古くからのクルマ好きなら、356から930、964、993までの空冷ポルシェの日本における輸入代理店といえばミツワ自動車を思い浮かぶはず。ちなみにミツワ自動車は、1997年12月末にポルシェAGとの輸入代理店契約を終了して以降、紆余曲折を経て2022年7月31日付で営業を終了していた。そのミツワ自動車に在籍していた空冷ポルシェに精通するメカニックが再び集まって、この秋、「PORTECH(ポルテック)」という空冷ポルシェ専門とするメンテナンスショップが開業した。さて、どんなところなのか、取材してきたので報告しよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、ポルテック
■元ミツワ自動車のメカニックが再結集
旧いクルマに乗るには日頃のメンテナンスが欠かせない。ある程度自分でできる人でも、やはり主治医が必要である。ここでいう主治医とは、整備工場および整備士である。
しかし、いざ旧車が欲しいと思っても主治医がいない、または旧車を持っているがなかなか主治医が見つからない……と頭を抱えている人は少なくないのではないだろうか。
特に空冷エンジンのポルシェならなおさらのことだ。356(1948~1965)、そして911は、901型(タイプF/1965~1973、通称ナローポルシェ)、930型(タイプG)、964型、993型と1965年~1997年まで4世代、32年間におよぶ。
その時代の空冷911の正規輸入販売を行っていたのが「ミツワ自動車(MIZWA MOTORS)」だった。そもそもミツワ自動車は、1931年(昭和6年)、赤坂溜池でパッカードを輸入販売を開始し、1952年からポルシェの輸入総代理店として正規輸入、販売を開始することになる。1953年、ミツワ自動車が発注した4台の356から日本におけるポルシェの歴史が始まったのだ。
しかし、1997年12月末にはポルシェAGとの輸入契約を終了。ポルシェジャパン発足後は、サーブやランボルギーニ、アウディの正規販売店として営業を続けてきたが、2022年7月31日をもって自動車整備事業を終了し、東京銀座にある本社ショールームおよび静岡県富士小山のデポを閉鎖した。
実に77年におよぶミツワ自動車の歴史がここに途絶えてしまったのである。しかし、ここにドラマが待っていた。2024年10月、舘信秀会長率いるトムスが、旧ミツワ自動車の事業継承の後方支援を名乗り出て、旧ミツワ自動車のメカニックほぼ全員(6名)が再結集し、株式会社ポルテックが、かつてのミツワ自動車のPDIがあった同所に設立された。
旧ミツワ自動車で培われた整備のノウハウ、知見を受け継ぐメカニックがポルテックに再就職したことで、継承されたのだ。実に喜ばしいことである。
取材当日、歴史を感じる建屋内は1964年式356Cをはじめ、2台の911S、911ターボ、993カレラSなどが並べられていた。
工場長の堀田昌秋さんは「これまで356から993まで空冷ポルシェ全般の整備を行ってきました。車検整備からオーバーホールまで当時のミツワ自動車の整備基準にしたがって整備を行っていきます。安心してお任せいただければと思います」。
コメント
コメントの使い方