV/FCV)がすべて用意されていた。

ホンダの未来を握るクラリティのPHEVとEVは、いったいどんな車なのか?

「今秋のオートショー」という言い回しが大変気になったが、それが東京モーターショー(2017年10/27〜11/5)のことを指しているのか、あるいはフランクフルトショー(同年9/14〜9/24)のことを指しているのか、残念ながら明示はされなかった。

ただその「今秋のオートショー」にて、ホンダが考える次世代技術車の方向性を明らかにするモデルが出品されるとのこと。

クラリティPHEVは『ハイブリッドの進化形』


クラリティPHEVのパワーユニットは、1.5Lのガソリンエンジンに最高出力181HPを発揮するモーターを組み合わせたもの。

見た目はすでにリース販売されているクラリティFCとそう変わらない。でも、走り始めるとそのスムースでパワフルな加速感は印象的。

アクセルを強く踏み込むと、気づかないほど自然にエンジンが始動し、モーターをアシスト。モーターとエンジンで車を引っ張っていく。


バッテリーを床下に搭載したクラリティPHEV。後席のスペースも充分な広さを誇っていた

EV走行距離は42マイル(約67km)で、航続距離は330マイル(約531km)というが、『EV色を強めたハイブリッド車』という感覚。

ところが、このPHEVと比べてバッテリーEVはまったく違った。

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クラリティEV『段違いの加速感と新たな可能性』


「ヒュィイイン」。僅かなモーター音とともに2000kg近い重いボディは、思った以上に力強く「ググッと」加速してゆく。

「FCやPHEVよりも、こちらのバッテリーEVは、最初のアクセルを踏んだ時の“食いつき”がいい。そう感じられると思います」

助手席の開発関係者が語るように、初期トルクの出方、加速感はFC、PHEVより一段上をゆく。


こちらがクラリティEV。FCやPHEVとは異なりグリルレスのフロントマスクを採用しているのが外観のポイント

その加速感もさることながら、試乗後にボンネットを開けてさらに驚く。上がPHEV仕様で、下がバッテリーEV仕様のものだが、バッテリーEV車のボンネットには明らかにスペースの“余地”が残されている。

「まだまだフロントを小型化できる」というのだ。


この通り、PHEV(上)に対してEV(下)のエンジンルーム(とは呼ばないが)にはスペース的に余裕がある

「フル充電で航続距離は約140km以上。全開で走っても、40℃以上の高温にならない限り、航続距離が140kmを下回ることはないと思います」

航続距離の面で課題はあるものの、将来的に最も面白いと感じさせるのはEVだった。八郷社長のいう「開発の中心はPHEVながら、バッテリーEVの開発を強化していく」とは、まさに理想と現実を反映したコメントなのだろう。

EVはFFである必要はない?


試乗を通してEV/PHEVともに、開発が進んでいることはわかった。でも、「2030年までに3分の2を電動化」という目標は実現できるのだろうか?

この点、開発関係者に聞くと面白い答えが返ってきた。

「大衆車も電動化しないと3分の2達成は難しい? そうですね。フィットやシビッククラスの大衆車にもEVやPHEVを搭載することは当然考えています」

「ガソリン車はフロントに重量物のエンジンを置くFFが一般的だったが、EVはFFである必要はない? そのとおりです。EVで一番の重量物はバッテリー。既存のFFとは違った、EVに適した新しいパッケージングがあると思います。我々はパッケージングを売りにしてきたメーカーですしね」

新しいEVはFFではなく、RRのようなパッケージングもあり得る。そういった革新的なパッケージングのEVが、高級車ではなく、フィットクラスの大衆車に採用されれば、車好きにとっても面白い存在になることは間違いない。


こちらは過去にリース販売されていたフィットEV。今後、EVに特化した新たなパッケージングで新しいフィットEVが世に出てくるかもしれない

では、仮に3分の2を電動化した場合、“残りの3分の1”即ち、内燃機関はどうなるのか?

「(内燃機関は)趣味性の高いスポーツカーなどが中心になるかもしれませんね。やはり、内燃機関特有の魅力は代え難いですから。ただ、モーター特有の加速感を生かした新たなスポーティカーという可能性もあって、どちらがいいかは今まさに検討しているところです」

前出の関係者は言う。

「今、自動車は本当に過渡期を迎えています」

3分の2を電動化する。——それは、来たるEV/PHEV時代に登場するであろう、“車好きが胸を躍らせる未来の自動車”の根幹に関わることなのかもしれない。