「旧車のデザインが好き」という人はいるかもしれないが、旧車と現行車でデザイン的に異なる要素とはなんだろうか? 色々とあるが大きく違うのはヘッドライトデザインだ。旧車は丸や四角など決まった形しかないのに、現行車は薄いデザインのものも多い。実は昔は決まった形しか使えなかったという事情があるのだ。
文:西川 昇吾/画像:ゼネラルモーターズ、トヨタ、ホンダ、ベストカーWeb編集部など
【画像ギャラリー】リトラだけがレトロじゃない! アメ車・国産車個性的ヘッドライトセレクション!(19枚)画像ギャラリーアメリカの規格が大きく影響
自動車のヘッドライトデザインが丸形だったのはアメリカの影響が大きい。1940~1980年代後半あたりの旧車のヘッドライトと言えばシールドビームが中心であった。
これは1939年にアメリカでシールドビームが誕生し、翌年となる1940年から直系7インチの丸形シールドビームが規格として作られ、アメリカで販売されるすべてのクルマに義務化されたからだ。
アメリカはモータリゼーション先進国であり、多くの国の自動車メーカーがアメリカで自社の自動車を販売するのは今も昔も変わらない。その大きな市場の法規に合わせるのは当然と言えば当然だ。
ただ、これだとデザインに個性が出せなくなってしまう。そこで1956年にキャデラックは直系5.75インチの丸形シールドビームを使った4灯ヘッドライトを採用。
これを許される州で販売した。このような自由度を求める声があったのか、アメリカでのヘッドライトの形は徐々に自由が許されるようになる。1974年に7.9×5.6インチの角型2灯、6.5×4インチの角型4灯が認められるようになった。
なお、角型はシールドビーム規格を採用しなかったヨーロッパの方が最初にスタートしており、1960年代には四角いヘッドライトが登場していた。シールドビームを使うアメリカでの規格は1983年まで続く、ここにきてハロゲン電球を電球交換式の異形ヘッドライトが認められるようになったのだ。
ここから世界のクルマのヘッドライトの形が、個性豊かになっていった。ちなみに1960~1980年代前半あたりのヨーロッパ車を見てみると、ヨーロッパ仕様と北米仕様で、同じ車種でもヘッドライトの形が違うことも多い。
丸いヘッドライトでも顔つきに個性を出したい!
丸いヘッドライトを使いながらなんとかフロントフェイスを個性あるものにしたい。当時のデザイナーは誰しもがそう思ったはずだ。そんな中いろいろな工夫が施されていた。ボディサイズの大きな上級車種は、丸いライトを2つ縦や横に並べてデザインしたこともその1つだ。
ただ、当時のデザインで革新的なアイデアであったのがリトラクタブルヘッドライトだろう。ライトを使用しないときは隠してしまうリトラクタブルヘッドライトならば、フロントフェイスのデザインの自由度が大きくなる。
空気抵抗の低減という性能面も多かったが、ヘッドライトの形という制約から解放されるのはデザイナーにとっても嬉しかったはずだ。
そのほかにも、現在のカスタマイズカーにあるアイラインのような形で、ヘッドライトの周りをベゼルで囲って他とは異なる目つきにした初代カローラなど、丸いヘッドライトを使っても個性がある顔つきにしようというアプローチは様々存在していた。
このような背景を思うと、現在は衝突安全の観点からボンネットを低くするのが難しいなど、デザイン上の制約があることが話題になるが、もしかしたらヘッドライトの制約がない現代の方が羨ましいと昔のデザイナーは思うかもしれない。
このほかにも、自動車に関する様々な規格はアメリカの規格に世界の自動車メーカーが合わせた……ということが多い。それだけアメリカは大きな自動車市場であり、モータリゼーション先進国なのだ。
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コメント
コメントの使い方今は丸目ヘッドライトの方が個性的な時代になってしまいました。別な話ですが、ヘッドライトの新品価格高騰をどこかで止めないと。1つ10万オーバーが普通になってしまいました。せめてレンズ部分とユニット部分の分離をするとかしないと、板金修理がすごいことに。中古があればまだ良いんですけど、黄ばみがね。
そうそう。角をぶつけてバンパー、フェンダー、ボンネット、ライを同時に突っついたら、えらいことになるよね。