スウェーデンのボルボ・トラックスは、航続距離が600kmに達する長距離輸送用のバッテリーEVトラックを2025年後半に発売すると発表した。新たにeアクスルを採用することでバッテリー搭載スペースを確保し、全体的な効率改善と併せて航続距離の延伸を図った。
ボルボはトラックの電動化で世界をリードして5年となる。発表時点(2024年9月3日)では日本での発売は未定だが、ゼロ・エミッションの長距離輸送においてブレイクスルーとなるかもしれない。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo
ボルボ、航続距離600kmのBEVトラックを2025年後半に発売
一度の充電で600km走る。ボルボの次世代バッテリーEV(BEV)大型トラックでは、これが可能になる。特にBEVが苦手としている長距離輸送にとっては、排ガスを出さずに長い距離を走れることはブレイクスルーになりうる。
トラックの電動化が世界中で進展し、より長い距離を走れるようになっている。ボルボは2024年9月3日にBEV大型トラック「FHエレクトリック」の長距離バージョンをローンチすると発表した。その航続距離は600kmに達するという。
これにより運送会社は、BEVトラックの運行ルートを中・長距離まで拡大でき、トラックの充電のためにドライバーの労働時間を犠牲にする必要はなくなるだろう。
長距離輸送用の新型ボルボFHエレクトリックは2025年の後半に発売される予定だ。
ボルボ・トラックス社長のロジャー・アルム氏は、プレスリリースにおいて次のようにコメントしている。
「私たちの新しい電動フラッグシップ車は、弊社が提供している広範な電動トラックを補完し、ゼロ排出でより長距離の輸送を可能にします。このトラックは、年間走行距離の長い運送会社にとって素晴らしいソリューションであり、CO2削減に対する強力なコミットメントとなります」。
トラックの「電動化」をリードして5年
600kmの航続距離を可能にしたのは新型のドライブライン技術だ。ボルボのBEVトラックは、これまでセントラルドライブ方式(中央に配置したモーターがシャフトを介して後輪を駆動する)だったが、新型トラックではモーター等を駆動軸に組み込んだ、いわゆるeアクスル(電動アクスル)方式を採用する。
これによりシャシー下部のスペースに余裕ができ、搭載可能なバッテリーが増えた。また、バッテリー自体も効率を改善し、さらにバッテリーマネジメントシステムやパワートレーン全体の効率改善を通じて、航続可能距離の延伸を図った。
ボルボ・トラックスは中・大型トラックの電動化で世界をリードしており、BEVトラックとして8モデルをポートフォリオに保有する。この広い商品レンジで市内配送から地場輸送、特装車やゴミ収集車などの電動化に貢献してきた。ここに間もなく、長距離輸送が加わる。
ボルボはこれまでに世界46カ国で3800台のBEVトラックを顧客に届け、輸送の電動化をリードしてきた(残念ながら、日本での発売はまだ)。
ロジャー・アルム社長は、BEVトラックの利点を次のように説明している。
「輸送セクターは世界の炭素排出量の7%を占め、BEVトラックは環境フットプリントを減らすための重要なツールとなっています。また、こうした環境性能に加えて、トラックドライバーに優れた職場環境を提供するという側面もあります。ディーゼル車と比べてはるかに騒音と振動が少ないからです」。
ボルボ・トラックスは2040年のネット・ゼロ達成に向けて、化石燃料からの脱却を進めている。そのために採用しているのが「3パス」技術戦略だ。これは、3つの技術的なアプローチをそれぞれに推進するというものだ。
その3つのパスとは、「バッテリー電気」「水素燃料電池」「再生可能燃料による内燃機関」となっている。再生可能燃料にはグリーン水素(再生可能エネルギーで作る水素)、バイオガス(バイオマス由来の天然ガス)、HVO(水素化植物油=ディーゼルエンジンで燃焼可能な再生可能ディーゼル)などが含まれている。
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