国内メーカーでWRCのイメージが強いのは、現在参戦中のトヨタや、過去に参戦していたスバルと三菱を思い浮かべる人が多い。少しコアなところでは、JWRCに参戦していたスズキを思い出す人もいるだろうか。では日産はどうだろう。現在ではラリーのイメージが全くないが、ラリーの日産を作った名車が、日産にはあるのだ。
文:佐々木 亘/画像:ベストカーweb編集部
【画像ギャラリー】今はイメージ無くなったけど「ラリーの日産」を豪語していた時代があったのよ!(7枚)画像ギャラリーパルサーの野望が始まる
1990年に登場した4代目パルサー(N14型)で登場したのが、4連スロットルバルブを搭載し、ハイチューンされたエンジンを搭載するGTI-Rだ。
この車両は、当時のWRC車両規格であるグループAカテゴリーを見据えて製造されている。参加車両の大幅な改造が許されないグループAでは、市販状態でのポテンシャルレベルがレースの勝敗を分けると言っても過言ではない。
そのため、パルサーGTI-Rには、「ラリーの日産」の復権をかけた、超高性能なパーツが組み込まれた。
心臓部には2L直列4気筒のDOHCターボを搭載。最高出力は230PSにもなるスーパーエンジンだ。足回りには、フロントにマクファーソン式、リアにパラレルリンク式のサスペンションを備えた。
フロントにはアンチダイブ・アンチリフトジオメトリーやリニアな減衰力を得る2段階絞りバルブ構造のショックアブソーバーを採用し、いかなる局面においてもフラットな走行姿勢を追求している。
駆動方式は4WDで、日産のお家芸とも言えるアテーサシステムを採用した。ハイパワーな駆動力を最適な比率で前後輪に配分し、理想的なニュートラルステアを作り出すことができる。
日産の代表的な乗用車であるパルサーが、乗用車らしからぬ性能を持っていたのだ。このパルサーはラリーで戦うクルマであった。
インテリアにもレースのこだわりを
操作系を中心に配置し、適度な緊張感と快い解放感が両立されたインテリア。シートはクッション・バック・サイドのパッド硬度を調整し、フィット感を向上している。シート調整はデュアルシートリフターや無段階調整を可能にするダイヤル式リクライニングを採用して、ベストなドラポジを作れる仕様だ。
小径ステアリングホイールやシフトノブ・パーキングブレーキレバーには、もちろん本革を採用した。ミッションにはダブルコーンシンクロを採用していて、シフト操作もスムーズで心地よい。油圧計・油温計・ブースト計をクラスターの上部において、視認性を高めている点にも注目だ。
サファリは良かったがWRCは…。
日産はWRCが創設された1973年以前から開催されていたサファリラリーで大活躍していた。1970年にブルーバードで初の総合優勝を達成。1971年と73年はフェアレディZで制し、1979年からは4年連続優勝を飾っていたのだ。
輝かしいラリーでの実績を掲げながら、1991年にパルサーGTI-RでWRCへ参戦。しかし、ハイパワーエンジンを搭載する小さな車体は、タイヤサイズの拡大を許さずにエンジンパワーを持て余し、狭いエンジンルームは冷却に不利になるなど、実際の競技では問題が山積みとなった。
日産の期待むなしく、翌年にはWRCからの撤退を発表する。
ただ、レースから離れてもパルサーGTI-Rの魅力は高く、販売は伸びた。現在もその人気は高く、中古車市場では200万円超の個体が多い。中には400万円に迫るものもある。
パルサーGTI-Rは、今で言えばGRヤリスといったところか。ハイパフォーマンスモデルが揃うGRブランドで販売を伸ばしていくトヨタに対して、日産は元気がない。
今一度、パルサーGTI-Rのように、夢が持てるクルマづくりをすることが、日産再生の糸口になりそうだ。パルサーのように元気な日産のクルマづくりを、もう一度見てみたいぞ。










コメント
コメントの使い方パルサーを所有していたけれど、GTI-Rでなく、セダンのX1というグレード。
AT車しか運転してないから、GTI-Rは見たことがない。
でも、この時代の車って、タイヤハウスから錆が入りやすかった。そんな記憶がある。