バス停でバスを待っていると、「回送」の表示を出したバスが必ずと言って良いほど目の前を通過していくものだ。さてこの回送バス、いつ、どんなタイミングで走るのだろうか?
文・写真:中山修一
営業運転に不可欠な「回送」
日常的に遭遇するため、あれは利用者への当てつけなんじゃ? と邪推したくなるものの、そんなどうしようもない目的で回送バスを走らせることは絶対になく、ちゃんと事情がある。
どの地域の路線バスも、営業運転を行うには運行表(スターフ)という指示書に基づいてバスを動かすよう決められている。運行表の上にも、どの段階で回送バスにするかが指定されているのだ。
運行表には膨大なパターンがあり全部同じではないが、基本的に運行表に書かれている最初と最後・バスを営業所(車庫)から出して始点へ向かう時と、終点から営業所へ帰る時が回送扱いになる主なタイミングだ。
もちろんバス路線の始点終点が営業所であれば回送は発生しない。回送バスは営業所と始点終点のバス停が離れている地域で頻繁に見られる光景とも言えそうだ。
また、回送バスには特定の経路がなく、ショートカットなど状況次第で普段バスが通らない道も走行する。
回送が走る具体的なタイミングとは?
それでは、どんなタイミングでバスの行先表示器に「回送」と表示されるのだろうか。営業所から始点へ向かう際はともかくとして、ちょうど運行表の最後にあたる回送運転にはパターンが幾つかある。
特に多数の回送バスが走るのは朝のラッシュ時間帯。都会近くのベッドタウンで運行される路線バスとなると、乗客の積み残しを出さないよう、通勤通学時間帯にある程度の便数を確保して最寄主要駅などへのアクセスを支えている。
ラッシュ時間がピークを過ぎると、乗客の数が減り朝と同じ便数を走らせる必要がなくなるため、折り返してきたバスの多くを回送にして車庫に戻し、昼ダイヤへと均していくわけだ。
夜間の帰宅時間帯も似たような運行形態となる。その日の最終バスが終点に到着した後は当然車庫に戻る故、表示器が回送に変わる。
時間帯に関係なく乗務員の乗車業務が終了する時や、休憩で一旦営業所に戻るよう運行表で指示されている場合、運行表に書かれている最後の営業運転をこなした後は回送扱いにするのが一般的だ。
また、バスターミナルなどで営業運転の合間にバス車両を待機させておく際も回送の表示が利用される。車両の給油や洗車清掃等のタイミングでも回送バスとして車庫まで戻る。
最近はごく少数派となって久しいものの、幕式の行先表示器が主流だった頃は、営業所内に駐車してあるバス車両の表示を回送に合わせる傾向が強かった。
乗務員養成の教習車で表示器を回送にセットし、別のところに教習車である旨を掲げるパターンがある。行先表示器に何らかの形で「教習車」の表示ができない場合の、ちょっと変わった回送の使い方かもしれない。